第8話 深夜の会合
魔力切れからしばらくすると、魔力が回復したみたいで動けるようにはなったね。でも結構長い時間動けなかったし制御できるようになるまでは強い魔法はお預けかな。
コンコン
「どうぞー」
「失礼いたします。」
「レドルだっけ?何か用?」
「昨晩のことで少々。フラン様から例のお話も聞きまして。」
「例の話?あぁ、あのことね。」
さすがフラン、仕事が速いね。
「確かにボクは本物の魔王じゃない。他の世界から魔王を召喚するときに巻き込まれただけのただの元人間だよ。」
「どおりでそれだけ魔力操作がザルなのか。」
「やっぱ雑?」
「あぁ。」
「それよりもあなたは自分の身を心配したほうがいいんじゃないの?」
「どういうことだ?」
「ボクもある程度だけど魔力が見えるんだよ。あなたでは不可能なはずの不自然な高出力の魔力を昨日の夜見ちゃったんだよね。あの場所にはあなたしかいなかったはずなのに。」
「知りたいのなら今晩もう一度来るんだな。ただし一度関わったら二度とかかわりを断つことはできないと思え。その覚悟があるなら来い。」
それだけ言い残して出て行っちゃった。でも向こうからかかわりを持たせてくれるなんて。もし外部と通じててスパイ的なことをやってるんだったら表面上だけでも魔王でありそれなりの権力を持つはずの"魔王ヒヨリ"が味方につくのはメリットだし当然ではあるかな。
「衛兵さん、フランを呼んでくれる?」
「かしこまりました。」
衛兵に指示をして5分もしないうちにフランが部屋にやってきた。
「ヒヨリ様、いかがなさいましたか?お身体はもうかなり良くなられているようですが・・・」
「うん。動けるくらいにはなったよ。で、さっきレドルが訪ねてきたんだけど・・・」
「詳しく聞きましょう。」
「自分のやることにかかわる気があるのなら今晩来いって言われたよ。行ってみていい?」
「向こうから関わる機会を提示してきましたか。そこまで大きいメリットもないでしょうに。」
「レドルの情報だと表面上だけってことになってるけど、それでも"魔王"が味方に付くのは大きなメリットだと思わない?表面上とはいえ一時的に強い権力を持ってるのは事実なわけだし。その権力が及ばないってなると人間たちに偽物だってバレるから四天王でさえも従わずを得ないでしょ?」
「それはそうですね。他に何か言われたりしましたか?」
「魔力が雑って言われたから魔王の召喚に巻き込まれた元人間ってことにしといたよ。」
「機転を利かせていただきありがとうございます。四天王たちにも共有しておきます。」
「お願いね。」
ってことで動けるようにはなったけど、魔力切れで疲れ切った体を休めているうちにあっという間に夜、昨日レドルと会った時間が近づいてきた。そろそろ向かおうかな。
訓練場までの道は相変わらず静かだ。皆が眠りにつき体を休めているころだろう。
「来たか。覚悟はできているようだな。」
「さぁね。どっちかっていうと好奇心に従った結果、かな。」
「まぁ、いい。そろそろだ。」
レドルの背後から強い魔力を感じたと思ったらそこにはさっきまでいなかった2人の人間がいた。
「なるほど、転移の魔法だったんだ。」
「おいレドル。魔王側の奴が他に同席するなんて聞いていないぞ。」
「そうよ。情報が洩れたらどうするつもり?」
「心配はいらない。この空間から出た後、この空間であったことを口外できない契約を強制的に締結する。」
「そもそも漏らすつもりもないけどいいよ。」
「洩れる心配がないのならいいが。そもそもそいつは誰なんだ?」
「ボクはヒヨリ。異世界から魔王を召喚するときに巻き込まれた元人間だよ。」
「魔王の召喚についてはレドルから聞いているが、巻き込まれた人間がいたのか?」
「どうやら四天王たちはこいつを魔王として公表するつもりらしい。」
「魔王が力をつけるまでのダミーってわけね。」
「そうみたいだな。」
「一応自己紹介をしておく。といってもここで俺たちは本名を使っていない。俺のことはアルファ、こいつのことはベータと呼んでくれ。」
「分かったよ。ボクのことはヒヨリでいいよ。」
「権力者が加わってくれるのはありがたいが、信頼に値するかどうか見極めさせてもらう。」
「そこは俺がしっかり見張っとくさ。」
「それより前に最低限の信頼を築くためにもヒヨリの情報をすべて聞いてもいいかしら?」
「いいよ。情報っていうほどのことはないかもだけど。さっき言った通り異世界では人間だったけど、この世界に召喚されたときに原子悪魔になったみたい。スキルに関してはわからないし、魔法は使えるけどこの世界の法則からは外れてるって四天王からは言われたよ。魔力の制御がまだできないから強い魔法使ったら1回で魔力切れになっちゃうけど。」
「この世界の法則からは外れてる?」
「うん。うまく扱えてないんだけど、この世界だと魔力を扱えて詠唱をすれば魔法が使えるんでしょ?」
「そうだな。」
「それが例えば[ウォーターボール]がちゃんと飛ばずに途中で弾けたりするんだよね。」
「確かに聞いたことないわね。異世界から来たことによる弊害かしら?前の世界ではどうだったの?」
「前の世界は魔物もいないし、魔法も存在してない世界だったからわからないね。この世界に来て初めて魔法を使ったから。」
「そうか。そうなるとスキルの干渉の可能性もあるが、それよりもなぜ、お前は巻き込まれた一般人だと判断されたんだ?2人の魔王候補が召喚された可能性だってあるだろうに。」
「もう1人の魔力量と魔法の才が圧倒的だったんだよ。魔力のコントロールも完璧だし、この世界には存在しない魔法だけど強力な魔法をいくつも扱えるんだって。」
「なるほどね。それに対して大した力を持っていないあなたは巻き込まれただけだった、と。」
「その説明だとその魔王とお前はそれぞれ別の世界から召喚されたことになるだろ?」
「それに関してはボクもよくわかってないよ。ただ、魔王勢力はもう1人を魔王として、ボクは替え玉で表面上の魔王を演じるって決めたことだけは事実だよ。もしかしたらボクも魔王の素質を持つのかもしれないけどね。」
「そうか。まぁ、情報を素直に吐いてくれたのはいいことだ。この先も心掛けてくれ。そうすれば俺たちはお前を少しは信頼できる。用件はこれだけか?重要な要件だから呼び出しには感謝するが。」
「あぁ。アルファ、ベータ。そろそろ見回りが来てもおかしくない時間だ。早めに帰っておけ。」
「そうだな。それじゃヒヨリ、また今度、な。レドルはヒヨリに俺たちとの関係について話しておいてくれ。」
含みのある言葉を残してアルファとベータは転移魔法で帰って行った。




