2026年11月21日 『家庭菜園』③
本日3話目です。
「……ん? なんだこれ?」
優真は首をかしげた。
表面上は茶色い普通の土なのだが、掘り起こした土が真っ黒だ。
軍手でその黒い土をすくって見て、優真はつぶやいた。
「これ……“くん炭”、だよな?」
それはもみ殻の形をした黒い粒だった。
手を突っ込んで掘ってみたところ、かなり奥まで炭の層が続いていることが分かる。
「これ……土の1割どころじゃないよな」
土壌改良の方法の1つだろうか。
そう首をひねるものの、とりあえずこの場所に野菜を植えるのは無理そうだと考える。
優真は、その場所から少し離れた場所を掘り始めた。
しかし、すぐに黒い炭の層にいきついてしまう。
どうやら、炭はかなり広範囲に埋められているようで、
元家庭菜園だった場所のどこを掘っても炭の層に行き当たる。
(まいったな……)
そして、ザクザクと掘り起こすこと、しばし。
かなり端の方まで進んで、ようやく炭が出ない場所に行きついたと思った――その瞬間。
ガキッ
今度は、スコップの先に何か硬い物が当たった。
掘り起こしてみると、それは土だらけの青色の瀬戸物だった。
その下には、白いプラスチックようなものが埋まっている。
(なんだこれ?)
土を払ってみると、それは小さな茶碗だった。
プラスチックの方は、色あせた小さなコップで、持ち手が取れている。
「……これ、子ども用っぽいな」
優真は眉をひそめた。
片瀬夫婦に子どもはいない。
どうして子どもの茶碗とコップが埋まっていたのだろうか。
周囲をもう少し掘ってみると、色あせたプラスチックの箱のようなものが出てきた。スプーンの金属部分も出てくる。
優真は考え込んだ。
「……もしかして、ここ、燃えないゴミが埋まってるんじゃないか……?」
子ども用の茶碗は親戚のためのもので、使わなくなったから捨てた――というのが一番ありえる気がする。
「……となると、ここをこれ以上掘るのはナシだな」
ゴミを掘りだしたら、ゴミ袋にまとめて捨てなければならない。
それなら、このまま埋めておいた方がいい。
優真は茶碗やコップを土の中に戻すと、土をかぶせた。
ポンポン、と土を叩いて元通りにすると、とりあえず、今日のところは植木鉢にベビーレタスを植えることにする。
「庭のどこに畑にするかは、おいおい考えるか」
その後、優真は美咲に教えられた通り、植木鉢に庭の土と培養土を混ぜ合わせた。
べビーレタスの種をまく。
そして、美咲に「ベビーレタス植えてみました」と写真とメッセージを送り終わると、金木犀の香りが強く香ってきた。
どうやら風が吹いてきたらしい。
「寒くなってきたな……」
優真は手をこすり合わせると、薄暗い庭を後にした。




