東京と言えば
「東京と言えば?」
店から出て、大輝が速攻で聞いてくる。そりゃ東京と言えばって言われたら思いつくだろう。
「あれ」
俺が指を指した先は東京スカイツリーだった。
「うん! そうだね!」
大輝はまたも俺の腕を掴み、東京スカイツリーまで連れて行った。スカイツリーの元までいくと頭を90度上に向ける。それでも、全貌は見えないが。
「上まで行くのか?」
「そりゃぁね。行かないと損だろう」
そう言ったものだから展望台まで行くのかと思いきや、なぜか行けなかった。
「なんか騒がしいね」
「そうだな。なにかあったのか?」
確かにざわざわとしている。人がこぞって集まり、会話の音でかなり騒がしい。
「なんか、やばそうだから他の所行こうよ」
「え?」
俺は気づいたら、大輝に掴まれてスカイツリーから遠ざかっていた。段々とスカイツリーの全貌が見えてくる。退けばわかる。何事もそうなのだろうか。
「とうちゃーく」
結局、地下鉄に乗って、はるばる浅草までやってきた。
これは後から聞いた話だか、スカイツリーの方では事故があったらしい。
「浅草か……なにがあるんだ?」
「そりゃ寺だよ!」
「いや……そうだけど」
違う。俺の聞きたいことはそれじゃない。確かに寺はある。だけどそれ以外は何かあるのだろうか。
大輝は俺の話など聞かなかったのか。いや、聞こえていないのか。 雷門を通り過ぎて行った。
「ちょ……えー……」
俺はその後を追う。門の両端にある彫刻が俺を見ているようでゾッとする。
中は意外とお土産屋さんがたくさんだ。雷門の提灯のキーホルダーや東京タワーなどだ。
「なぁ……東京タワーって見たっけ」
「あぁ……ちょっとだけ?」
東京タワーも良いが東京スカイツリーには負けると思うのは俺だけだろか。うん。俺だけだろう。
奥まで行くと、いかにも寺って感じだ。黄金に輝く像が見える。
「はい、階段登ろう!」
アウトドア派は大嫌いだ。なぜか階段に拘る人が多いからだ。まぁ、ここには階段しかないんだが。
階段を登ると、長方形な広がりで賽銭箱が前にある。みんな、賽銭箱に投げて儀式を終えると遠ざかっていく。なるほど、日本人らしい感覚だ。
「五円あるか?」
「んー……1円玉は……」
「ダメに決まってるだろ」
大輝が1円玉を取り出そうとしている手を鷲掴みにした。だが、その時に俺の指の当たりどころが悪く、突き指したかも。
「はぁ……はい」
俺は右手の人差し指が使い物にならない手で、10円玉を差し出した。
「葵……」
「1円玉はだめだ」
「はい……」
こうして、上下関係が決まったのである。




