第17話 知識
「ヒヨリ様、少しよろしいでしょうか?」
「カイル?どうしたの?」
夜、そろそろ訓練場にでも行こうかと思っていたタイミングでカイルが来た。何か用でもあるのかな?
「失礼いたします。明日に関して予定の変更がありましたのでフランの代理でお伝えに参りました。」
「何かあったの?」
「先ほど四天王全員で会議を行っていたのですが、ゲルがヒヨリ様のお力を見たいとのことで、明日、ゲルの受け持つ依頼に同行していただけないでしょうか?私も明日はスケジュールが1日空いていますので移動の補助として同行させていただきます。」
「いいけど、どうして急に?」
「ヒヨリ様はあまり自覚されていないようですが、ヒヨリ様の魔法の精度は素晴らしく高いものです。」
「そんなことないでしょ。フランとレイに比べたらまだまだだし。」
「それでは少し私の訓練に付き合っていただけますか?」
「いいけど・・・」
ってことで、カイルと一緒に魔法訓練場にやってきた。
「まずは私の魔法を見ていただきましょう。我が力の奔流に眠りし根源の水脈よ。我が声に応え、清流の水球を顕現せよ[ウォーターボール]!」
ん?手を抜いたのかな?あんまり水球も大きくないし、速度もあんまりな気が・・・
「これが一般の魔法使いの精度です。私はスキルによる空間の操作で戦闘を行いますので、魔法の鍛錬はあまり積んでいませんけどね。フランとレイは魔王軍、ひいては世界中でも最高クラスの魔法の使い手なのですよ。今のヒヨリ様の魔法の精度は人間の生涯を魔法に捧げたような老魔術師の使う魔法と同レベルの精度があります。」
「そうだったんだ・・・」
「何も知識がないことを責めているわけではありません。この世界で生まれ育ったわけではないですし、魔法のない世界から来られているのですから知識がないことは当然でしょう。しかし、フランもレイも伝えることを渋っていましたので私の口から伝えさせていただきます。」
「なんであの2人は渋ってたの?」
「正しい知識、固定的概念を教えることで成長が止まることを恐れていたのでしょう。しかし、本日のヒヨリ様を見て私はそうならないと確信したため、お伝えしたまでです。」
「そっか。ありがとね。」
「お礼など、とんでもございません。それよりも、この後、お時間ございますか?」
「大丈夫だけど、カイルは休まなくて大丈夫なの?」
「そういえばきちんとした自己紹介をしていませんでしたね。私は魔王軍四天王が1人情報部統括、アンデッドキングのカイルと申します。アンデッドですので食事や休息は必要ないのです。魔力が枯渇すれば疲れは感じますが、魔法を使うこともめったにありませんし。」
「アンデッドなんだ。なんかそんな感じしないね。」
「この姿は本来の姿ではなく人間の体を模して姿を変えていますので。本来の肉体は大きすぎることもあり、こちらのほうが都合がよく、それに動きやすいのですよ。」
「本来の姿が不便なことってあるんだ。」
「えぇ。ヒヨリ様の種族原子悪魔はその逆ですけどね。実態を持たないことで物理攻撃を無効化しながらも自身のエネルギーを最大効率で使用できる。ヒヨリ様の場合は実体を持ちつつもその特性を最大限使用できているようですが・・・」
「そうらしいね。フランも原子悪魔で実体を持っている例は聞いたことないって言ってたし。」
「クイーンの彼女が言うのなら本当に特別なのでしょう。着きましたよ。」
ちょっと前から急に歩き出してついてきてたんだけど、ここは剣術訓練場?なんでここに?
「どうして剣術訓練場に?」
「少し気になることがありまして。以前、レイに魔力による身体強化を教わったとか。」
「うん。そこのデカい剣を抜くことはできたけど・・・」
「では、その身体強化で模擬戦を行いましょう。ヒヨリ様はこちらの木刀をお使いください。」
「カイルは?」
「私は普段短剣での戦闘を行いますので、こちらの短剣を模した木刀を。」
2本手に取ったね。双剣ってわけだ。
「魔力で好きなように肉体を強化していただき、好きなように打ち込んできてください。形式は問いませんし、木刀ですので本気で来ていただきで構いません。」
最近ちょっと練習はしてみてたんだけど、1か所に集中させるとやっぱりアンバランスなんだよね。あくまでもこの技術は魔力を身体中に流して活性化してるって感じで魔力を消費してるにはしてるけど、どれだけ強化しても自然に回復する量のほうが大きいからできる限り最大の強化を体全体にいきわたらせるようなイメージで・・・
後は普段動くことのないスピードを制御できるかわからないけど、やってみよう!




