第19話 無詠唱
「カイルはまだ時間ある?」
「はい。深夜は何が起こっても問題がないようスケジュールを空けておりますので。」
「それじゃ魔法の訓練にも付き合ってくれない?」
「構いませんが、私でよいのですか?四天王は皆種族柄休息をとらずとも問題ありませんし、フランやレイのほうがいいのでは?」
「いや、カイルがいい。ちょっと試してみたいことがいくつかあるんだよ。」
「試してみたいこと?」
「うん。とりあえず行こ。」
ってことで魔法訓練場にやってきた。レドルがいるか確認のためにボクだけで入ったけど、今日はいないみたい。カイルを中に招き入れてさっそく試してみたいことをやってみようかな。
「まずは[ヘルファイア][ウィンドブレス]」
2つの魔法の同時発動、これ自体は問題ないみたいだね。あとはこれがどんな効果を引き起こすのか、だね。今回は1つの的に使ってみたんだけど・・・
「こ、これは・・・!」
「成功みたいだね。」
訓練場全体に炎が広がったね。これまでの魔法はあくまでも1つの的に対しての魔法をたくさん同時に発動してるって感じだったけど、これなら範囲魔法になるね。
「[ヘルファイア]と[ウィンドブレス]の2つを同時に発動させてみたんだよ。まさか燃えるものがないのにちゃんと燃え広がってくれるとは思ってなかったけどね。」
少ししたら炎はちゃんと消えてくれた。
「さすがですね。これだけのことをこうもあっさりやってのけるとは。」
「みんなが魔法の同時発動が出来なかったとしても2人同時にやれば問題なくできると思うよ。」
「確かにそうですね。戦術の1つとして押さえておきたいと思います。」
「そうだね。それで、今度はカイルにやってみてもらいたいことがあるんだけど・・・」
「私にですか?」
「うん。カイルってさスキルを使ってる時ってどんなイメージを持ってる?」
「イメージ、ですか。どちらかというと演算に近いでしょうか。転移の用途で使うことが多いからかもしれませんが。」
「転移以外で使う時は?」
「基本的には想像した事象がそのままスキルの効果として表れてくれるので、しいて言うのなら自分の世界をイメージしているでしょうか?」
「そこなんだよ。魔法もおんなじで自分の世界のイメージが大事なんだよ。」
「イメージですか。」
「多分だけどボクみたいに複数の敵に魔法を当てるっていうのはできないと思うよ。それでも無詠唱くらいならできるんじゃないかな?」
「無詠唱くらいって・・・」
「試してみよ。まずは[ウォーターボール]でね。[ウォーターボール]を使った時の水球を作るのと飛ばすのをそれぞれ強くイメージしてみて。」
「はい。」
「魔法名を唱えることでそのイメージをさらに強めて放つ!」
「[ウォーターボール]!」
ぼちゃん
水球はできたけど、飛ばずに落ちちゃったね。とりあえずは成功かな。
「失敗ですか・・・」
「いや、成功だね。」
「これがですか?」
「普通に詠唱無しで魔法を撃とうとしたらこうなるのが当然なんだよ。魔法っていうのは詠唱を器にしてその器に魔力を流し込んで完成するもの、だからその器がない状態だと水を出したり、炎を出したり位しかできないんだよ。」
「器、ですか?」
「そう。ってことで今度は器を作るんだけど、これが難しいんだよね。感覚頼りなところが大きいからね。」
「改めて一度見せていただいても?」
「いいよ。1回は説明しながらゆっくり、2回目はそれを最速で撃ってみるよ。」
「お願いします。」
「まず、魔力で作った器をイメージする。詠唱をするときは器に魔法の効果がついてるんだけど、自分で作るときはそうもいかないから魔法のイメージがもっと大事になるの。そして器が出来たら魔法のイメージを強く持って魔力を流し込んで、一気に放つ![ウォーターボール]!」
バシャ
的にキレイに命中したね。前よりもちょっとだけど精度上がったかな?
「次はこれを一気にやるよ。[ウォーターボール]!」
バシャ
今度はちょっと精度下がったかな?ゆっくりやるとやっぱ多少精度は上がるみたいだね。
「やっている工程の割に発動までの時間が短いですね。」
「魔法の名前を唱える工程に一括してまとめてるんだよ。感覚を掴んで慣れればみんなもできるようになると思うよ。」
「そうでしょうか?とりあえず一度試してみます。」
「まずはゆっくりイメージをしっかり持つといいよ。魔力は水のように流れを持つものだからそれを受け止められるものならどんなものでもいいから器のイメージをしっかり持って。」
「はい。」
カイルは集中してるみたいだし、邪魔しても悪いかな。
「[ウォーターボール]」




