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庭には3羽、ニワトリがいる。  作者: 優木凛々
第3章 反転

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24/24

2027年3月21日 『庭には■羽、ニワトリがいる。』

 

 優真が顔を上げると、窓の向こうに真っ暗な庭が見えた。

 わずかに開いた窓から、風の音と共に沈丁花の香りが漂ってくる。


 優真が掠れた声でつぶやいた。



「おじさんは……一体何を埋めたんだ……?」



 彼はヨロヨロと立ち上がった。

 頭がガンガンし始めた。

 これ以上関わってはいけない、と本能が告げてくる。



「……警察を呼ぼう」



 優真はスマホを取り上げた。

 警察に電話しようする。しかし――



 ガガガガ……



 スマホから聞こえてくるのは、イヤホンと同じく、壊れたような音。

 音はどんどん大きくなり、電源を切っても鳴り続ける。


 優真は顔を歪めてスマホを床に投げつけた。

 おぼつかない足元で玄関に向かう。

 暗い中で光るセキュリティパネルの「緊急」ボタンを何度も押す。

 しかし



 ガガガガ……



 壊れた音が玄関を鳴り響いた。

 焦って様々なボタンを押すが、音が止むどころかどんどん大きくなっていく。


 優真は耳に手を当てた。

 玄関から逃げるように走るが、玄関とリビングに響く故障音が、廊下の奥まで鳴り響いてくる。



「なんだこれ!」



 優真は夢中で、庭に通じるドアを開けると、つんのめるように庭に出た。



 バタン



 背後でドアが閉まる。





 庭は嘘のように静まり返っていた。

 肌をはりつくような空気の中、沈丁花の粘り気のある甘い香りがむせ返るほど強く漂っている。



「……うっ」



 優真は思わず口元を押さえながらえずいた。

 あまりの強い香りに、胃の底から何かがこみあげてきそうになる。


 何とかか耐えて顔を上げると、塀際に植えられた庭木が目に入った。

 全てが甘く強い香りを放つ木であることに今更気が付く。


 そして、優真はふと背後から気配を感じた。

 振り向くと、月の光の下に“なにか”が佇んでいるのが見える。

 目が合い――暗転。



 むせ返るような強い沈丁花の香りが、静かな庭に漂っていた。








 *







 翌日、11:30。


 買い物袋を提げた美咲が、片瀬邸の門の前に立っていた。

 インターフォンを推す。



 ピンポーン



 家の中から明るい音が響いてきた。

 すぐに静かになる。


 美咲はもう一度インターフォンを鳴らした。

 屋敷はシンとしており、人のいる気配がない。


 しばらくして、美咲は踵を返した。

 スマホをいじりながら、元来た道を戻り始める。


 周囲が静寂に包まれる。

 風にのって沈丁花の甘い香りが漂っている。



 静まり返った屋敷の中から、まるで巨大な骨がきしむような、重い家鳴りの音が響いてきた。






 END




ここまでお読みいただきありがとうございました。


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