リラと第13小隊
〈第1防衛ライン崩壊前〉
「リラ伍長! ヘアアレンジさせて下さい!」
休憩時間、塹壕内で木箱に座っていると若い女性隊員に声をかけられた。
見かけない顔なので他の部隊に所属している子だろう。
「えっ? 良いけど……でも、大丈夫? 皆、休憩時間とは言え隊から離れちゃ駄目じゃない?」
「許可は貰いました!」
一体何の許可を貰って来たのだろうか。
「分かった。じゃあ、任務に支障が無い感じでお願い!」
「分かりました!」
彼女はきゃっきゃっと楽しそうに私の髪を梳かし始めた。
妹達もよく私の髪で遊んでいたのを思い出す。
私の髪をいじっている間、彼女は私に数日前助けてもらったこと。
実家が床屋で自分なりのお礼がしたかったらしい。
「出来ました! リラ伍長、すっごく可愛いです!」
暫くすると彼女は満足したそうで、ふーっと額の汗を拭う素振りをした。
「ありがとう!」
「いえいえ! こちらこそ本当にありがとうございました! また来ますねっ!」
そう言うと彼女はパタパタと走って去っていった。
テントに戻ると第13小隊の仲間がにまにまとこちらを見てきた。
「我らの伍長が随分可愛くなって帰ってきなさった」
「揶揄うのはよしてくれ」
「リラ伍長も大変だな、助けた後輩の御守は」
御守など大層なことはしていないが、先程の彼女のように、前線で助けた隊員にその後お礼を言いに来られることは少なくなかった。
今回のような初対面でのスキンシップ? は初めてだったが。
「彼女の気が緩まないかだけ心配だよ」
「それを言うなら、伍長の今の髪型も大概じゃないか?」
そう指摘されハッと自分の髪を触る。
気にしていなかったが、どうやら私の髪型はサイドテールになっているらしい。
ヘアアレンジをした後輩が私の後ろではなく、横に座っていた弊害が顕著に現れていた。
「今直すから見なかったことにしてくれっ!」




