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娘のためなら、熊殺しを半殺しにいたします  作者: 鶴見 日向子


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新婚旅行と公爵家の黒歴史

新婚のアレクシスとリリアーナの登場です

その頃、アレクシスとリリアーナは、結婚してからも互いに忙しい日々を送っていた。


「どこかへ新婚旅行に行ってきなさい。新婚なのに、お互いすれ違ってばかりじゃないの」


公爵夫人が、あきれたように言った。


「うーん、行き先が思い浮かばない……」


アレクが考え込む。


「どうせアレク様は、旅先でも本しか読まないような気がいたします。それなら、家にいた方がいいです」


リリアが言うと、


「自分でもそう思う」


アレクは頭をかいた。


「何のための読書なのです? 知識を得た上での実体験も大切です!

海外はどう? 王太子妃殿下のお国へ、視察を兼ねて行ってみるとか」


夫人が、ひらめいたように言った。


「王太子妃殿下には、『はめられた』からなあ……」


アレクがぼそりと言う。


「そのおかげで二人は結婚できたのだから、感謝するべきです!!」


公爵夫人の口調は熱い。


「ダハントが王族だった国ですよー。何だか嫌です」


リリアも小声で言った。


「今は監獄に入っているそうよ。何というか、本当に『貞操』に厳しい国なのね。

驚きだわ。

そういうところも実際に『視察』してきたら?」


「それ、旅行じゃなくなりますよね。仕事になってしまいます」


アレクは渋い顔をした。


彼としては、移動に時間を使うくらいなら、本を読んでいたいのだ。


「あれだけ読んで、まだ飽きないの?」


夫人があきれたように言う。


「アレク様の本代のせいで、公爵家の財政が逼迫しております」


執事が冗談めかして口を挟んだ。


「嘘を言うな! 私はちゃんと公爵家の財政を把握しているぞ!

亡き祖父上ならともかく、そんな冗談は通じない!」


アレクが大真面目に反論した。


「まあ、前侯爵様の時代に、屋敷にあった蔵書がかなりなくなったのは事実ですが……」


執事は肩をすくめながら、遠い目をした。


「結局、レオンに本を渡すという名目で、自分が娼館に入り浸っていただけだろう?

私が自分の小遣いで買った本まで、よく勝手に持っていかれた。

だから私は、自分の部屋でしか本を読まないようになったんだ。本をベッドに隠していた」


アレクが、何とも言えない顔になる。


「新婚旅行の話から、どうして亡き義父様の話になってしまうのです?」


そう言いながら、夫人の目も遠くなった。


「おじい様って、レオン様を助けていた、いい方だと思っていましたが……」


リリアの顔色が少々悪くなる。


「私が余計なことを言ってしまったせいです。申し訳ありません」


執事が頭を下げた。


「いや、私もついカッとなってしまった。

どうも、本の代金の話をされると亡き祖父を思い出すのだ。いい思い出がまったくない。

レオンが読んでいてくれたと聞いて、少し気持ちは楽になったが」


アレクが息を吐いた。


「今は、そういうことはなくなりました。アレク様の本代くらい、何でもありません。

蔵書も当時より増えております」


執事が言う。


「父上のおかげだ。祖父上は、いろいろと遊びが過ぎた……。

借金まみれだった当時の侯爵家を、よく立て直したよ」


アレクが感心したように言った。


「その頃、お祖母様はどうしていたのです?」


リリアが不思議そうに尋ねた。


一瞬、夫人とアレクは顔を見合わせた。


「私に祖母などおらぬ。二度とその話はするな!」


アレクが珍しく声を荒らげた。


リリアは驚いて目を見開く。


「およしなさい。リリアには関係のないことです」


夫人がアレクをたしなめた。


しかし、そういう夫人もまた、アレクに同調しているように見えた。


「主人とアレクシスは、あの方に似なくて本当によかったです」


夫人が、ほっとしたように言う。


「新婚旅行の話に戻りましょう。海の近くに公爵家の領地があります。

管理人もおりますし、快適に過ごせます。

そこなら、いかがでしょうか?」


執事が提案した。


「そうね。最近は私たちもいろいろあって、行っていなかったわ。

様子を見がてら、海の幸を堪能してくるといいわ。新鮮なお魚はおいしいのよ」


夫人の顔に笑顔が戻った。


だが、アレクの顔は険しい。


「あの別荘か……。

行くなら、ベッドなどの寝具は処分して、すべて新調するからな。

それでよければ、行ってもいい」


「ふふ、そうしてちょうだい。助かるわ」


夫人は笑った。


「そういう目的なら行きますよ。大掃除をしてきます」


アレクの顔にも笑顔が戻った。


リリアは執事の顔を見た。


執事は、苦笑していた。


「今の話は、忘れてしまってください。

リリア様には関係のないことですから」


執事は、リリアにそっとつぶやいた。


どうやら、実の家族に『思うところがある』のは、リリアだけではなかったらしい。


そうして公爵の許可を得た二人は、新婚旅行へ出かけることになった。


新婚旅行の話から、なぜかいろいろな過去がほじくり出されるという・・・

お読みいただきまして、ありがとうございます

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