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君たちの時代にいたい  作者: たかゆき宗也
5章 強制収容所救出作戦
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第23話:私の後ろを走らないで

 ルミエール国軍、司令室の窓を鳩がつつく。

 その音に気がついたのはナオキ総司令官だった。


「伝書鳩か」


 鳩の足に着いていた紙を取り出す。

 

 内容を確認するとその中の一つにノイの壁の設計図を見つけた。

 アメッサが大使館から届けたのだろう。

 

 現在建設中のヴァッサでは更に最適化しているだろうが、大元の作り方は変わらないだろう。



 送られてきた書類を読み漁っていると小さな紙が落ちてきた。

 それはアメッサの名が署名がされた紙だった。

 同時にそれらを照らし合わせ作戦内容を吟味する。


 1班は山脈から隠密しつつ行軍、もう1班はノイ北部から行軍。壁を破壊、敵国の北部には軍の本拠地もある、そちらを囮にし、山脈側を本命に壁を破壊し潜入。

 西国の南部、有給地に目星を付け探索。

 作戦実行は一夜限りの高難易度だった。


 救出作戦……。


 捕虜の解放など表立って取り合って貰える訳がない。

 のらりくらりかわされてしまうだろう。

 それに対し救出作戦を実行することには賛成だが。


「停戦目前の今、東国兵を動かす訳にはいかない」


 西国の壁を超えた後、収容所を見つけられるかはまた別だ。


「それに、この作戦後の報復に耐えられる程、東国(ルミエール)は戦力わ持ち合わせていない」


 通る作戦だとは思っていないだろう。

 過去に戦略を練る練習をしてみろと言ったが、これは帰ってきたら一から教えなければならないな。



 時に、地位によって得られる情報は変わる。

 私達は軍人だ。

 だが、堅い作戦(軍事作戦)では無いことを、我々は実行せざるを得ない時がある。


 私がこれに手心を加えてやろう。


 用意するのは東国(ルミエール)兵ではなく……。

 信頼できる国直営の傭兵と軍内部で手を挙げた義勇兵だ。


 自営業や民間の傭兵は金が信頼となる。

 いつ裏切られても仕方がない。

 

 だが、国……いや女王様が直々に選び抜いた傭兵の中に一人。

 捕虜となった人物に少なからず情があり、本人の技術、どちらも持ち合わせる都合のいい人物がいる。


 ナオキ総司令官は行方不明者リストのある1ページを広げていた。

 アメッサが参加した集まり(お茶会)について報告書を受け取っており、記憶にあったのだ。


「マイ副総司令官、至急、レイチェルを呼んでくれ」

「えぇ、分かったわ」

 



 ルミエール国軍司令室に呼ばれたレイチェルは少し緊張していた。


 ルミエール国軍の総司令官に呼ばれたのは初めてのこと。

 更に内容を聞くと以前お茶会をした友人のアンジェが巻き込まれているそうだ。

 

「救出後はどのように?」


 レイチェル自身の問いにナオキ総司令官は地図を指さし、ざっくりと答えた。

 

「ノイを超えチャイファルの軍病院まで移動したい、数台馬車を手配する」

「わかりました、潜入ルートに関してはこちらで適所を見つけます」

「開始時刻は厳守で頼む」

「はい」


 そして、数日後の深夜2時。

 強制収容所救出作戦が開始された。

 





 西国の強制収容所内、アンジェは負傷兵の治療をしていた。

 


 ジキ軍曹は西国(ヘルツカイナ)兵に目をつけられてしまい、すれ違うことはあれど、診察所へ顔を出すことはありませんでした。


 狭く暗い診察所での診察、治療にも慣れてきた頃。

 丁度、休憩中、堅いパンを割っていた時でした。

 突如爆発音と壁全体が揺れました。


 その大きな爆発音に東国(ルミエール)兵も西国(ヘルツカイナ)兵も警戒態勢をとっていました。


 爆発音がした先、静かな足音と共に迫ってきたのは今まで何回も私を助けてくれた人物でした。


 「レイチェルさん……!」


 西国(ヘルツカイナ)兵を無視し思わずレイチェルさんに飛びつく。

 レイチェルさんは私を抱きしめたまま、敵の弾丸を剣で弾いていました。


「この先に外に続く道があります、全力で走って下さい」

「は、はい……!!」


 レイチェルの一言で体力の残っていた隊員達は負傷者を担ぎながら走り出す。


 私もそれに続いて走り出しました。

 レイチェルさんは最後尾で敵を抑えるつもりの様子。

 近づく敵を薙ぎ倒し、弾丸を弾き落としながら後退して来ています。


 暫く真ん中辺りで走っていましたが、負傷者を担いでいるとはいえ周りは軍人ばかり。

 私はいつの間にかレイチェルさんの前を走っていました

 一番の足手まといです。

 

「私達、武器もっ無いですし、追手は、大丈夫なんですか!?」


 息も絶え絶えにアンジェは叫ぶ。


「お土産を置いてあります。彼等はそれに群がると思いますよ」

「お……お土産?」

「そろそろです」


 レイチェルがそういうとどこからともなく爆発音が壁内に響き渡りました。

 パラパラと壁が落ちてきてますし、反響もしていてうるさいです。

 走りながら思わず耳を塞ぐ。


「少し火力が強すぎましたかね……ですが、妥協するなと言われましたし、」


 爆発音は留まらず更に響きました。


 目の前に瓦礫が落ちてきました。

 黒くて大きくて私には何なのか分かりませんでした。

 

 間一髪、レイチェルさんが私を一瞬で追い抜き、手を引いたことで回避できました。

 

「し、死ぬっ!?」

「頑張って下さい、皆さん待ってますよ」


 レイチェルさんは


「皆って! い、一体……! 誰、なんですかぁーっ!!!」


 その後もレイチェルさんに助けられながら永遠と思える壁を走り続けました。

 レイチェルさんのおかげで、一発も撃たれることなく壊れた壁の出口まで出られました。


 最後に念押しにとレイチェルさんが壁の出口を爆発させ、瓦礫で塞ぎました。


「っ……はぁ! は、はっ……ぐぇ…………うっ……はぁ……」

「無事に生還出来ましたね」


 地面に転がり嗚咽する私にレイチェルさんは涼しい顔で言いました。

 この人は鬼か何かですか?

 いえ、助けていただいたのにはとてもとても、死んでも償えないくらい感謝しています。

 

「ほう……アンジェ一等衛生兵、生きていたか」


 声がした方に転がり顔を向けるとアメッサさん私を見下ろしていました。

 

「何で……ここに、? アメッサさんが?」


 走ったばかりの酸欠の頭では何も考えられませんでした。

 

「作戦の完遂を見届けるのは、作戦立案者の勤めだからだ」


 完遂、作戦立案、立案者、言葉がアンジェの頭の中でぐるぐる回る。


「まぁ、私情の奴も居るがな」


 アメッサさんの目線の先を見ると、リラさんが妹のリーナ一等兵に抱きついていました。

 二人とも嬉し涙を流しています。


 

 不意にレイチェルさんに立ち上がらされ、ハグをされました。


「私達全員、心配してたんですよ」


 それにしきりに頭を撫でてきました。


 

 違う……。

 

 私が抱きしめて欲しいのはシユで。

 西国(ヘルツカイナ)まで行けたのに。

 シユの手がかり何も得られなくて。

 それどころか、今まで沢山。

 たくさん死にそうに、なって…………。


「っう、……あ…………」


 大粒の涙と、顎が外れるくらい開いた口から溢れる声を抑えられませんでした。

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