負い目
彼が私の好意的であることはさすがに私でも分かった。
どうして私を誘ったのだろう。面白味のない女であるし、おまけに色が見えない。
ただ、色が見えないことは彼には伝えていない。だから私を誘ったのだろう。
そんなことを大学からの帰り道ずっと考えていた。冷たい風は落ち葉を巻き上げるが私にとってその光景はほこりが舞い上がるのとさほど変わらないようにも見えた。
しかも、彼は私を映画に誘ったのだ。私はじっとしていられないのと色が見えないのもあり、映画は得意ではない。そもそも映像がそこまで得意ではない。むしろ最初から白黒の本のほうが好きである。
当然彼のような人に好意を持ってもらい、こうやって誘ってもらえるのはとても嬉しい。先から悲観的な言葉を並べてはいるが緊張と喜びもとても大きいのだ。こうやって異性に誘ってもらうのは初めてであったし、あんなに情熱的に誘われれば少しは心が動かざるを得ない。
もしも、色がわからないことを打ち明ければ私のことを嫌ってしまうかもしれない。幼いころの恋愛であったならそんなことはどうでもよかったのかもしれない。ただ、結婚も視野に入る年齢になった今、何かしら子供が生まれたときの不安があることは十分すぎるくらいの要素なのだ。
「別に、障碍じゃないじゃん」
自分でも言いたくない言葉が出た。健常者と障碍者の狭間に位置する特性。誰から見てもわからない。私と同じ特性の人はこの世にほとんどいない。ただ、障碍者の人を無意識に見下してしまっているかのような言葉が出た。最悪だ。絶対に言ってはならない。
「もっと、普通に生まれたかったなあ」
どうしようもならない悩みと不安とともに私は私を生んだ人の待つ家へと帰った。




