第12話 第一世界RTA、走者は黒野兄妹でお送りします。
誤字報告してくれた方、感謝を。
自己満小説を読んでくれて本当にありがとう。
家族団欒の夕食が終わり、お風呂に入って時刻は既に21時。
5時間ログイン後の1時間のログイン不可状態は、既に解けている。
さっそく本日就寝前最後のMWSへログインしよう。
リビングでゆっくりしている母さんと父さんにおやすみの挨拶をしつつ、自室に戻ろうとすると。
「夕食前に言ったことだけれど、体調管理は自己責任よ? ゲームで夜更かしし過ぎないように気をつけなさい」
「イエスマム」
「あはは、何やら軍隊みたいだねぇ。とりあえず夏休みはいっぱい楽しむと良いよ。父さんも若い頃は──」
「イエッサー」
「バッサリ切るねっ!?」
よし、MWSへGOだ。
ログインすると、既にヒマワリもログインしていた。
「おにぃ……ではなくて、クロノくん! 遅いっ!」
「すまん、すまん。それでこの後はどうする?まだレベリングをするのか?」
そうだねぇ……と、言い人差し指を顎に当てて数秒程固まるヒマワリ。
「いや、先に第二世界解放許可証を集めようと思うます! この第一世界は、あくまでVRMMOに慣れてもらうための初心者用の世界だからね。エリアボスに挑むための推奨レベル自体がそこまで高くないのだよ」
「ほうほう。つまりこの世界では、現時点での上限レベルである30に到達する必要は無いと?」
「そゆことっ。βの時はレベル上限解放クエストは第二世界にあったから、【異世界転移】の魔法を覚えてからでも遅くないのだ」
なるほどな。
今いる第一世界は、このゲームに慣れるためのチュートリアル要素というわけだ。
そんな大事な世界を我々は爆速で進んでいるわけだが。
まあ、俺にはビーターヒマワリ様がいたから、アイテムの購入やスキル獲得の方法、ジョブ変更など困りはしなかった。
しかし、初めてこの手のゲームに触れるプレイヤーからしてみれば、このクオリティでこの情報量。
さらにそこに戦闘の難易度が高い、という要素が加わってしまえば、実際に異世界を冒険できることがVRゲームの醍醐味であるのに、それを十二分に堪能出来ない。
「よく考えて作ってあるんだなぁ」
「そうそう! 今までVRゲームとは一線を画すクオリティなの! だからSNSでも大バズりして、サービス開始前にパッケージ版はどの店舗も売り切れ状態。普段ゲームをやらないあの有名な俳優さんや超人気アイドルのあの人だってうんたらかんたら──」
MWSの回し者かと思うレベルで、このゲームが世間に与えている影響をひたすら解説してくるヒマワリを置いといて。
次の第二世界に行くために必要な許可証は、ボスゴーレムさんの許可証を除いてあと3つ。
それらのボスを倒して行けば、俺はともかくヒマワリは確実に上限レベルに達するだろう。
それならば、レベリングは現状必要ないと考えて良いだろう……いや、2人でボスを倒すなら安全を考えてレベリング……しなくてもヒマワリいるしいっか!!!
