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ガダルカナル〜密林に消えていく星〜  作者: kazu
第四章「激動篇」
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第41話「捕虜と敵」

9月24日 ガダルカナル島 マタニカウ川付近



小嶋「ん…よいしょ…!」


隼斗「えい…!」


そう声を出して小嶋と隼斗は92式重機関銃を設置する。



小嶋「ようやく、完成したな」


隼斗「はい、そうですね」


そうして、陣地構築の任はついに達成されマタニカウ川防衛陣地が完成した。


しかしこれはあくまでもおびき寄せるか、第一次防衛線が破られるかしないとその威力を発揮できない立ち位置にあった。


水際線に陣地を構築すれば敵の擲弾筒などで機関銃が破壊されたり、はたまた森を切り開いて戦車なども持ち込んでくる可能性があるからだ。



出水中尉「おぉ!ようやく完成しましたか!」


出水中尉はそう嬉しがる。

2つ構築班に中隊が加わるだけでもかなり作業はスラスラ進み、ついに完成したからだ。



小嶋「本当にようやくですよ…」


そうして小嶋たちは陣地構築の任を解かれ、ついに本格的に防衛隊に配属され積極的に戦闘に参加することになった。


そうして、そのことを飯島少佐に伝えようと小嶋は一人で司令部テントへと向かっていた。


スタスタという足音以外に少し、どこかの木からガサガサという変な物音が聞こえる。



小嶋「な、なんだ…?」


そうして辺りを見渡すが、その瞬間に音は止む。


小嶋の頭には、スパイや偵察兵などの不安が上がったため三八式歩兵銃のボルトの安全装置を解除して弾を込め銃剣を装着する。


小嶋は一人で道を外れて密林の奥へと入っていった。



熱い…




腹が減った…




そんな思考が小嶋の集中力を少しずつ削っていく。

しかし彼らの精神面の最終防衛線はその兵士としての集中力である。


それが無くなれば彼らはもう軍人や"常人"ではいられなくなってしまう。


だからこそ小嶋はそのような要らない思考を心のなかで抑え込む。




スタスタという足音と、謎のガサガサ音。


小嶋の耳にはもはや自然の虫の鳴き声や葉の揺れる音は聞こえていなかった。



小嶋「…」


小嶋は一度立ち止まって音にのみ集中力を使って聞き逃さないようにする。


そのとき、ガサガサ音はたしかに目の前の木の裏側で聞こえていた。



小嶋「っ…」


小嶋は唾を飲んだ。

もし敵兵が銃を構えて待っていれば捕虜にするかなど気にしていられないからだ。


だが、行くしかないのだ。



小嶋「出てこい!」


そうして、小嶋は木の裏側を見た。


そこには、たしかに米軍パイロットがいた。

小嶋の思考には考える暇もなかった。



殺す。



ただその一つの体への命令のみが、心臓の鼓動以上に響きわたる。


ズバン!という銃声が鳴り響き、米軍パイロットの足は撃ち抜かれる。



米軍パイロット「oh!...Please… I have a family… Please…(お願いです…私には家族がいるんだ…頼む…)」


米軍パイロットはそう言って小嶋に助けてと懇願する。


しかし小嶋からすれば何を言っているかすらわからないのだ。



恨みの言葉か、助けを求めているのか、それが何なのかすらわからない。


それなら、殺す以外選択肢はなかったはずだ。




外したか。




小嶋の心のなかにはただその一つの言葉があった。

殺すつもりだったのに照準が狂って足を撃ってしまったため、外してしまっていた。


小嶋の人としての心が削りきれてしまっている今、そんな希望的な言葉を聞くことはできなかった。


想像すらできないのだ。



だが、次の弾を撃とうとコッキングすると後ろから誰かに銃の銃口を下げられる。


それは、その銃声に気づいてやってきた出水中尉だった。



出水中尉「この人は助けてと言っているんです。無武装の人に発砲するのは感心しませんよ」


出水中尉はそう言って、米軍パイロットに話しかける。



出水中尉「ok」


ただそう一言だけ述べて出水中尉は米軍パイロットを背負って陣地へと戻っていく。



しかし、小嶋はそれが許せなかった。


純粋な頃の小嶋だったら助けようとしていたのかもしれない。


だが、今は違うのだ。



小嶋はその下げられた銃口を下げてきた相手へと向ける。


息を止めて、一撃で二人とも仕留められるように頭を狙う。


それは1ミリの誤差も許されない。



いざ撃つ。



そうしようとした時、新藤にそれを見つかりまたもや銃口を下げられる。



新藤「上官を撃てば、軍法会議で厳罰ですよ」


そう完全に殺意に包まれてしまっていた小嶋に向かって言う。



小嶋「捕虜なんて、結局無いと同じなんだよ。わかるか?新藤」


新藤「え…?」


知識が豊富な新藤でもその小嶋の発言にはとても脳の整理が追いつかなかった。



小嶋「あいつらは捕虜になるんじゃない。ただ処刑されに行くだけだ。俺はこの軍に入ってから捕虜を見たことがないが、今よくわかったんだよ。」


新藤「なぜそのようなことがわかるんですか!」


小嶋の言葉に新藤は強く反論する。



新藤「捕虜はしっかり国際法によって守られなければならない者です!それを殺すなんてありえません!」


新藤はそう"国際法"を出す。


しかし、小嶋はそれを笑う。



小嶋「ハハッ、なぜ破ってる側がそんなこと気にしないといけないんだ。てか、あいつは捕虜じゃねぇしな。」


新藤「は…?いや、は…?」


新藤は反論する余地すらなくなった。


その破ってる側という言葉がどうしても新藤の心に引掛ってしまうからだ。




小嶋「あいつはただの味方を殺した敵だよ。好古を殺した奴らと同じだ…それに、捕虜を獲るなんて、そうとうお人好しの奴だけさ。じゃあな…」


そうして小嶋は立ち去った。


新藤はただ一人、新たに人間性が崩壊してしまった人間を見ながら呆然と立ち尽くすしかなかった。




戦争はすべてを壊す。




第41話「捕虜と敵」

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