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第13話 くまさんが!泣くまで!殴るのを!止めないッ!

戦闘描写ってかっこいいよね……(かっこよく書けてるとは言ってない)

「今回の作戦は至って簡単。名付けて『仰け反りモーションでハメ殺し作戦』!!」

「うおぉ……なんだか物騒な作戦だな」


 恐ろしい作戦名に思わず止まってしまった。

 そんな俺の前へ進み出たヒマワリは、先にキングオブベアーズと対峙する。


「このくまさんが攻撃しようとした瞬間に、技スキルをお腹に当てます。すると、くまさんは攻撃モーションをキャンセルして一瞬仰け反ります」


 くまさんは立派な両腕を高く挙げて、勢いよくヒマワリに振り下ろそうとした。


 しかし、ヒマワリはその攻撃を許さない。


 ヒマワリの剣は水色を帯びて、身体は不自然に加速した。

 そのままくまさんの懐へ飛び込み、片手剣の単発技スキル『スラッシュ』をお見舞いする。

 狙いは腹部の中心。


 空間に描かれるは、青い星の軌跡(ライトエフェクト)


 レベル28の獣人族によって繰り出される技スキルは、強烈な威力だ。

 大きく派手なダメージエフェクトが起こる。

 くまさんのHPバーは目に見えるほど、ごっそりと減った。


 キングオブベアーズの体毛は、全身を見るとほぼ赤茶色なのだが、何故か腹部だけ真っ白なので狙いやすい。

 やはり、チュートリアルの第一世界且つ始まりの森のボスだけあって親切設計のようだ。


 攻撃モーションに入ろうとしたくまさんは、腹部に衝撃を受けたせいで、せっかく挙げた両腕を下ろして丁寧に2歩後ろによろけた。

 そして怒りの咆哮をひとつ。

 再び両手を挙げてヒマワリを襲う。


 しかし、そこにヒマワリのスラッシュが再びくまさんのお腹を横一文字に切り裂いた。


 またもや攻撃モーションをキャンセルされて後ろによろけるくまさん。


 うーん、これは……森のくまさん弱いっ!


