第25話 神々の受難
レドルに伝言もできたし、これで勇者の想定は『魔王ナナ』との戦闘になってくれるかな。間違った情報ほど怖いものはないよね。
魔法の練習もできないしせっかくゆっくりできる時間なんだしいろいろ整理しようかな。
まず、ボクのスキルは{全能神}世界のあらゆる法則を無視して自分のイメージを実現する力ってとこかな。でも、個人への干渉はできないみたいなんだよね。できるのはあくまでも環境だったり、自分にだけ。
スキルの存在がわかってから魔法についてもいろいろと分かった。っていうか、知りたいと思ったことが脳内に流れ込んでくるような感じだね。これまでボクが持ってたイメージで合ってはいるんだけど、無詠唱については若干違ったみたい。生物はみんな独自の『魔法回路』ってのを持ってて、その回路から魔力を器に流し込んでるんだけど、その回路に解析能力を備えてないと無詠唱はできないみたい。で、フランの魔法回路に干渉しようとしてみたんだけど、できなかったんだよね。
そしてこの世界の魔法術式はこれまでボクがイメージしてた器そのもののことを指すみたいなんだけど、その器さえ作ってしまえばいくらでも好きな魔法を作れるみたい。つまり、これまでボクがやってた感覚で好きな魔法をいくらでも量産できちゃう。しかもボクが作る魔法自体はこの世界に新たな術式を生み出してるだけだからカイルみたいに魔法回路に解析能力を備えてれば大変だろうけど再現できるはず。
大昔には魔法陣を使った魔法もあったみたいだけど、今には伝わってないみたい。魔法陣自体が器の役割を果たすみたいだね。
お札みたいなのに書いてそれに魔力を流し込むだけでも起動できそうだし、新しい魔法に関しては魔法陣に組み込んじゃえば誰でも使えるようになりそうだね。
ボクがこのスキルを得てこの世界に来たことでこの世界に起こる変化は大きく分けて3つ。
1つ、魔族側が負けると考えられていた人類対魔族の戦争の戦力バランスの変化。2つ、勇者を討伐することで、世界情勢における魔物国メリオンの権力の増強。3つ、世界的な魔法レベルの上昇。
特に3つ目はこの世界自体が揺らぐほどの変化になりそうだけど・・・
地上で魔王がそんなことを考えながら夜を更かしているころ、その変化に頭を悩ませるものがいた。
「あら、レンちゃん、そんなに難しい顔してどうしたの?」
「どうしたもありませんよリア様。この状況を見てください。」
この世界の管理者レンと、創造主であるリアだ。彼女らの唯一管理できない『地球』。たびたびその来訪者が起こすパワーバランスの崩壊が発生する。
「日本からの召喚者ちゃんか。これはすごいね。この世界限定とはいえすべてがこの子の意のままって感じかな?」
「そうですよ。どうにか対策を考えなければ・・・」
「無理じゃない?このままいけば勇者は死ぬし、魔王が事実上全世界を手中に収めることになるでしょ?」
「その通りです。この世界はあくまでも人間と魔族が領地を分けて共存している世界だったというのに・・・」
「本当の意味での共存が始まってしまうってわけだね。そこまで杞憂することもないと思うよ。」
「なぜですか?」
「この子はその魔法を独占する気がない。あ、レンちゃんはまだ世界の声を聴けないんだっけ?」
「世界そのものの声は聞こえますが、個々人のものまでは。」
「この子は今、自分で作った魔法を呪符にすれば魔力があればだれでも使えるとかそんなこと考えてるから。」
「力を持つというのに?」
「そこが地球人、というよりは日本人の不思議なところだね。自分の力に溺れるんじゃなくて誰かのためになろうと考えるんだよ。この世界の管理をレンちゃんに任せるにはまだちょっと早かったね。私がやるべきものだし。でもこれもいい経験だよ。この世界の管理ができるならもう十分レンちゃんは世界の管理ができるってことになるし。頑張ってやってみて。」
神々がそのような話をしている中、その議論の原因となった張本人は呪符の代わりに外から拾ってきた医師に魔法陣の書き込みを始めていた。
「こんな感じかな?とりあえず[テレポーテーション]の魔法を書き込んでみたけど・・・。1回使ってみよっか。」
剣術訓練場に飛んでみよ。魔法訓練場はまだレドルがいるかもしれないし。魔法陣に魔力を流し込んで行き先を剣術訓練場に指定・・・
シュン
成功したみたい?これはいいね。詠唱がいらないみたいだし。1回使った石は消えちゃうみたいだね。装備品とか持ってるものは一緒に転送されてる。元の[テレポーテーション]と同じ効果だね。
もしかしたら勇者との戦いで有用かもだしいろいろと作っとこうかな。




