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君たちの時代にいたい  作者: たかゆき宗也
4章 番外編
29/53

前兆

 4月27日。

 体力検定も終わりルミエール国軍の司令官達はそれぞれの業務に戻っていた。


「失礼します、アメッサです。報告書を提出しに参りました」

「入れ」


「先日に行われた体力検定の報告書とヴァッサ周辺の不審船の報告書です」

「ご苦労」


 総司令官はゆっくりと書類に目を通していた。


「体力検定で交戦をしたそうだな」

「はい」

「どの位置だった」


 月山の地形は少し変わっているが、それはこの大陸の地形を模していた。

 そして私が参加した黄色の組み分けは小さな東国(ルミエール)兵。

 赤組は西国(ヘルツカイナ)兵を見立てていた。


「はい、東口から山頂に向かって前進。北上し敵と接敵。穴があったのは東国(ルミエール)上ですと、この位置です」


 私は机に広げた地図を指さした。

 そこは、ノイの南部、ヴァッサの北部に当たる位置だった。


 体力検定時、敵役は殺しが目的で接触した。

 だが、この国に侵入する事が目的なら?

 

「山間部には列車も通っています」

首都(プロス)まで容易に来れてしまうな」


「確実に国内……軍内部にも侵入者がいるとみて良いかと」

「そうだな……」


 ルミエール国軍では1か月前から隊員が次々に行方不明になっている。

 よくあること(逃亡兵)と片付けることも出来るが。

 これを私達司令室では西国(ヘルツカイナ)兵による誘拐だと考えていた。

 士気低下を防ぐための自軍に対するプロパガンダではなく、本当に、だ。


「やはり、初動はリネア川周辺だろうな」


 ナオキ総司令官が地図をトントンと叩いた。

 

ヴァッサには南北に縦断するリネア川が流れていて、ゴンドラが交通手段の1つとなっている。

 

 リネア川の西は戦線だが、東側は避難せず暮らしている国民も多い。

 

 そういえばヴァッサではリネア川を渡ったらお化けに攫われるという内容の歌が流行っていると、レイチェルが言っていたな。

 実際には戦争が行われている訳で、子供を脅すための歌だろうが、言い得て妙だな。

 

「はい、恐らく列車で移動中の隊員を拘束。リネア川付近で下車しゴンドラに移動。南下し港から偽装船経由で西国(ヘルツカイナ)まで逃走しているかと」

 

 人身売買か、労働力としてか。

 到底、条約で許されている行為ではない。


「5月3日から春季休暇。2日は土曜日ですし、1日の夕方には多くの観光船が出港します」


 問題を放置しておくことはできない。

 

「それに、7月にはハドワで交流会です。内通者の特定と実行犯の確保を急ぎたいのですが」

 

東国(ルミエール)の信用に関わる事だ。誰にでも任せられる事ではない」

「それは…………」

「だが手の空いている司令官は少ない、引き受けて貰えるか」

「はい、任せてください……!」


 列車などを調べる暇はない、まずは港で船を確保するのが先だろう。

 

「それと、あの小型の銃についてですが……東国(ルミエール)の技術では、大量生産は不可能だと考えております」


 提出した資料の内容を思い出しながら、個人的な意見を述べる。

 体力検定時、選べる武器の中にあった小型の銃(模擬銃)

 あの衛生兵は二丁持ちなどという奇行をしていたが。

 あれは国内の革新派から没収した武器を元に作られたレプリカだった。


 革新派がなぜあのような武器を持っていたのか不明だが、西国(ヘルツカイナ)との密輸と見ていいだろう。


「国内で不審な金の流れが無いか調査します」

「そうだな。だが、君一人では時間も力も足りないだろう。マイ副総司令官にも伝達しておく」

「ありがとうございます」

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