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庭には3羽、ニワトリがいる。  作者: 優木凛々
第3章 反転

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21/24

2027年3月20日 『交番前』

 

 駅に入る前に、美咲が口を開いた。



「私、ちょっとお手洗い行ってきますね」



 優真は周囲を見回した。

 駅前ロータリーに面した小さな交番が目に入り、指を差す。



「俺、あそこの交番のところにいますね」

「わかりました、行ってきます」



 美咲が足早に去っていくのを見送ると、優真は交番に向かった。

 スマホを片手に、交番の横にある大きな掲示板に歩み寄る。


 そして、何の気なしに掲示板を見て――



「……っ!」



 優真は思わずスマホを落としそうになった。


 掲示板には、2枚のポスターが貼られていた。


 1枚は、よく見る指名手配犯のポスターで、

 もう1枚は、女の子の写真が大きく載ったポスターだ。



 ―――――――

 佐々木芽衣ささき めいさん

(2010年生まれ/2019年5月11日より行方不明)

 当時7歳・現在17歳


【行方不明当時の服装】

 ・赤い縁のメガネ

 ・白いワンピース

 ・ピンクのリュックサック


 心当たりの方は下記までご連絡ください。

 ○○警察署(生活安全課)

 TEL:090-xxxx-xxxx

 ―――――――



 ポスターに載っていたのは、赤縁の乱視用メガネをかけた、おさげの女の子だった。


 優真は冷や水を浴びせられたような気分になった。



(この子……もしかして、和美おばさんの部屋にあった写真の子じゃないか……?)



 震える手でスマホを取り出して『佐々木芽衣』と検索すると、こんな記事が出てきた。



 ―――――――

【小1女児不明】佐々木芽衣さん行方不明 

 2021年5月12日


 神奈川県鷺ヶ浜で、小学1年生の佐々木芽衣さん(7) が行方不明になっている。

 芽衣さんは 5月11日午後4時ごろ、ピアノ教室のレッスンを終えたあと、外で迎えに来る母親を待っていたが、その後の行方が分からなくなった。

 警察は周辺の聞き込みと防犯カメラの確認を進め、 「些細な情報でも提供してほしい」と呼びかけている。


 ―――――――




(“鷺ヶ浜”って、隣町だよな……)



 優真の背中を嫌な汗が流れ始めた。


 和美おばさんの部屋で見つけた写真の裏に、

「火・金ピアノ教室」と書いてあったことを思い出す。



(……偶然……だよな……?)



 優真が目を見開いて立ち尽くしていると、



「雨宮さん、お待たせしました」



 後ろから美咲の明るい声がした。

 振り向くと、美咲が優真の顔を見て、大きく目を見張る。



「雨宮さん! 大丈夫ですか!? 真っ青ですよ!」



 彼女は慌てて優真に駆け寄ってくると、近くのベンチに座らせた。

 駅のキヨスクで水を買ってくると、心配そうに隣に座る。



「大丈夫ですか? これ、飲んでください」

「……ありがとうございます」



 優真は水を受け取ると、一口飲んだ。

 冷たい水の感触に、鈍くなっていた感覚が戻ってくる感じがする。


 彼は胸に手を当てて深呼吸した。

 気持ちを何とか落ち着けると、美咲を心配させないようにと、なるべく普段通りに口を開く。



「すみません、なんだか立ち眩みがしてしまって」



 大丈夫だと言うと、美咲が、ホッしたような顔をした。



「良かったです。もう少し休みましょう」

「ありがとうございます」



 優真は震えそうになる手を押さえながら、水をもう一口飲んだ。

 息をつくと、内心苦笑いする。



(……俺、どうかしてる)



 部屋にたまたま写真があっただけで、

 行方不明事件と和美おばさんをつなげるのは、さすがやりすぎだ。



(俺、ちょっとヤバいかもしれない)



 優真は大きく息を吐いた。

 嫌な思考を振り払うように首を振る。


 そして、改めて美咲にお礼を言うと、心配されながらベンチから立ち上がった。

 なるべく普通に電車に乗り、美咲を心配させまいと、なるべく普通に会話をする。


 美咲は優真に合わせて会話をしながらも、ときおり心配そうな顔をした。

 案じるように優真を見る。






 しばらくして、電車は夕方の鷺が首駅に到着した。

 改札を出ると、美咲が気遣うように優真を見上げる。



「まだ顔色が良くないんですね。明日はゆっくり休んだ方がいいんじゃないですか」



 心配の色を浮かべる美咲に、優真は微笑んだ。



「ありがとうございます、でも、大丈夫なんで、ぜひ来てください」

「本当に大丈夫ですか……?」

「はい、もう元気になったので」



 優真は明るく言った。

 これからずっと1人で過ごすのは、精神的にヤバい気がする。

 美咲に来てほしい。


 その後、2人は、明日11:30頃に美咲が優真の家に行くことを決めた。

 夕焼けの下、途中まで一緒に並んで歩き、T字路で手を振りながら別れる。



「それじゃあ、明日伺いますね」

「はい、楽しみにしています」



 美咲が見えなくなるまで見送った後、優真は帰路についた。


 門を開けて家に入ると、玄関横にあるセキュリティパネルからロックを解除する。


 そして、廊下の電気を付けると、優真は2階への階段に通じる扉をジッと見つめた。






和美おばさんの部屋で写真を見つけたのはこちらです↓

https://ncode.syosetu.com/n9985me/6


そして、残りあと3話です。



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