こんな調子で俺はコイツを超えることができるのだろうか。
「……とりあえずよし、そうと決まればさっそく次のエリアボスを倒しに行くか!」
「うんたらかんたら…ってそうだね!なんかクロノくん急にやる気でた? もしかしてハマっちゃった? ハマっちゃったのか??」
「ああ、久しぶりにのめり込んでみようと思えるほどには楽しさを感じてる」
そう言うと、ヒマワリの表情はパッと花開き、万遍の笑みを浮かべた。
「えーー!ほんとっ!? 嬉しいな、私の好きがお兄ちゃんの好きなった!! 今日はとっても良い日!」
辺りをその突出した身体能力で回転しながら飛び跳ねる我が妹。
こんなに喜んでもらえてこちらも嬉しいが、ゲーム内でリアルのお話はご法度ですよ。
「よーし。今回の目標は、ログイン制限が掛かる前に異世界転移魔法を覚えて第二世界へ行くこと!」
「おいおいそれはいくらなんでも無理なのでは!?」
「大丈夫っ!今の私はウルトラスーパービーター人だからなんでも倒しちゃうよー!」
ヒマワリは先程ボスゴーレムからドロップした【ヘヴィアイアンブレード】を腰から引き抜き、目にも留まらぬ高速素振りを披露している。
多分色鮮やかなライトエフェクトもついているので、片手剣攻撃スキルも発動しているのだろう。
無駄にクオリティの高い剣舞である。
さて、そんな元気が有り余るヒマワリに連れられて来たのは、最初の街ファウストから南にある『始まりの森』だ。
カチカチ鉱山はファウストから見て北だったので、今回は真反対の方角へ進んで行くこととなる。
なんだか、行き交うプレイヤーがかなり多いな。
「それはもちろん、βの時から他のゲームとは既に──」
「一線を画す人気のゲームだったんだろ? もうわかったから!」
「そーゆーことです」
ヒマワリが自慢げに頷く。
実はゲームにログインする前にの夕食中の会話にて、母さんと父さんの職場でもMWSが話題になっていたと話を聞いた。
正式サービスが始まる前から、社会現象を巻き起こしているとニュースになっていたらしい。
黒野家はみんな情報通だな……俺以外はだが。
ニュースもまともに見てないし、これだから現社の時事問題を落とすんだよ、瑛太くん。
それはともかく。
こんな人気なゲームならば、飽き性の俺がハマっても何ら不思議はない。
俺たちがログインしているのは、もちろん日本サーバーなので、この沢山いるプレイヤーたちの大半は同じ日本人のはず。
既に現実世界の時刻は21時を回っているのに、大したものだ。
仕事終わりの大人の方たちは、この時間からスタートってこともあるのかもしれない。
カチコチ鉱山へ向かう途中にも当然プレイヤーは見受けられたが、明らかにこちらの方が人数が多い。
MWSはまだ正式にサービスを開始してから少ししか経っていない。
『始まりの森』というぐらいなので、ゲームを始めたプレイヤーが1番最初に向かう戦闘区域なのだろう。
ここにいらっしゃるプレイヤー諸君、是非とも手探りで自分だけの楽しみ方をこのゲームで見つけてくれ。
俺には出来ない楽しみ方を。
「さて、ここら辺の雑魚モンスターは無視して、さっさと森の最深部にいくよーっ!」
そう言うと、ヒマワリは周りのプレイヤーたちが必死に戦う姿なんて全く気にせず、俺の腕を掴んで爆速で森の奥へと進んで行くのだった。
引きずられている俺と引きずって走るヒマワリを、奇妙な光景として見ている他のプレイヤーさん達。
うう、周りの視線が痛い……。
「さて、そんな視線を受けながらやって来ました、『始まりの森』の最深部!」
「その自覚があるなら、ショートカットする毎に行われるこの移動方法辞めない?」
すると、少し顔を赤らめたヒマワリは。
「わ、わかったよ……そんなにクロノくんが言うなら……私が君をお姫様抱っこして走ってあげるね!」
「もっと視線が痛いわ! せめて逆であるなら──」
「その気持ちは嬉しいけど、クロノくん遅いし効率的ではないよね」
「ぐふぅ」
こんなことになるなら、種族変えて最初からやり直すか。
いや、流石にめんどくさいし、鍛冶師をやるならSTRとDEXのどちらにも振りやすいヒト族が良いんだよな。
あ、そういえば、自分の中でヒマワリを超えるって目標立てたは良いけれど、生産職が戦闘職を超える場合、何を持って越えられたとするのが正解なんだ?
そんな判定基準ガバガバ目標を立てた自分に辟易していると、急に視界が開けた。
『始まりの森』最深部、細道を進んだ先は、いわゆるボスステージ。
戦いの始まりだ。
全長3メートル程の巨体。
辺りに生えている大木すらも容易く切り裂きそうな剛爪。
その厚く硬そうな毛皮は、プレイヤーの攻撃をそう簡単に通してはくれなさそうだ。
表記名『キングオブベアーズ』
レベルは14。
HPバーはエリアボスなので、しっかり3本。
「さあ、行くよっ!クロノくん!」
「おうよっ!」
ヒマワリと俺が腰の剣を引き抜き、大地を蹴る。
それと同時にキングオブベアーズもとい、くまさんもこちらに向かって元気に咆哮をかますのであった。
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