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君たちの時代にいたい  作者: たかゆき宗也
5章 強制収容所救出作戦
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第22話:ルミエール大使館

「ルミエール国軍司令部所属、少佐、アメッサだ」

「こちらにどうぞ」


 ルミエール大使館に着くと、茶髪の女性が出迎えていた。

 その女性に案内されたのは大使館の地下の一室。


 アメッサとリラが部屋に入ろうとすると茶髪の女性はリラを引き止めた。


「リラ、すまないがここで待っていてくれ」

「了解」


 茶髪の女性は軽くお辞儀をするとその場から離れていった。


 アメッサはドアをノックし部屋に入る。

 部屋の中は本棚や地図が沢山置かれていて、中心に置かれ机にはコーヒーが置かれ、椅子には一人の中年男性が座っていた。


「初めましてアメッサ少佐、大使館職員、カヤと申します」

「アメッサだ、よろしく頼む」


 男性の名前はカヤと言うらしい。

 促されるまま向かいの椅子に座る。


「早速ですが、こちらを」


 カヤが渡した書類をアメッサはパラパラとめくる。

 その中の一つに小さな紙が紛れていて、図面のようなものが描かれていた。

 

「壁の建設設計図か?」

「はい、ですが現在建設中のヴァッサ方面ではなく、既に完成済みのノイ方面のものになります」

「充分だ、助かる」


  アメッサは書類を鞄に詰めた。

 独自構造になっていて、重要な書類は隠せるようになっている。


「職員の様子はどうだ」

「ここには家庭を持たない者しかおりません、国の為に働くことに誇りと覚悟を持っています」


 アメッサは東国に帰ることの出来ない職員達が気がかりだった。

 国のため、と表面上の理由を言い続け、さらにそれを守らなければならないことの大変さを知っていたからだ。


「ですが……やはりこうして人が増えることは少し嬉しいですね、今年は新人も入りました」

「新人? 珍しいな」

「はい」


 カヤは嬉しそうに手を合わせた。


「そうか、それなら良かった」

「すぐに帰国されますか?」


 立ち上がるアメッサにカヤが語りかけた。

 

「そのつもりだ」

「大使館は広い、きっと迷われてしまうでしょう、玄関までお送りします」

「頼んだ」


 アメッサとカヤは外に居たリラと合流し共に広間に戻る。


「だいぶ早かったですね」

「する事は決まっていたからな」

 

 階段を昇る途中、階段の上部から女性職員が足を踏み外し落下していた。


「っと……大丈夫ですか?」


 リラはすぐにそれを受け止め、優しく声をかけた。

 女性職員は今にも泣き出しそうな顔をしている。

 よく見ると、左腕から血を流していた。


「カヤさん……!!」

「フィズ、何があった」


 フィズと呼ばれた女性は


「き、緊急事態です! 侵入者が大使館に! それで今、入口で皆さん撃ち合いを!」


 このタイミングで大使館を襲ったとなれば、目的はアメッサの持つ情報だろう。


「分かった、武器庫はもう空いているんだな? 地下には近づかせるな」

「……はい!」


 カヤはフィズを落ち着かせた後、アメッサ達に振り返った。


「お二人は地下で身を隠していてください! その書類の写しはありません」

「だが、ここ(地下)には他の重要な機密文書もあるのだろう? 敵の目的はこの書類、私達が囮となろう」

「職員が命をかけた書類なのです! ……どうかお考えなおしを!」


 カヤは苦い顔をしてアメッサの肩を掴む。

 アメッサはその手を解くことなく続けた。

 

「ならば尚更だ。リラ、命令だ。この書類を死守しろ」

「了解」


  リラは刀の位置を調節しカヤの目をまっすぐ見た。

 

「カヤさん、この書類は必ず国に持って帰ります。カヤさん達は地下を守って下さい」


 軍人が死守しろと命令されたのだ、その名の通り命に変えてでも守るだろう。


「行くぞ」

 

