第3話 魔力と魔法
「さてと、ヒヨリちゃん。今日から大変だけど頑張りましょうね。」
「よくわからないけどお願いね。魔法とかに関しては本当によくわからないから。」
「そうね。私の見立てだとヒヨリちゃんの魔力量すごく多いから、魔法が得意なんじゃないかなー、と思うのよね。」
「魔力?」
「前の世界で戦うこともなかったってことだけど、どんな世界だったか聞いてもいい?」
「えーっとね、この世界についてまだ知らないことも多いから確かなことは言えないけど、多分、文明はこの世界よりも発展してて、人を乗せて高速で移動できる乗り物だったり、食べ物を冷やして補完するものだったり、逆に温めて火を使わないで加熱したりできるような世界だよ。その分、魔力は存在してないんじゃないかな?少なくとも魔法だったりスキルを使う人っていうのはいないかな。」
「随分と便利なものが多いのね。とりあえず魔法が存在していないってことはわかったわ。それじゃ今日はとりあえず魔法がどんなものか見てもらうのと座学をしましょうか。魔法専用の訓練場があるからそこに行きましょ。案内するわ。」
「うん。お願い。」
レイに連れられ魔法訓練場に来た。魔法を当てるようの的が用意されてるみたい。
「この訓練場は強力な魔法を撃っても壊れちゃわないよう壁伝いに結界が貼られてるのよ。」
「この薄い光の壁みたいなの?」
「見えてるのね。魔法適性が低い子は見えない子が多いのよ。きっとヒヨリちゃんは魔法適性高いわよ。」
「そうだといいな。魔法にはあこがれてるし。」
「あら、魔法のない世界の生まれなのに?」
「えっとね、おとぎ話とか人が作ったお話の中には魔法が出てくるんだよ。」
「へぇ。実際にないものを考えるなんてすごいわね。」
「言われてみると確かに。」
「でもそれなら、魔法の存在をすぐに受け入れてることにも納得ね。それじゃ私が魔法を使ってみるから見てて。」
「うん。」
レイが数歩前に出て的を狙って詠唱を始めた。
「我が力の奔流に眠りし根源の炎よ。我が声に応え、災禍の炎を顕現せよ[ヘルフレア]!」
ものすごい勢いの黒い炎が的を包み込んだ!けど、これだけの威力で1つの的にしか当たってないのなんか変な感じ。
「どうかしら?今のは炎系統最上位の[ヘルフレア]よ。」
「すごかったけど、威力調整したりした?」
「どうしてそう思ったのかしら?」
「いや、あれだけの大技で1つの的にしか当たってないのなんか変だなーと思ってね。」
「変といわれても魔法ってそういうものなの。複数の敵に当てれるんだったら剣士とか戦士がいる意味がないでしょ?近づかれる前に撃っちゃえばいいんだから。」
「ボクのいた世界での魔法のイメージって広範囲なものもあったからさ。」
「そんなことが出来たら戦争なんて魔法力の強さがものを言っちゃって各国の軍事バランスが崩れちゃうわよ。でも、その発想はなかったわ。魔力を拡散させるようにすればできるのかしら?いや、それよりも、今はヒヨリちゃんよね。座学って言ってたけど、本当にただ説明をするってわけじゃなくて魔力の使い方を覚えるところからね。この世界でそれなり魔力を持って生まれると、ある程度扱い方がわかる人が多いから教えるの難しいんだけど・・・」
「ボクはどうすればいい?」
「そうね・・・。あ、そうだわ。さっき私が[ヘルフレア]を使った時に魔力を感じなかった?目で見えたでも肌で感じたでもいいわ。」
「詠唱中に手に白い光が集まるのは見えたけど・・・」
「そう!それが魔力よ。それなら話は速いわね。もう一度[ヘルフレア]を使ってみるから撃つ前に私の手に触れてみて。きっと魔力を感じるはずよ。」
「分かったよ。」
「我が力の奔流に眠りし根源の炎よ。我が声に応え、災禍の炎を顕現せよ[ヘルフレア]!」
詠唱を始めたレイの手を握ってみたけど、何か触れたことのない力を感じる。何となく感じるんだけど、それが自分の中にあるのも感じる。胸、心臓に近い場所かな?そこに強く感じる。
「どうかしら?」
「なんとなくわかったかも。胸のあたりにおんなじ力があるのを感じたよ。」
「それがわかれば十分ね。あとは簡単な座学なのだけれど、詠唱のお話ね。それぞれの魔法には詠唱があって対応するものを唱えることで魔法を使えるわ。遠い昔には詠唱をせずとも魔法を使える人もいたみたいだけど、まぁ、おとぎ話みたいなものね。」
「そうなんだ。やってみてもいい?」
「いいけど、[ヘルフレア]の詠唱しか聞いてないでしょ?初級の魔法のものを教えるわ。」
「うんお願い。」
「それじゃ、行くわよ。我が力の奔流に眠りし根源の水脈よ。我が声に応え、清流の水球を顕現せよ[ウォーターボール]!」
今度は球状の水が出てきて的めがけて飛んでいった。なるほどね。基本の詠唱があってその一部が魔法によって違うみたいな感じだね。
「それじゃやってみてちょうだい。」
「うん。我が力の奔流に眠りし根源の水脈よ。我が声に応え、清流の水球を顕現せよ[ウォーターボール]!」
バシャ
失敗しちゃった。水の球を作ることはできたんだけど、前に飛ばせなかったみたい。
「うまく飛ばなかったわね。」
「うん。失敗しちゃったや。」
「ちょっと気になることがあるんだけど、フランに確認もしたいから待ってもらってもいいかしら?」
「ん?いいけど・・・」
そんなこんなでレイが訓練場から出て行っちゃった。それならどうやったら飛ぶか練習してみようかな。
と、ヒヨリがひたすら[ウォーターボール]の練習をし始めた裏で・・・
「ちょっといいかしら?」
「あら、レイ。ヒヨリ様の訓練をしているはずでは?」
「そうだったんだけど、ちょっと話が変わっちゃってね。」
「ヒヨリ様を置いてくるくらいです、相当なことなのでしょう。聞きましょうか。」
「ヒヨリちゃん、魔力の感覚はすぐに習得できたみたいなんだけど、試しに[ウォーターボール]を使ってもらったら飛ばなかったのよね。」
「飛ばなかった?どういうことですか?」
「これだけじゃ伝わらないわよね。水球はできたのだけれどその場で下に落ちちゃったの。」
「そんなことありえるんですか?[ウォーターボール]の魔法は水球を作りそれを飛ばす。[ウォーターボール]を発動したのに飛ばないなんて・・・」
「私もびっくりしてるのよ。多分ヒヨリちゃんはこの世界の魔力とか魔法に干渉するスキルか、この世界そのものを揺るがすようなスキルを持っているみたいね。それかヒヨリちゃんがこの世界の法則を受け付けてないのかも。」
「どちらにしろこれは難航しそうですね。明日からは2人でつきっきりでやりましょう。時間もありませんし。」
「そうね。」
と、魔王の知らない場所で翌日以降の予定変更の決定と、この世界を揺るがしかねない事実に気づきかけた2人の魔族がいるのだった。




