ホテルの朝日
防衛庁の建物を見た後はさすがに市ケ谷駅に向かった。足がクタクタでユニバの帰りみたいだ。
「なぁ……ユニバっていつ行ったっけ?」
「あー……あれは中学校だから……4年前? っていうかいきなりどうした?」
実は、コロナから一向に行っていない。環境も変わったので忙しかった面もある。
「スパイダーマンなくなったの悲しいな……」
「後釜に乞うご期待だろ」
俺達は電車に乗り込む。座りたかったが、人が多かった。
「残念ながら、座れません」
「じゃあ俺が椅子になったるよ!」
大輝が馬鹿なことを言う。まぁ、電車と同じで通常運転だ。
「なんか……普通だな」
「普通?」
電車は各駅停車だから一駅一駅止まる。「何を当たり前のことを」、と大輝は言うが、あの東京でも一駅一駅は普通の駅だ。
もっとこうばーん! っていう派手な駅ばっかりかと思っていた。
当の大輝はうとうとしていて、眠そうだ。俺はというとそんなに眠くない。
なぜかというと……なんでだろう。東京に来てテンションブチアゲかも。
「おっと……」
大輝が俺の肩に侵略してきた。相当お疲れなのだろう。
そろそろ目的地の駅に到着する。大輝は起きる気配もない。
「おい、起きて」
俺は大輝の体を揺らす。揺らす度にヨダレがうようよ垂れて面白い。
「……あ」
最悪だ。大輝のヨダレが服についてしまった。人を面白おかしく笑ってると天罰が下るんだな。よく分かるよ。
「起きろー!」
俺はどこからか出てきたハリセンで大輝の頭をしばく。そのおかげで俺達はもう一周しないで済んだ。
「いやー悪い! 寝てた!」
「仕方ないな……」
なんとか駅に降り立ち、ホテルに向かう。ホテルまでの道のりも長い。くっそ、安いホテルにするんじゃなかった。
「やっぱ、ケチらない所はケチらない方がいいな」
「ん? あぁ……安いってことは何処か欠点があるってことか?」
「そのとおりだ。今もこうして駅から遠いホテルに向かってるだろ?」
「はは! たしかに!」
大輝が爽やかに笑う。いや、そんな場面じゃないって。まぁ……こういうのも悪くないけどね。
「で……どこだっけ。忘れちゃった」
「んーと……あ、見えてきた!」
大輝が指を指した方向を見ると、いかにもビジホって感じだ。普通のビルになんとかホテル。うん、まともだ。
大輝がチェックインを済ますと、鍵を見せびらかしてきた。その顔は「かっこいいだろ」と言わんばかりだ。いや、どこでかっこつけてんだ。
部屋に入ると、普通の部屋だ。ベッドがツインなのを除いて。
「なぁ……このベッドで寝るのか?」
「? 何言ってるの。そうだけど」
「……」
つまり、大輝とくっついて寝る……? いやいや、間隔あければ大丈夫だろ!
「あ、ちなみに俺、寝相悪いから!」
大輝がそう宣言した。
「……生きた心地がしない」