 アメッサ達は階段を駆け上がる。

 1階の廊下では職員が机でバリケードを作り入口付近の敵と撃ち合っていた。

 だが、急に始まった銃撃戦、大使館職員は徐々に押されている。


「リラッ!!」


 アメッサが叫ぶのと同時に、アメッサに向けて放たれた弾丸をリラが切り落とす。

 カヤも警棒を取り出していた。


「離れるぞ!」


 侵入者の目的はアメッサの持つ書類。

 この場に留まれば他の職員に被害が及んでしまう。


 アメッサは迷わず階段を駆け上がった。


 リラもすぐにアメッサを追いかける。

 敵は……着いてきていた。


 屋上に着き扉を閉める。

 ほんの少しの時間稼ぎだった。


「すまないリラ、やれるか」

「勿論っ!」

 

 屋上は地上に比べ風が強く、戦いづらいことを懸念したアメッサはリラに声をかけた。


 リラにとって悪天候は日常茶飯事、塹壕のように狭く不衛生な場所でないだけマシとすら感じていた。


「でも、その前に……」

「はあ!?」


 リラはアメッサを軽々と抱き抱えた。

 突然の事にアメッサは大きな声をあげる。

 司令官として常に警戒を怠らない彼女にとって、自分の足が地についていないのは耐え難い事だった。


「不安要素は取り除いておかなきゃね」


 言い終わるのと同時にリラは向かいの建物に飛び移っていた。

 幅は2メートル以上、アメッサの跳躍力で飛び越えることは出来なかった。


「ッ…………」

「よっと……危ないから、隠れるなりしてて」


 リラはアメッサを地面に降ろし、建物を飛び移り戻っていった。

 その後敵が到着しリラは戦闘に入った。


 アメッサにそれを見守る時間はない。

 すぐさま物陰に隠れ、指笛を吹く。


「ピィ――………………」

 

 暫くしてアメッサの頭上に数匹の鳩が集まってきた。

 

 この鳩はアメッサが手懐けている伝書鳩だった。

 鳩の習性を活かし、長い期間をかけて基地と自分を『家』にした。

 普段はアメッサの頭上を飛び、呼べばすぐに集まる、アメッサにとって重要な部下達だった。


 鳩達は発煙弾を咥えていて、アメッサはそれを受け取る。


「よくやった」


 その後すぐアメッサは小さな手紙を鳩に括り付け飛ばした。

 これで検閲所など関係なく、すぐに司令室に書類を届けることができる。

 最悪この場で全員死んでも情報だけは届けられるだろう。


「さて…………」



 援護したいところだったが、発煙弾を急に投げる訳にもいかない。


 リラは刀一本で敵とやり合っていた。


 リラが敵の武器を叩き落とす。

 屋上から銃剣を蹴り落とすだけで、リラは武器を奪うことは無かった。


 体力検定の時もそうだったが、リラは頑なに銃を使わない。

 弾づまりや残弾数が無い分長期戦に向いているのだろうが、銃剣の方が有効射程が長いのは明らか。

 そのためルミエール国軍で刀を滞納するには試験に合格しなければならなかった。


 数人の敵をリラは殺し終え、また建物を飛び移ってアメッサの目の前に立った。


「お待たせ、怪我はない?」

「あぁ、書類も無事送り出した」

「それなら良かった」


 屋上には沢山の血が舞っていた。

 白い床に赤い血がとても目立っていて、異様な風景。


 アメッサは再度リラに抱えられ大使館の屋上に戻った。

 敵の銃剣を鹵獲し弾数を確認する。

 武器庫まで行くには時間が惜しかった。

  

「まだ下で戦闘が続いているだろう、加勢するぞ」

「はい!」


 その後、リラの加勢もあり侵入者は全て制圧。

 少なくない犠牲者が出たが、情報が漏れることは無かった。

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