第23話 勇者
「何者だ?協力者、というわけではないようだが。」
「魔族相手に簡単に協力者の存在をほのめかしちゃっていいのかな?」
「構わないさ。協力者でないというのなら殺すまでだからな。」
「できるならやってみなよ。」
「見たところ貴様、野良の魔族や魔王軍の幹部クラスでもないだろう?もっと上位の存在だ。」
「さぁね。」
「あくまでも正体は名乗らないつもりか?」
「そうだね。名前は名乗りたくないね。代わりといっては何だけど、私の用件を教えてあげるよ。」
「要件?」
「そう。私は魔王ヒヨリ様の名代としてここに来ただけ。軍勢に一気に来られたら面倒だからちょっと脅かさせてもらったけど。」
「脅かす、か。あの威力の魔法を使っていてよく言うな。」
「さてと、用件だけど、さっさとこの軍勢を引き上げてもらいたいの。もちろん戦争というのならヒヨリ様はお受けになられる意思を見せているけど、明日は大事な戴冠式だからね。」
「それを知らずにここにきていると思うか?それにヒヨリとかいうやつは魔王の代理、だったか?実力、魔法の異質性から見てさっきから思っていることがあるんだが、・・・」
「私を魔王だとでも?」
「物分かりがいいじゃねぇか。こっちにはあんたらの情報は筒抜けなんだよ。戴冠式の日をわかって襲撃しに来てるに決まってんだろ。」
「貴方の目的は?」
「この戦争のか?んなもん魔王討伐と魔王軍を再起不能に追い込むことで得られる富と名声に決まってんだろ。」
「あっそ。それじゃ明日である必要はないでしょ?ヒヨリ様が明後日あなたの相手をされるとおっしゃられておられましたが?」
「いいだろう。そいつを殺し次第、魔王城に攻め込むとしよう。」
「ご自由にどうぞ。」
「だが、ここでお前を逃がすわけにもいかねぇよな。」
「面倒だから帰りたいんだけど。」
「ウィザードがたった1人で攻め込んできたんだ。逃がすと思うなよ?」
「帰るのは簡単だけど、逃げって言われるのは気に食わないね。どうせあれでしょ?私が後々邪魔にならないように討伐しておきたいとかそんなとこでしょ?」
「よくわかってるじゃねぇか。」
「それじゃここに宣言してあげる。私の名はナナ。今回の軍事行動において『ナナ』という名の魔族が干渉することはないって。」
「随分と魔王モドキの力を信じているようだな。」
「勝手に言っておくといいわ。どっちにしても私は帰る手段を持ってるから。[テレポーテーション]」
あっさりと離脱して魔王城に帰ってこれた。それにしてもかなり面倒そうな相手だね。多分汚い手をいくらでも使うタイプ。
「お疲れ様です。」
「うん。とりあえず明日の襲撃はないと思う。かなり陣形を崩したし、あの数だと立て直すのは大変だろうし。」
勇者と戦うことになったことに関しては黙っとこうかな。無理に心配させてもよくないだろうしね。
「そうですか。無事に戴冠式を行えそうでよかったです。」
「あくまでも戴冠式に乗じた襲撃が目的だったみたいだし、一旦は大丈夫と思いたいね。」
「あの勇者のことです。そう甘くもないでしょう。」
「まぁ、カイルのゆうとおりだね。まぁ、範囲攻撃の魔法で適度に嫌がらせは続けるとするよ。」
「行かれる際はお気をつけて。」
「分かってる。それよりもフラン、この後大丈夫?」
「戴冠式の準備がまだ終わっておらず・・・」
「カイル、引き継いで。フランとちょっと話があるから。あと、レドルに明日の夜ボクの部屋に来るよう伝えといて。」
「かしこまりました。」
現在の準備の進行状況をフランから引き継いだ後、カイルは向かっていった。ボクはフランを連れて、自室に戻ってきたわけだけど・・・
「ヒヨリ様、いったいどうされたのですか?」
「フランにだけは話しておこうと思ってね。それに聞きたいこともいくつかあるし。」
「何なりとお聞きください。」
「まずはこっちの話からね。明日の戴冠式に関しては妨害を阻止できたわけだけど、明後日魔王代理のヒヨリと勇者で戦うってことにして離脱してきたんだよね。」
「勇者と戦うのですか!?危険です!あれだけの軍勢がいるというのに。」
「そこに関しては問題ないよ。軍勢の騎士なんて戦力にカウントできないことくらいわかってるだろうし。」
「ですが・・・」
「勇者が強いこともわかってるよ。でも、ボクは負けないから。そのためにもいくつか聞きたいことがあるんだよ。原子悪魔について詳しく聞きたいなって思ってね。」
「原子悪魔について、ですか?」
「うん。本来人型を取ることは少ないんじゃないかなと思ってね。」
「その通りです。原子悪魔は魂の形そのままの姿でいることが多く、人間には醜い姿をしていると評されることが多いです。私からしたらかわいいと思うのですが。」
「そこは悪魔と人間の価値観の違いだよ。今のボクはどうだと思う?」
「正直に申し上げるのであれば魂そのままの形ではないかと。魂そのままの形というのはとても実体にできるものではありませんので。」
「やっぱりそうだよね。どうにか肉体を変形させて本来の形にしたいんだよね。」
「何故ですか?」
「そのほうが多分利便性が高いんだよ。この世界に来た時に悪魔になったってことは多分ボクという存在の本質は悪魔なんだよ。でもフランみたいに翼もない。飛ぼうと思ったら風魔法の応用をしないといけなくて制御に意識を取られちゃうからね。」
「翼が欲しい、と?」
「それだけじゃないけど、一番はそれかな。」
「ヒヨリ様はご自身のスキルをご存じですか?」
「いや、まだよくわかってないんだよね。魔法の法則を書き換えるものかなーって思ってはいるけど。」
「では自身を本来の姿に作り替えたいと強く念じながら今から言う言葉から最初に連想された言葉を唱えてみてください。」
「分かった。」
「全知全能、世界の法則すらも簡単に書き換えてしまう。」
「{全能神}」
え?体が光りだした?




