第7話 暴発
レドルについてはボクが接近するチャンスをうかがうってことで今日の訓練がスタートした。
「私はまだヒヨリ様の魔法を見ていませんのでお見せいただいてもよろしいですか?」
「うん。我が力の奔流に眠りし根源の水脈よ。我が声に応え、清流の水球を顕現せよ[ウォーターボール]!」
的に向かって発射した水球は昨日よりもちょっと前まで進んで相変わらずはじけちゃった。
「これは素晴らしいですね。」
「そうなの?」
「はい。魔法の習得というのは簡単なものでもありません。魔力操作を1日で習得しているだけでも素晴らしいことです。それに加えて、昨日レイから聞いていると思いますが、この世界では詠唱をすることで特定の魔法が出てきます。その威力の差などは消費魔力量に応じて変化しますが、魔法の効果、挙動は一切変わりません。レイがヒヨリ様にお見せしたのが一般的な[ウォーターボール]です。水球を作り出し、二院委の方向に打ち出すというもの。魔力量で変化させることが出来るのは、速度、飛距離、水球の大きさ、熟練の魔法使いであれば温度くらいまでは操ることが出来ます。」
「へぇ。それとどんな関係が?」
「今のヒヨリちゃんの[ウォーターボール]は普通の奴と挙動が違うのよ。進む速度と飛距離に関しては魔力を微弱にすれば私たちでも再現できると思うけどね。[ウォーターボール]って込めた魔力量で飛べる飛距離まで行ったあとはそのまま下に落ちちゃうはずなの。」
「でも、ボクのは空中で弾けてる?」
「そういうこと。それも弾けた水がすごく鋭い針みたいなのよ。多分練習すればその水がどう動くかまで計算して[ウォーターボール]を使えば集団を一撃で倒せると思うわ。」
「私も同じ意見です。この世界の常識を覆す力なので信じがたいですが。」
「そうなんだ。そんな自覚なかったけど。」
「そうですね。ヒヨリ様が持つ魔王としての素質が魔法の才なのかはたまたこの現象までもが何かしらのスキルによるものなのかはわかりませんが。」
「スキルによるものってことはないんじゃない?この世界の法則を崩すスキルなんて聞いたことないでしょ?」
「私は異世界からお呼びした以上何が起こってもおかしくないと考えています。」
「とりあえず、[ウォーターボール]を中心に練習してみるよ。」
「いえ。ほかの魔法も覚えていきましょう。詠唱を覚えるだけでいいですので。」
「そうね。試しに1回[ヘルフレア]を使ってみてくれない?フランちゃんお手本見せてあげて。」
「レイがやればいいじゃないですか。まったく。我が力の奔流に眠りし根源の炎よ。我が声に応え、災禍の炎を顕現せよ[ヘルフレア]!」
昨日のレイのと比べると範囲が狭くて威力が高く見えるね。レイのは全身を燃やすような感じだけど、フランのは局所的に焼き尽くすって感じかな。
「レイの者とは少し異なると思いますが、このような感じです。」
「そうね。フランちゃんの魔法は大体私に比べて小さく高威力って感じね。殺傷性は私のよりも高いけど、ちょっと外しやすいわよね。」
「それを外さないようコントロールを鍛えてきましたので。」
「そうね。それじゃヒヨリちゃんやってみて。」
「うん。我が力の奔流に眠りし根源の炎よ。我が声に応え、災禍の炎を顕現せよ[ヘルフレア]!」
ガクッ
放った瞬間ものすごい熱波が来たと思ったら足に力が入らなくなって、立っていられなくなった。なんで?全く力はいらないんだけど。
「ヒヨリ様!大丈夫ですか?」
「うん。何が起こったの?」
「その前に少し場所を変えましょう。」
フランにお姫様抱っこで運ばれて私の部屋に運ばれた。ほんとに体に力が入らないんだけど、なんでだろ?
「ありがと。」
「いえ。」
「で、あれ何が起こったの?」
「それが、私どもにもさっぱり。ヒヨリ様が魔法を放ったと思えば巨大な炎が的をすべて焼き尽くし、あっけにとられていた私がヒヨリ様のほうを見たころには先ほどのようにヒヨリ様が倒れておられました。」
「症状的に魔力切れかしらね。[ヘルフレア]1発に魔力をすべて注ぎ込むなんて本来できないんだけどね。」
「そうなの?」
「そうよ。それぞれの魔法には魔力を込める最低の量と最大の量があるのよ。」
「そうなんだ。」
「ですが、先ほどのヒヨリ様の魔法は明らかにその上限を超えています。そうでもなければあれほどの炎を生み出すなど・・・」
「ちなみに[ヘルフレア]ってどのくらいの魔力を使うの?ボクの魔力量だと使うのがギリギリだったみたいなことはない?」
「残念ながらありません。[ヘルフレア]に使う魔力量はそれなりに多いですが、ヒヨリ様から感じる魔力というよりも魔法を使用した際に感じた魔力がすさまじく、上限を超えているというのは明らかです。」
「そうなんだ。」
「少なくとも分かったこととしてはヒヨリ様は確実に複数人に対して一度に魔法を命中させることが出来るということ。そしてヒヨリ様の素質はそれを可能にする技術もしくはスキルを所持しているということ。といったところですね。」
「そうね。ほんと怖い力だけどね。」
「魔力が尽きてしまっていますし、先ほどのことでお疲れになったでしょうし、本日の訓練はこれまでにしておきましょうか。何かあれば部屋の外に待機させている近衛に申し付けていただければすぐに来ますのでお呼びください。」
「私も呼んでもらっていいからね。」
「うん。ありがとね。」




