序章
ダハントから始まります
「いつか、思い知らせてやる!!」
ダハントは、歩けるまでに回復すると、囚人用の馬車で母国へ送り返された。
「ダハントよ。シャーロットから、事件の詳細を記した報告書が届いている」
国王は、ろくに食事もとれず、すっかりやせたダハントに告げた。
「今回、そなたが手を出そうとしたのは、公爵家の令嬢だ。
そなたはこれまで、王族という立場を利用し、下級侍女を何度も襲ってきた。
幾度となく注意し、処分も検討した。
それでも、そなたの『反省したから、もうしない』という言葉を一度は信じた。
自国でしなくなったと思えば、今度は他国でやらかすとは。
あきれて物も言えぬ」
国王の目は冷たかった。
「しかも、公爵令嬢には婚約者がいた。
我が国の法では、婚約者には令嬢の貞操を守る権利が認められている。
あの場で斬り捨てられていたとしても、文句は言えなかった。
生きて帰ってこられただけ、ありがたく思え」
その場で、ダハントには、
『王族の身分剥奪』
『一生涯の監禁』
という処分が下された。
そして、その場からすぐに監禁場所へと移送された。
「なんで、公爵令嬢が通訳なんかしていたんだ?」
ダハントは、あの時、隣国に『国賓』として招待され、舞い上がっていた。
「通訳は平民だ。平民の通訳が国賓に逆らうわけがない」
そう思い込んでいた。
そして、立ち向かってきた、自分よりはるかに体格の劣る青年を完全に見くびっていた。
自国では、王族である自分に『蹴り』を入れる騎士や護衛などいなかった。
これまでは、体格に物を言わせて相手を殴り倒せば、何でも自分の思い通りになった。
他国でなら、なおさら大丈夫だと思っていた。
『国賓』と呼ばれ、気が大きくなっていたのだ。
てっきり相手の方が罰せられると思っていた。
ところが――
ただの通訳だと思っていた女は、公爵令嬢。
そして、自分を蹴り上げた青年は、その令嬢の婚約者だった。
二人には、何のお咎めもなかった。
さらに、ダハントは母国へ帰国させられたため、相手国ではなく、自国の法律によって裁かれることになった。
本来なら、婚約者のいる貴族令嬢に手を出そうとしたのだ。
処刑されてもおかしくはなかった。
しかし、すでに重傷を負っていたことと、王族であったことが考慮され、処分は減刑された。
それでも――
「あいつらさえいなければ……」
「俺がこんな目に遭うはずがなかった」
「絶対に許さない」
ダハントが、自らの行いを反省することはなかった。
彼の頭の中は、リリアとアレクへの復讐心でいっぱいだった。
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次回からは、アレクシスとリリアーナの登場です




