↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/34

江ノ島上陸

 砂浜を走る。背景は夕日と赤い海。最高だろ。

「おい、葵! ……ってもうあそこか」

 どうやら、大輝の目には俺は速いらしい。砂浜に足を取られて、コンクリートの上とはまた違う、特別な感覚だった。

 しばらく、推しの作品の雰囲気を楽しんでから、江ノ電に乗る。

 そして……。

「着いた! うん! 着いた!」

「おー……またこのテンションで……。今度は何があるの?」

「いや普通に来てみたかっただけ!」

 大輝はずっこけていた。俺が「え? なに?」って聞いたら、「七里ヶ浜駅に着いたくらい、テンションが上がっていたのに、今度はただ来てみたかっただけなんだ……」って肩を落としてた。

「まぁ……そういうのもだいじだよな」

「そうだよ!」

 俺はハッキリと言った。その自信が、大輝にも嫌というほど伝わっているだろう。

「で……? 次はどこだ?」

「んー……あそこ!」

 指差したのは山のほう、標高60メートルだか忘れたけど、そういうのがある。

「へー……。こういう所もいいんだ?」

「そうだよ! いつもとは違うよね!」

 俺のテンションはおかしかった。普段は坂道を登るだけでも、いやだと言う俺が、標高60メートルなんちゃらの坂道を登ろうとしている。やっぱり、旅行って人を変える力があるよね。

「で……この上になにがあるんだ?」

 大輝は坂道を登りながらそう質問した。いや、階段だっけな……。それは忘れた。

「神社! 江島神社!」

「はいはい。次は神社ね」

 大輝はもうどうにでもなれって感じだ。もう疲れ過ぎてるらしい。それでも俺は止まらない。

 階段だか、登道かは忘れたけど、登りきった暁には、正月しか見たことがない参拝客で、溢れかえっていた。正直、びっくりだ。

「流石、江ノ島だな。人もいっぱいだ」

「流石ー。じゃないよ! 人多すぎじゃない!? もっと空いてたのかと思ってたよ!」

「はぁ……江ノ島舐めすぎな。見ろよ、この動画」

 差し出されたスマホを覗き込むと、江ノ島についての攻略動画が流れていた。神社も紛うことなく、紹介されていた。

「あちゃー」

「あちゃーじゃないだろ。旅行なんて、みんな考えてることは同じなんだよ」

 大輝の言うことがいちいち俺の心にぶっ刺さる。と、その時。

「ん?」

 この場にいる全員のスマホからなんかしらの警告が叫んでいた。それは日本人なら一度はきいたことのある、不協和音。

 鳴ったのに気づいた、と思ったら揺れた。この地面が、この場全体が、江ノ島が。

 俺は立っていられなかった。

 そのまま、階段を荒く落ちていった。 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。