第8話 酒のやらかし
酒でやらかすのは今も昔も未来も変わらない。
酔った勢いで諫言した幼馴染みの臣下を殺したアレキサンダー大王。
酒癖の悪さで恨みを買い、守っていた拠点を奪われた張飛。
そして暴行、建造物破壊の罪により京を出禁になり、最終的に殺された三郎の親戚、佐原 盛連。
いつの時代も人はアルコールの悪魔によって思いもしない言動をとってしまうのだ。
「ややこしい事になっちまったなぁ……。何で止めてくれねえんだよ!」
「止めたわ! でも貴方達どんどん盛り上がっちゃって全然聞かなかったじゃない!」
やらかしてしまった事を後悔し三郎は頭に手をやり舌打ちする。
「どうすんだよぉ! 親衡の野郎をぶっ殺すのは良いとして!」
「いや良くないから」
「それでラミが納得して帰って来る訳ねえだろ!」
「でも師匠。女は強い男に惚れるんだとか言ってませんでした?」
「知らん。そんなん知らん」
「これですよ……」
相変わらずダブスタな師匠だと呆れ帰る。
とにかく三郎はやらかした。
自分でもシラフなら絶対無理筋なラミ奪還の協力を酒の勢いで約束してしまったのだ。
「どうする~さぶちん? やっぱ昨日のは無しでって言う?」
「いやぁ……。一度やるって言っちまった以上、止めたら格好つかねえし……」
「じゃあどうするのよ? 言っとくけど私達は協力しないわよ」
「は!? 何で!?」
「あの不屈って勇者、性格悪過ぎるのよ。あんな男とより戻したってラミが不幸になるだけだわ」
笑亜もアンジェリカもミュンネイも右に同じと頷く。
昨日、不屈と接して分かったが奴はクズだ。
自分勝手に行動し、都合の悪い事は人も所為にする。4人はそんなクズ野郎の事がすっかり嫌いになっていたのだ。
ならば当然ラミの方に同情するわけで、絶対彼女をあの男から守ってやろうと決めていた。
それでも困った三郎は上目遣いで同情を誘う。
「俺が困ってんだからさぁ。ちょっとくらい手ぇ貸してくれたって良いだろぉ?」
「悪いわね。私達、もう不屈とは極力関わりたくないの」
レディ達が全員アルケーに集まって三郎はひとりぼっちになる。どうやら本当にこのややこしい問題を1人で相手しなければならないらしい。
その時、外からそのクズ野郎の声が聞こえた。
「おーい! 三郎は居るかー?」
その声に三郎は苦い顔をする。
アルケー達もお呼びでない奴が来たと目を白けさせた。
「来たわよ」
「来ましたよ」
「さぶちん、行ったれ」
「精々頑張って下さい」
「お前ら……」
三郎は一層顔をしかめて身体を揺らす。それで観念して不屈を出迎えるのかと思ったら、さっさときびすを返してしまった。
「酔いが残って動けねえから明日出直せって言っとけ」
たぶんこれは弟子である笑亜に言ったんだろう。
厄介事を先延ばしにして三郎はさっさと部屋に帰ってしまった。




