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番外475 海賊達の財宝は

 今後の方針については決まっただろうか。一先ずシリウス号をこちらに持ってきて、と。そんな風に考えていると、カティアが静かに立ち上がって深々とお辞儀した。


「お手伝いしてもらえるのは嬉しいわ。こうして知り合いになれた陸の人達が親切な人達ばかりで……。みんなで動いて良かったなって、改めて思っているところなの。ヘルフリートとのこともそうなのだけれど、お礼もきちんとしたいから、一度里に来て欲しいなと思っているのだけれど、どうかしら」


 みんなで動いて、か。ヘルフリート王子が最初に会った時も漁船を助けようとして怪我をしたという話だったし、ネレイド達があちこち動いている理由も、仲間と陸の民の弔いのためでもある。親切だというのなら、それは義理人情を大事にしているネレイド達の方だろう。


「親切というのならネレイドの皆さんの方こそ、と思いますよ。ヴェルドガル王国としてもネレイド族との友好関係は深めたいので、招待して頂けるというのは嬉しいですね」

「ええ。是非」


 俺の言葉に、カティアは嬉しそうににっこり笑って答える。


「よろしくね!」


 と、セラフィナが握手を求めるとカティアも嬉しそうに応じていた。

 これなら……船乗りの過去やネレイドとグロウフォニカ王国との関係等々に問題がなさそうならカティア達の許可を貰った上で、デメトリオ王にも話を通す、というのも視野に入れられる。

 デメトリオ王と話がついていればこっちとしても動きやすくなるし。まあ、そのへんは今後の調べ物の結果次第か。




 話も一段落したので、まずはシリウス号を港から公館側へ動かし、船の留守番をしている面々をカティアやソロン、公館で働く使用人達に紹介しようという話になった。


「僕達も一緒に行くよ。少し街中を見てから戻ってこよう」

「公館の方々に街の案内をしてもらうというのも良さそうですわね」


 と、アルバートとオフィーリアも一緒に動く。

 一瞬だけヘルフリート王子の方に視線を送っていたから、久しぶりの再会で二人きりの時間も作ってあげたいということだろう。


「では――私めもご一緒しても? 一度陸の民の街というのを見ておきたかったので」


 ソロンも気遣って俺達と一緒に来るらしい。


「あー、うん」

「えっと、その、いってらっしゃい」


 ヘルフリート王子とカティアはみんながそうして気遣ってくれた事が分かったのか、少し気恥ずかしそうに頬を赤らめていたが。それでも久しぶりに会えて嬉しそうというのは間違いない。

 というわけで、ヘルフリート王子とカティアを残し、みんなで公館の保有する馬車数台に乗り込み、街の様子を見ながら港へ向かう。


「カティアちゃん、良い子みたいで安心したわ」

「確かに、ヘルフリートとの性格は合いそうね」


 ステファニアの言葉に、ローズマリーが羽扇で口元を隠しながら言う。

 言葉には出さないがローズマリーもヘルフリート王子が騙されたり利用されたりしているようではなくて安心した、という部分があるのではないだろうか。


「お嬢様は心優しいお方ですからな。私めもヘルフリート殿が穏やかそうな御仁で安心しましたぞ」


 何やらソロンが目を閉じてうんうんと頷いていたりして。マルレーンがそれを見てにこにこしていたりする。


「二人に関しては大丈夫そうですが……海賊のくだりは気になりましたね」


 グレイスが少し眉根を寄せて言う。


「金銀財宝でも活動資金に打撃を与えているわけだから、追われる理由としては十分だとは思うけれど……そうすると、陸を捨ててまで隠そうとする理由としては弱いような気がする、かな」

「例えば……何かしら海賊にとっての切り札を奪って隠した、みたいな事もあるかも知れないわね」

「ん。報復から家族の事を守るために、海で遭難したついでに死亡を偽装した可能性も」


 俺の言葉にイルムヒルトが首を傾げシーラも言う。確かに。それらの可能性はある。海賊の報復を回避する手段としても、有効だろう。


「グロウフォニカ王国も当時は今より武力を頼みにしていたのでしょう? そこで何か強力な兵器や魔道具を手にしてしまうと、戦争になる……という危惧をした、なんてこともあるかも知れないわね」

「そうなると……当時のグロウフォニカ王国の、上層部の意向に詳しい方、或いはそういう意向を間接的に聞ける方による判断、ということになりそうですが」


 と、クラウディアとアシュレイ。つまり、ある程度確度の高い情報を持っている人物かその直属の部下あたり……騎士団のエリートクラス、ということになるだろうか? 当時の話であるから、今のグロウフォニカ王国やデメトリオ王の下でならやはり問題になりにくい情勢ではある、かな?


「そうした経緯だとするなら、その方には色々と共感できる部分があります」


 エレナが目を閉じて胸に手を当てていた。そうだな……。対応としてはエレナ達のそれに近い。


「当時の情勢で当てはまる部分があるかも調べたいところだね。目録からの絞り込みの参考にもなりそうだし」


 何にせよ、様々な可能性を排除せず動いていくとしよう。

 そんな話をしながら大通りを進んで図書館の場所を確認したり、街並みや施設を少し時間をかけて見て回りつつ、港へと向かうのであった。




 シリウス号の移動については港の兵士達にも話が既にいっていて、東の海岸付近の暗礁についてはお気を付けて、と敬礼されつつも改めて声をかけられてしまった。


 こちらも注意喚起に対してのお礼を言いつつシリウス号に乗り込み、そのまま公館へと移動する。


「おお。こちらの御仁も海の民ですか」


 と、ソロンはティールを見て目を丸くしていた。


「ティールはもっと遥かに南の、寒い海の出身だね。今まで種族自体知られていなかったから……マギアペンギンって命名する形になったけれど」

「ほうほう。それは興味深いことです」


 ティールが嬉しそうに声を上げてフリッパーを差し出すとソロンも表情というか、目の形を緩めて、しっかりと握手で応じる。


「テオドール殿に迷子のところを助けられたと。うむ。誠に海の民の盟友ですな」


 と、翻訳の魔道具を装備しているからかティールと楽しそうに意思疎通しているソロンであるが。


 そうして公館に到着したところで中庭にみんなで降りると、すぐに館の中からヘルフリート王子とカティア、それに使用人達もやってきた。

 というわけで動物組、魔法生物組をカティアとソロンや公館で働いている面々に紹介していく。


「おお。ステファニア殿下の使い魔ですな。お噂は聞いております」


 と、コルリスを紹介すると公館の使用人達も笑顔で応じていた。中庭の石畳にぺたんと座ったままで使用人達と爪の先で握手をするコルリスである。

 ヴェルドガル王国の関係者だから知っていても不思議はないが……冒険者の間で知られてきているからな。グロウフォニカ王国でも噂として広まっていると考えておくべきかも知れない。


「後で鉱石をあげるからね。貴方たちも、骨付き肉でいいかしら?」


 コルリスやホルンを撫でながら使用人が言うと、揃って座ったまま静かに尻尾を振るラヴィーネ、アルファ、ベリウスである。

 カティアも、初めまして、と挨拶をしつつ、ティールから始まり、エクレールやマクスウェル、アピラシア、アルクスを始めとした魔法生物達と握手をしていた。ティアーズやハイダー、シーカー達も頭を撫でられたりしている。


 うむ。動物組、魔法生物組との初顔合わせも問題無さそうで何よりだ。使用人達も割と馴染んでいるようだし、これなら公館を拠点に色々動いていけそうだな。


 まずは王城での歓待。それが終わったら図書館で調べ物ということになるだろうか。

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