「このように、ほぼ全てのプレイヤーが最初に戦うであろうエリアボスのくまさんはっ!」


 技スキルのエフェクトが弾ける度に、くまさんが攻撃をやめて後退していく。

 もはや可哀想まである。


「攻撃モーション中に弱点へ技スキルを打ち込むことで、容易くキャンセルさせることが出来てしまうよわよわなボスさんなんですっ!」


 ヒマワリの気合一閃。

 派手なライトエフェクトと共に、くまさんの攻撃は止められてしまう。

 その後ヒマワリは、十数回斬り結ぶと、あっという間にくまさんのHPバーを2本分削りきった。


 ボスゴーレムより弱いボスということは分かっていても、ヒマワリのプレイヤースキルの高さを改めて実感させられる。

 実際、あんなどデカい熊がこちらに襲いかかってくるなんて、VRゲームに慣れていない者は卒倒ものである。


「よし、こんなものかな。あとの1本はクロノくん頼んだ! アタシは片手剣技スキルの熟練度上げしてるので、危なくなったら助けに入ります!」

「おーけー」


 くまさんはHPバーがラストの1本になっても目が赤くなって若干毛が逆立ち、ちょっと凶暴になったのかな、ぐらいの変化である。

 しかもその実は、モーションも攻撃力もスピードも何も変わらないとのこと。

 やはりくまさんは第一世界四天王の中でも最弱。


 そう言うと、ヒマワリは俺の後ろにまで下がり、いつぞや見たライトエフェクトマシマシの高速素振りを始めた。

 あれはちゃんと意味のある行為だったんだな。


「グオォァァァァ!!」

「森のくまさんが吠えておる吠えておる」


 初見ならこの咆哮にビビるかもしれない、しかし先程の戦闘を見せられた後だと、もうチワワがキャンキャン鳴いているようにすら見えてくる。


 エリアボス戦と思って上げていたボルテージを落とし、落ち着きを取り戻す。

 俺の力作であるヘヴィソードを正眼に構えて、敵の行動をしっかりと観察する。


 くまさんがその鉤爪を見せびらかすように両腕を高く振り上げた。

 その動作を見ていた俺は、丁寧に技スキルを発動させる。

 狙うはもちろん真っ白なお腹。

 タイミングを見計らう。


「来る……ここだっ!」


 勢いよく踏み込み、攻撃スキルによる超加速に身体を委ねた。


 キングオブベアーズの腹部に水色の軌跡が煌めいた。


「ギュオオオァァァ!!」


 技スキル『スラッシュ』によって、超加速したヘヴィソードを振り抜くと、くまさんは苦痛の慟哭と共に後ずさった。


 よし、成功した。

 HPバーを見る。

 ギリ減少したか分かるレベル。

 もちろんヒマワリ程の火力は出ないので、これを目算であと二十数回繰り返さなくてはならない。

 まあまあ過酷である。


「非常にグッジョブ! でもあまり時間ないから、くまさんのノックバック中にも攻撃を仕掛けてみよう!」


 急な提案に思わず振り向いてしまう俺。


「ちょいちょい!いくらなんでもそれは難し──」

「ちょ、ちょっと!クロノくん、後ろ!!」


 ヒマワリの焦りがよく伝わる回れ右のジェスチャー。


 すぐさま横に大きく回避すると、俺がいたところに鋭い爪痕が刻まれた。

 振り向くと、赤く光るおめめがキュートなくまさんがこちらを見てニヤリと笑った気がした。


「っぶねぇぇぇ!」

「お、おー、ナナナナイス回避だよクロノくん、……戦闘中に話しかけられても集中力を切らしていない証拠だね! えらいっ!」


 どもってますよ、ヒマワリさん。

 あなたのせいで死にかけたが?


「とりあえず、エリアボスはくまさん以外にまだ2体いるからね。サクッと倒しておしまいっ!」


 それならヒマワリも一緒に戦わん? と、言う前に彼女はゲーミング高速素振りに戻ってしまった。


 まあ、これも彼女の計画の内なのだろうな、とため息をつく。


 今回のエリアボス連続攻略は、俺のレベリングも兼ねているのだろう。

 第二世界到達という目標をログイン制限ギリギリで達成出来る時間配分を考え、その上で俺になるべく戦闘貢献度を稼がせる。

 経験値は戦闘貢献度に応じてパーティ内全員に配られるので、ボスモンスターのHPを3分の1ほど削れば、それなりの経験値は獲得できるはずだ。


 流石に残りのエリアボス全てを俺だけで倒すのは、レベリングとしては美味だが、時間がかかり過ぎてこのログイン中に第二世界へ辿り着くのは不可能となるだろう。


 ならばいい塩梅を採用するしかない。

 ある程度ヒマワリが削って、残りを俺が倒す。

 これが俺のレベリング兼第二世界到達への効率的な手段であると言えよう。

 彼女の意図を読み取り、納得もできた。

 ならば、あとは迅速に行動すべし。


「うし、ギア上げるか……」


 目の前のくまさんに再び集中する。

 ジリジリとくまさんの攻撃範囲にまで近付いていく。

 もう一歩、その瞬間。


「グオァァァ!!」


 咆哮とともに両腕を振り上げる。

 何度も見た光景だ。

 その行動に移った時から、こちらも攻撃スキルを発動させている。

 剣先を地面スレスレにまで落とし、下段の構えから赤いライトエフェクトを帯びた剣が、敵の腹部から胸部にかけて一気に斬り上げた。


 片手剣、単発技スキル『テイルアッパー』。

 下段且つ低姿勢から真上に跳び、その勢いで対象を斬り上げる技スキル。

 他の単発技スキルとは違い、必ず下段の構えからスタートしなくてはならないという使い勝手の悪い技ではある。

 しかし、この技スキルの利点はスキルの終わりにある。

 なんと他の技スキルには必ずスキルモーションの終わりに硬直時間があるのだが、この技にはそれが無い。

 よって単発技スキルではあるが、そのままの体勢から発動できる別の技スキルが有れば、即座に発動することができる。


 空中で崩れた体勢からでも打てて、且つ俺が会得している技スキルは現時点ひとつのみ。


 刃は赤いライトエフェクトから瞬時に水色に染まる。


「スラッシュ!!」


 続けざまにもう一太刀食らわせる。

 スラッシュの硬直時間は短い。

 更に畳み掛ける。


 スラッシュの衝撃によりくまさんが仰け反り、俺とくまさんの間に距離ができた。


 ならば。

 剣から淡い白色のライトエフェクトが立ち上る。

 片手剣、単発技『トラスト』。

 前方に突進し、そのまま突き刺す。

 距離を詰めつつ、攻撃することのできる優秀な技スキルだ。


「わぁ、お兄ちゃん……中々やるじゃん」


 後ろからヒマワリの声が聞こえた気がするが、戦闘に集中しすぎて聞き取れなかった。

 後で聞いておこう。


 そのままくまさんの攻撃を見切ってカウンターを入れ続けること約20分。

 森のくまさんこと、キングオブベアーズはポリゴン粒子となって消えていった。


「よっしゃぁ!! なんとか倒せたぞ!」

「ナイス! お次のエリアボスのところへGO!」


 いや、ちょっとは浸らせてくれない?

誤字脱字感想なんでもお待ちしております。

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