第1小隊
西国の強制収容所から生還した熱が冷めやらない頃。
「アンジェ一等衛生兵、少し良いだろうか」
ジキ軍曹がアメッサさんに敬礼した後私に話しかけてきました。
「君にとってはあまり関係のないことかもしれないが、伝えておきたいことがある」
「はい……?」
「私の名はダントと言う、第1小隊の大尉は私なんだ」
「えっと、?」
ジキ軍曹の言葉を頭の中で復唱する。
「私達を庇ってくれた隊員がジキ軍曹だ」
つまり、目の前のジキ軍曹と思っていた灰色髪の男性はダント大尉で、亡くなった隊員がジキ軍曹で。
「もし良ければたまに思い出してやって欲しい、彼も第1小隊所属の軍曹で、私の部下だった」
「……あの、ジ……ダント大尉、どうして入れ替わったんですか?」
失礼な質問かもしれませんが、知っておきたいと思いました。
「あぁ、あの場にいた一番階級の高い者は大尉や中尉、上官が殺され統率が取れなくなるのを避けたかった。前々から第1小隊内で話が上がっていてね、あの日たまたま目の前に居たのがジキだった」
ダント大尉とジキ軍曹は列車で煙が蔓延する中階級バッチを交換したとのことです。
「そう、だったんですね」
ジキ軍曹の遺体は西国に置いてきたままでした。
彼は東国で眠ることが出来ませんでした。
ダント大尉の持つジキ軍曹の階級バッチだけが遺品として残っていました。
「失礼します。ドライ一等兵、ダント大尉に発言の許可を求めます」
「いいだろう」
ドライと呼ばれた男性隊員は私に
「アンジェ一等衛生兵、自分は第1小隊所属の一等兵です、海岸であなたの後ろを歩いていたのも自分です」
「あ……!」
「すみません、衛生兵であるあなたに仲間を見捨てろと言った事を、少し謝りたく」
ドライ一等兵は深々と頭を下げました。
「どうか、衛生兵に生きていただきたかったからだと、理解していただけますか」
「勿論です、寧ろ声をかけていただけなかったら、私は立ち止まったまま、西国兵に殺されていたと思います」
「そうかドライ一等兵、君は第1小隊所属だったんだな」
アメッサさんは話題を変えるように話し出しました。
「はい! 体力検定の時は手合わせをしていただきありがとうございました」
「私は随分投げ飛ばしやすかっただろう」
「その件に関しては何卒……!」
ドライ一等兵は顔を青くしたり白くしたりしていました。
それを見かねてダント大尉が助け舟をだす。
「アメッサ少佐、私の部下をからかうのはその辺にしていただけませんか……ドライ一等兵が干からびてしまいます」
「ははっすまない、あれほど完膚なきまでにのされたのは初めてだったんだ」
「過分なお言葉……ありがとうございます」
「一等兵らしさはまだ残っていたが、やはり第1小隊は腕の立つ者が多い」
アメッサさんは口元を少し隠しながら笑いました。
「どうしたアンジェ一等衛生兵」
じっと観察していたのがバレ、アメッサさんに少し睨まれました。
「あ、いえ、アメッサさんって私の階級が上がったこと知っていたんですね」
「入隊して3ヶ月経つ、生きていようが死んでいようが、階級が上がっているのは分かることだ」




