第10話 カイル
「これより緊急の四天王会議を開始します。」
「人のスケジュールを変更させてまで何のつもりですか?」
「本日の招集は正確には私ではなくヒヨリ様によるものです。」
「そうですか。それで、魔王様、どのようなご用件で?」
「前回みたいに要件を手短にして話すみたいなのは無理な相談だから早く抜けれるとは思わないでね。そもそも今回の件はカイルが一番関わりがあると思うから。」
「私にかかわる話、ですか。いろいろと抱えているのでどれのことか見当もつきませんが。」
「とりあえず今日の議題の本題から話しちゃおっかな。昨日この城で人間の国にメリオン側のあらゆる情報を流出させている人が見つかったんだよね。」
「スパイ、ですか。それが私と何の関係が?」
「それがね、カイルが受け持ってる情報収集部隊の部隊長レドルなんだよね。」
「レドルが?そんな素振りは見せていませんでしたが。」
「あくまでも今から共有する情報は確定した情報だけなんだけど、レドルはメリオンの情報を流し人間の国側を勝たせることで自分が新たなメリオンの統治者になろうとしてるみたい。」
「{契約者}を持つレドルなら格下の多い人間相手なら可能、というわけですか。」
「知ってったんだ。」
「一応は直属の支配者ですので。ヒヨリ様はご存じないかもしれませんが、メリオンに置いて階級は絶対の序列を生み出します。魔王様、四天王、部隊長クラスの幹部、そしてそれ以下がこまごまと続いていくような形です。私は自身で支配するものの力は把握しております。」
「すごいね。ボクには到底無理かな。話を戻すよ。レドル含めここにいる全員以外を含めてほとんど全員がボクを魔王だって認知し始めたと思う。でも、情報関連を扱う人たちにだけ、ボクは『魔王召喚に巻き込まれた異世界人』で『魔王の影武者として世間に公表する』ってことにする。」
「それが何の意味を持つと?」
「スパイをするなら情報系の幹部なり部隊員でしょ?メリオンの中でも一番情報を持ってるのってその人たちなんだから。その人たちが間違った情報を持っていればスパイがいた時に人間たちも間違った情報を得ることになるんだよ。」
「その間違った情報が何の役に立つのか、とお聞きしているのですが。」
「戦闘において間違った情報っていうのは何も知らないよりも怖いんだよ。」
「言いえて妙ですね。確かに情報を制することが戦の勝利につながる、これはよくある事象です。しかし、今回は相手の規模が違います。この世界には軍勢を一撃で屠る力などありはしないのですから、数の力がものをいうのもまた事実。」
「それについては私から説明するわ。」
「レイ?あなたからですか?」
「えぇ。そうよ。ヒヨリちゃんの訓練を見てたんだけどヒヨリちゃんの魔法って広範囲で複数人に当てれるみたいなのよね。」
「何!?この世界の法則を崩しているではないか!」
ここまで一言も発さずによくわからないような表情で聞いていたゲルが突然口を開いた。
「そうよ。それができる才能もしくはスキルを持っているってこと。それでも軍勢との戦いに情報戦が役に立たないと言えるかしら?」
「そうなると話は変わります。相手はせいぜい魔法や剣術が得意な魔族程度の認識をヒヨリ様に持つでしょう。そこにヒヨリ様の強力な魔法を打ち込むだけでも指揮系統の乱れ、戦力の大幅削減が望めます。」
「そうでしょ?だからあえて間違った情報をいくつか渡しておこうと思ってね。レドルと本物の魔王の接触はまた今度の機会にってことにしてあるわ。」
「えぇ。そしてレドルのスパイとしての顔にヒヨリ様が接触に成功しています。」
「うん。{契約者}がボクには効果なかったみたいだからみんなにも共有できるけど、アルファ、ベータと名乗る2人組が魔法訓練場に転移魔法で転移してきてたよ。そこで情報の交換とかをやってるみたい。」
「なるほど。深夜であれば確かに目もなければ魔法の痕跡があってもおかしくないというわけですか。」
「そうみたい。そこで情報のやり取りをしてるみたいだけど、これはただの勘なんだけど、多分相手は契約を履行する気はないかな。レドルを殺すとかして契約を無効化しようとするんじゃないかな?」
「そうでしょうね。そもそも仮に人間が勝ったとしてメリオンの土地を再び魔物の支配権にするわけがないでしょう。」
「そうだね。とりあえずボクと四天王だけが唯一本当の魔王と話せて、その情報を持ってるってことにしようと思うんだけどいいかな?でっち上げた情報は情報部隊の人たちに渡すことになるからカイルとはそこのすり合わせをちょっとしないといけないけど。」
「構いません。スケジュールさえ守らせていただければ。」
「そこは気に掛けるから。それじゃよろしくね」




