双子の国境検閲官
〈東国、国境検閲所〉
「スタシス、悪いがこの書類の確認を頼む」
「はいっ! 分かりました!」
スタシスと呼ばれた男性検閲官は長い黒髪を高くまとめていた。
彼が話す度、連動するかのように毛先が揺れていた。
「どれどれ……」
スタシスは紙の上を指で抑えながら一つ一つ確認していく。
「あらまぁ、どーしてこんなに駄目な文章が多いのか……」
「時間はいくらかけてもいい、見落とすなよ」
どうやら確認していた手紙には東国にいる西国人に当てたであろう内容が書かれていた。
「ほんと、あっちの国境検閲官の顔を見てみたいですね!」
スタシスはニコニコ怒っていた。
顔には青筋まで立てていて、手紙を握り潰してしまわないか上司の検閲官は少しはらはらしていた。
「それ程分かりやすいなら、その手紙はダミーで他に本命があるだろうな」
上司はスタシスが持つ手紙を覗き込んだ。
「そういえば西国の国境検閲官の一人がお前と瓜二つらしいぞ」
「え゙、何ですかそれ……」
スタシスは更に不機嫌な顔になった。
口はうげぇという擬音が似合う程開かれ、目はもはや上司を睨んでいた。
「知らねぇけど、外交官が口を揃えてそう言うんだよ」
「は、はぁ……」
スタシスは呆れた顔で検閲作業に戻った。
〈西国、国境検閲所〉
「ウラーダス、検閲頼んだ」
「分かりました」
ウラーダスと呼ばれた男性検閲官は少し伸びた黒髪を下で一つにまとめていた。
ウラーダスは上司に頼まれ手紙の内容を確認する。
「随分と子供みたいな文書だな」
手紙の内容をウラーダスの上司が覗き見る。
「被害者ヅラだけは得意な国ですからね」
内容は東国軍が西国軍に宛てた手紙だった。
「本当、あっちの検閲官の顔を見てみたいな」
ウラーダスは日頃の積み重ねもあり、東国の検閲官に悪態をついた。
ウラーダスの元にこの手紙が届いているということは、この内容を送っても良いと東国の検閲官は判断したワケだ。
会ったことがなくても日頃の激務の吐き口にしたくなるのは当然だった。
「はっ、確かお前とそっくりな顔の検閲官がいるらしいな」
「こちらの諜報員でも送り込んでいるんですか?」
「いや、そういう訳でも無いらしい」
ウラーダスの上司はタバコをふかしながら答えた。
「お前、兄弟は?」
「居ませんよ」
ウラーダスは赤ん坊の頃、西国の国境付近に捨てれていたらしい。
それを西国の貴族に拾われ、現在は西国の国境検閲官として働いていた。
「終戦後会ってみればいい」
「その時にはどちらかが死んでいると思いますが」
「違いない」
西国の国境検閲所に一つの笑いが生まれた。




