第40話「朝鮮人の設営人」
今回少し朝鮮人という表現やその差別やいじめなどを取り上げております。この小説は反戦小説ではないですが一部の人は嫌ってしまうような内容かもしれないのでそこはご了承していただいた上でお読みしていただけると幸いです。
それでは、どうぞ。
9月23日 ガダルカナル島 マタニカウ川
あのあと僕たち第5分隊は第3中隊を外れてマタニカウ川防衛隊に配属された。
全ては飯島少佐の決定だ。
小嶋「出水中尉!」
出水中尉「はい、どうしましたか?」
小嶋はマタニカウ川付近の陣地の構築を指揮していた出水中尉を呼びとめる。
そうしてさっきの結論を出水中尉に伝える。
小嶋「我ら第5分隊は中尾大尉の第3中隊の任を外し、あなたのマタニカウ川防衛隊に配属されることになりました。これからよろしくお願いします。」
そうして小嶋は伝え終わったあと、敬礼した。
分隊員たちもそれに気づいて慌てて敬礼していた。
出水中尉「わかりました。それではさっそく向こう側の機関銃陣地の構築を手伝ってきてください。同じ海軍の設営隊が先にいろいろ準備や組み立てはしてくれています。」
そうして命令をもらった小嶋たちはそうして陣地の奥側へと歩いていく。
そうしてたどり着くと、なにやら少し騒がしい状況になっていた。
小嶋「なんだ?あのざわざわしてるところ。」
隼斗「とにかく行ってみましょう。どうやら設営隊がなにかされてるようですし。」
そして2人は走っていった。
草薙「お、おい!置いていくんじゃねぇぞ!」
そう言って草薙も急いで走りついていく。
その光景をほかの分隊員たちは呆然と見つめることしかでしなかった。
新藤「まったく…こんなところで体力を使うなんて馬鹿ですねぇ…」
そうしてそのざわざわしている現場にたどり着くと、設営隊の軍服を着た2人が怒鳴り散らされていた。
小嶋「おい、なにをしているんだ。」
そう小嶋が呼びかけるとその階級章を見た兵士たちは少し驚く。
しかしすぐに開き直ったのかそこにいた陸軍の一等兵がなにをしていたのか説明してくる。
陸軍兵1「なに?そんなのこいつが"朝鮮人"だから俺たちの日本人としての"指導"をしてあげてるんすよ。新参者の上等兵曹さんにはわからないかもしれないっすかもねぇ。」
小嶋「あぁ、よくわからないな。」
小嶋はそう陸軍兵の意味不明な説明に呆れながらもそう返事する。
その態度が気に食わなかったのか陸軍兵はさらに話続ける。
陸軍兵1「てめぇ…もう一度言うがこいつは…"朝鮮人"なんだぞ…?」
そう少し怒りという感情のこもった声で小嶋に話す。
小嶋「だから、その朝鮮人だからなんなんだって俺は聞いているんだが。」
小嶋はもう一度その陸軍兵に問いかける。
小嶋にとってさっきの"朝鮮人"だからという答えはあまりにも引っかかっているからだ。
陸軍兵1「まだわかんないのか!こいつは朝鮮人で人権すら無いやつらなんだよ!あーあーなんて可哀想な奴らだな!」
そう怒鳴り散らし、陸軍兵はその朝鮮人の設営人を蹴り倒す。
朝鮮人1「うぅ…」
その瞬間、小嶋の頭には"血"が昇り始めた。
小嶋「ここにいる陸軍のやつらはみんなそんな考えなのか?」
陸軍兵2「俺だってこんな満州や朝鮮の畑から取れそうな人間ども必要とは思わねぇなぁ。栄光ある日本人だけで十分だ!!」
そう現状を分かってもいなさそうな若者の陸軍兵は朝鮮人たちに怒鳴り散らす。
朝鮮人たちはひたすらに怯えている。
どうやらここにいる者たちはみんなそのような腐りきっている考え方らしい。
朝鮮人だから…なんだってんだ…
小嶋「朝鮮人だから…なんだよ…」
陸軍兵1「あー?なんつったか聞こえねぇなぁ!」
陸軍兵はもはや階級章すら見ずに古参兵の肩書を使って小嶋にすら手を出そうとした。
しかし、小嶋はあまりしたくはない階級章にものを任せた行動を取ることにした。
それは、たった一つ。
小嶋「朝鮮人だからなんだってんだー!!」
ドガッとその瞬間、ついに小嶋は手を出した。
それはもちろん、階級が高くなければできない行動であった。
しかし、今の小嶋にそれは関係ない。
草薙「あぁ、ついに手を出しやがったか分隊長。」
あの草薙ですら手を出す暇がなかったのだ。
それほど小嶋は怒りに満ちていたのだろう。
隼斗「小嶋さんは、まだ人間性を保てている人なのか…階級が高い人なんて人間性捨てている人たちだと感じていたけど…」
隼斗の印象ではそうだった。
しかしそれも一種の事実ではある。
しかしその人間性を捨てるということは士官などだけではなくそこらへんの一兵卒でもすることだ。
しかし、"彼ら"は捨てなかった。
陸軍兵1「な、貴様ぁ…!」
陸軍兵2「手、手をだしやがった…」
陸軍兵の2人以外にもほとんどのその場にいた陸軍兵たちが後退りする。
そうして地面に倒れていた陸軍兵の一人に小嶋は近づく。
そうして胸ぐらを掴んで言う。
小嶋「これはな、朝鮮人たちにした不当な暴言暴力の分だ!!」
そうして、最大の威力の殴りをその陸軍兵の頬にお見舞いする。
そのドガァッという生々しく強い力のこもった打撃音は森の中に響いた。
陸軍兵1「す、すまない…俺たちが悪かった…許してくれ…」
そうして頬が膨らんだ陸軍兵はそう言って許しを小嶋に乞う。
小嶋の心のなかにはまだ怒りが残っていたがこれ以上傷つければ出水中尉の部下を殺してしまうためそれはしなかった。
そうして、小嶋は立ち上がって言う。
小嶋「差別と区別を間違えるな…人種が違うからっていじめるな…!」
そう怒りのこもった声を出して話し、陸軍兵たちを解散させた。
そうして、小嶋は体の中に不思議と入っていた力を解き放ちその場にひざまずょく。
小嶋「ふぅ…疲れた…」
そうして戻ろうかと思って分隊員たちのところに戻ろうとすると、服をつかまれる。
それは、さっき罵倒され続けていた朝鮮人たちだった。
中上「私は、中上…朝鮮名は李 智恩と申します。」
石伊「私は、石伊…朝鮮名は朴 民宇です…」
2人はいきなり自己紹介をしてくるもので慌てて小嶋も名乗る。
小嶋「俺は、小嶋 久人ってんだ。階級は上等兵曹。よろしくな。」
小嶋の人助けは、こうして幕を閉じた。
第40話「朝鮮人の設営人」




