第9話 三郎への信頼
「はぁ? 二日酔いってどういう事ですか?」
三郎の仮病を伝えると不屈はやっぱりうだうだと文句を垂れて来た。
「こっちはせっかく足を運んだんですけど? 人に時間取らせておいて二日酔いで出てこれませんって何なんですか? 武士以前に人としてなってないでしょ? 女神様さぁ、アナタの仲間なら責任とって何とかして下さいよ〜。それが迷惑をかけた人間への誠意ってもんでしょ? それとも女神だから人間なんかに頭下げられないって言うんですか? ねえ、聞いてるんですけど?」
早口でペラペラと言葉を並べて来る。
何と言うか不屈の文句は聞いてて腹が立つ。
三郎みたいに感情が乗った文句なら受けてやろうという気になるのだが、機械的にマシンガントークで理詰めして来られたら気持ちも冷めてしまう。
アルケー達はこれをどうにか宥めて不屈には帰ってもらった。
が、どうやら彼は本気で親衡を殺しラミを無理やり連れ帰る気らしい。
完全に1人のバケモノを生み出してしまった感がある。
「はぁ、やっと帰ってくれましたね……。あの人の相手してるとめちゃくちゃ疲れます。もう会いたくない」
「マジでラミっちが1回惚れた理由が分からん」
「やっぱりクズが好きだったんじゃない? っで予想以上のクズ度で愛想尽かしたとか」
「ミュンミュンの毒舌容赦ね~。でも分かりみ~」
肉体労働したわけでもないのに皆ヘトヘトになってしまった。
もしかして奴は勇者スキルとは別にドレイン系か呪い系のスキルでも持っているのでは?
そう思うほど、周りの人間の気を滅入らせる何かがある。もう関わりたくない。
「何にせよ。親衡と殺し合いなんてさせるものですか。私が力を与えた勇者がそんな事したら目覚めが悪いわ」
「うぅ、まぁ……そうですよね」
何度でも言うが皆、不屈とは関わりたくない。
しかしアルケーにとって、どんなにクズでも、腐っていても、自分が力を与えた以上、責任を感じてしまうのだ。
そして笑亜達も黙って悪事を見過ごす事なんて出来ない。
「1度ラミに詳しい事情を聞きましょう。あの2人に何があったのか聞いてうまい具合に解決するの」
「事情って、あの人の性格が悪いからじゃないですか?」
「それだけだと思う?」
「え? いやぁ……思いません」
「でしょ」
あの性格だから絶対何か他に理由がある事が容易に想像出来てしまう。たぶん風化した岩石のようにボロボロ出て来るはずだ。
そう言う酷いところを突き付けて不屈を反省させ納得させるとアルケーは作戦を説明した。
「説得、出来るでしょうか?」
無理だろうなぁとアンジェリカとミュンネイが首を傾ける。
「無理だと思うけどやるのよ。それに不屈はともかく道理が通っていれば三郎が味方になってくれる」
「師匠が?」
「何だかんだ言って三郎は道理が通らない事にはちゃんとNOを突き付ける男よ。不屈の方に非があると分かったらきっと味方になってくれる。そうすれば不屈だって抑え込めるわ」
その為には何故ラミが不屈の元から去ったのか詳しい事情を知る必要があるとアルケーは説明する。
しかし何故かここでアンジェリカはニタニタと笑いだした。
「シッシッシ~。アルち~、何やかんや言ってさぶちんの事めっちゃ好きじゃん~」
「はいぃ!? 何でそう言う話になるの!? 別に好きとかじゃ――」
「あ、今の好きって信頼してるって意味ね。色々振り回されても結局はさぶちんを信頼してるんだなぁって。でもその反応、もしガチ?」
「そ・れ・は! 無い!!」
「うちのアンジェがすみません」
アンジェリカのくだらない詮索を一蹴して、アルケー達はラミの元に向かった。




