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君たちの時代にいたい  作者: たかゆき宗也
5章 番外編
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フォルン上等兵

 僕はフォルン。

 ヴァッサの村の一つ、ティレーベルを防衛するため、第4中隊に新しく配属された上等兵です。


 配属早々第1防衛ラインが崩壊。

 僕達、第4中隊は第2防衛ラインを必死に守りました。


 だけど、その帰りの列車で西国兵に捕虜にされ、西国の強制収容所で強制労働をすることになったんです。


「ゲホッ…………」


 僕は貧乏くじを引いてしまいました。

 

 同時期に第4中隊に配属された伍長の方は、防衛戦の途中で頭に怪我をし先に首都(プロス)へ帰還していたため捕虜にならずに済みました。

 

 僕も先に帰ってさえいたら良かったのかなぁ……。

 自分の中に生まれた感情に嫌気が刺しつつ、防衛戦の時におった腕の傷を確認する。

 顔を近づけるとちょっと臭いですね。


「大丈夫かぁ、上等兵〜?」


 ガーラン大尉が肩に寄りかかってきました。

 重たいので辞めていただきたいです。


「僕、あまり身体強くなくて、」

「ほーん、なんで軍人になったんだよ」


 ガーラン大尉の疑問は沢山の人に言われてきました。

 聞かれた分だけ自分がここにいちゃいけないのかと苦悩する時もありました。


「若い時の僕は変わりたかったんです」

「あ? 今も充分若けぇだろ」


 僕は背も小さいですし声も女みたいに高い。

 学校ではよくいじられていて、僕は兎に角、逃げたくて、何者かになりたくて、それで人の役に立てたら最高だなって。

 そんな気持ちで入隊を志願したんです。


「実際、入隊出来たのは人手不足だからだと思います、こんな僕でも居ないよりはマシなんです。きっと」


「自分をそう卑下するもんじゃねー、ちゃんと上等兵になるまで生きとるやんか」

「運が良かっただけですよ」


「おらよっと、じゃ、そろそろ作業しに行こうぜ」

「はい……!」


 ガーラン大尉は立ち上がりピッケルを掲げました。

 僕もピッケルを取り出す。


「ん、上等兵お前手袋どーした」


 ガーラン大尉は素手のまま歩き出した僕の肩をつかみました。

 

「あぁ、破れちゃって」

「ほーん、霜焼けすんなよ」

「え? はい、気をつけます」


 手袋が無いので豆や傷は増えてしまうでしょう。

 この時の僕はそんな事を考えていました。

 極寒の地、手袋無しの作業を舐めていました。


「…………ゔぅ……すみません……」


 一日中冷たく重たい物を運び、僕の手はかじかんで使い物にならなくなっていました。

 痒くて痒くてたまりません。

 今は他の隊員にパンを食べさせてもらっています。


「衛生兵は、居ないんですか……」

「この作業場には配置されてねぇみたいだな」

「そう…………ですか」


 第4中隊には二人の衛生兵がいるそうでしたが、その方々は僕達の作業場には配備されていませんでした。

 到着時の組み分けで離されてしまったそうです。


 日に日に掻きむしった傷は悪化し。

 痒さと痛さで口内を噛んで耐えていたせいで口内も傷だらけ。

 唇はひび割れ、そのせいで口を大きく開けることも硬いパンを噛み砕くこともできません。


 本当に第4中隊の皆さんが優しくて、トンカチでパンを粉々にしてもらいましたが、むせるだけで、とてもお腹には溜まりません。


「……はぁ…………」


 指先の血色がなくなり、より臭くなっていくのがわかります。


「大尉……僕の指、もう駄目なんですかね……?」

「切り落とす決心ついたか」

「……………………そうなったら、僕は、」


 作業を続けることが出来ないと西国兵に判断されたら、僕は殺されてしまうでしょう。

 残虐非道な西国人ならそうするんです。


「まぁ、包帯も火もねぇから、トンカチでやることになるし、壊死しきってなかったら、血が止まるかも分からねぇ」

「はい…………」

「ま、腕まで広がる前には決めてくれや」


 その日の夜。

 僕は痛みに耐えかねてガーラン大尉に指を落として貰うよう頼みました。


 血は壁で冷やして止めました。

 その後無いよりはマシだと軍服を切り、傷口を巻いてもらいました。


 ずっと泣く僕を前に、ガーラン大尉は顔色一つ変えず、全ての作業を行ってくれたんです。

 僕は一生この人に頭が上がりません。


 そんなガーラン大尉も、次の日の昼頃、僕が不機嫌な西国兵に撃ち殺された時は悔しそうな顔をしていました。

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