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第11話 ラミのギラギラ作戦

 不屈とラミが住んで居たのはモンティアルシュタットから少し離れたカーシェの森と呼ばれる場所だ。

 不屈は「人間社会はしがらみや面倒臭いルールばかりで疲れる」と森の中に家を作り、畑を耕し農民の様な自給自足の生活をして、何か入り用な物があればラミが街まで買いに行っていた。

 だがこの生活はラミにとって退屈そのものだった。何せ彼女が不屈に惚れた理由は、彼から放たれるギラギラ――、可能性の光に魅せられたからだ。

 言いなればラミは面食いだ。目が見えないから容姿で惚れる事はないが、ギラギラした立身出世しそうな男を見るとトゥクンとしてしまうのだ。

 だが森に引きこもってばかりではその可能性が輝く事はない。人は人の中にあってこそ、その価値を認められ世間から敬われ崇拝される大きな存在となれるのだ。


(このままじゃ不屈の可能性が死んでしまう。何とかして人が多く居る場所に移らないと!)


 そう企てたラミはまず街に住みたいと不屈に言ってみた。

 街に行けば否が応でも人と関わらなければならない。そうなれば自分が上手くサポートし、誰もが羨み憧れる存在にしてみせると思ったのだ。

 だが不屈はそんなラミのお願いを受け入れることは無かった。


「街なんかに住んでも面倒くさいだけだろ? オレはこの森で気ままに暮らしたいんだ」


 そう言って変わらず畑で野菜を作り、たまに獣を狩って来て自給自足の生活を続けた。

 それからしばらく経ったある日、今度はモンティアルシュタットに魔王がやって来たと耳にした。

 これはチャンスだと、本来の目的である魔王を倒すよう不屈に言ったのだが、


「魔王なんか放っとけよ。オレはもう戦う気なんて無いんだ。前使ってた剣も防具も売っちゃったしな」


 やっぱり立とうとしない。

 そして魔王が敗れて、モンティアルシュタットも王国軍に占領されてしばらく経った頃、今度は魔王軍の大軍がこの地に来襲した。


「今度こそ戦おうよ不屈! 王国軍のピンチを救うの!」


 王国軍のピンチを救ったとあれば英雄確定だ。このチャンスを逃す手はない。

 だが不屈は――、


「王国とかどうでも良い。ここが襲われないんだったらそれで良いよ」


 そう言って相手にしない。

 ならばとラミは魔王軍を森に誘い入れ不屈にけしかけた。すると圧倒的な力で魔王軍を全滅させてしまったのだ。

 だがやっぱり不屈はそれ以上の事は望まず、王国軍に自分を売り込む事もしない。この勝利が王国軍の勝利に大きく貢献したにも関わらずだ。

 不屈曰く「世間的にあまり目立ちたくない」と言うことらしい。

 もう彼はギラギラしない、しようともしない男となってしまったのだとラミは失望した。

 だがすぐに最後のチャンスがやって来る。敗走した魔王軍から逸れた一級ドラゴンが自分達の住む森近くで暴れているというのだ。


(私がこの身を張って彼をもう一度ギラギラさせて見せる!)


 そう決意したラミは自らドラゴンの元に出掛け、その身を危険に晒した。そして計画通り不屈は彼女を救いドラゴンを倒したのだ。

 一級ドラゴン。それは災厄とも呼ばれる最強のモンスターだ。倒せばその者の名は英雄として轟く。

 ラミは不屈に自分こそがドラゴンを倒した英雄だと言って欲しかった。しかし――、


「別にドラゴンくらい倒せて普通だろ? わざわざ自慢する事じゃない」


 と言ってさっさと帰ってしまったのだ。

 この時、ラミの不屈に対する期待は全て失せた。

 彼が去った後も呆然として倒したドラゴンを見つめて、こんな黄金のような誰もが憧れる功績を捨てる事に怒りを覚える。

 そこへとある一団が通り掛かった。

 ラミは草陰に隠れてその様子を窺う。どうやらどこかの傭兵団のようだった。


「嘘だろ!? ドラゴンが死んでる!?」


 傭兵達は災厄と呼ばれるドラゴンの死体に驚愕する。

 すると長髪のダボダボの服を着た一風変わった格好の男が現れた。


「これが音に聞くドラゴンですか。私の知る龍とはまた違った形ですね」


 男は死んだドラゴンを物怖じせず物珍しそうにペシペシと叩く。

 そして新たに現れた3人の女達から長柄の武器を受け取るとブンッと振ってドラゴンの首を落としてこう言った。


「このドラゴンの首を持ってモンティアルシュタットに行きましょう。さすれば王国軍から褒美がたんまり出ますよ」


 不屈が倒したドラゴンを自分達が倒した事にしようと言い出したのだ。

 当然、傭兵達はびっくりして進言する。


「え? いやしかしボス、もしこいつを倒した誰かが、『俺が倒したんだ』って言い出したらどうするんです?」

「心配はいりません。首を掲げて『討ち取った』と言えばこっちが討ち取った事になります。首を持っている方が正義なのです!」


 平気な顔でゲスい理論を言い放つ。

 他人が倒したドラゴンを自分の手柄にしようなんて、なんと卑怯な人間だろうか。見れば仲間達も唖然としているではないか。

 だがそんな男にラミの心は大きく揺さぶられた。


(人の手柄を横取りするなんて……。なんて野心的で……ギラギラしてる人!)


 ラミはすぐに彼の虜となった。

 もはや湿気た薪木のような男なんて興味はない。この人について行き、この輝きが一層ギラギラするように支えようとラミは泉親衡の元へと走ったのだ。

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