第39話「第2大隊への配属」
9月23日 ガダルカナル島 マタニカウ川付近
出水中尉は草むらの中に入っていき、僕たちを歓迎し司令部に案内してくれると言った。
そうして今彼についていっている。
小嶋「これは一体どこへ行っているんだ…」
隼斗「まぁ…ついていけばきっと彼らの司令部にたどり着けますよ。」
そう隼斗は小嶋の心配を払拭し、黙って出水中尉の背中についていった。
熱い密林の中…
木々に囲まれた景色…
高い木々の間の葉の隙間から出てくる太陽光…
小嶋「なんか、懐かしく感じるな。」
隼斗「やはりあなたたちのような"歴戦の兵士"はこのような景色が懐かしく思えるのですか。私はあまり見慣れない景色です。」
隼斗はそう小嶋のことを"歴戦の兵士"と言った。
それは褒め言葉なのか一種の皮肉なのかはわからないが今は前者として受けっとっておくことにした。
小嶋「あぁ、なにもかもが懐かしいよ。」
草薙「変な上等兵曹だな…」
草薙はそう小言を吐きながらもついていく。
すると、少し木々が切開かれた場所が見えてくる。
出水中尉「ここが、我々の陣地です。」
そうして切開かれた場所に着くと、さっきまで全く見えなかった偽装を軍服やヘルメットのあちこちに施していた兵士たちが働いていた。
偽装は動かなければおそらくとてつもない至近距離でも人間とは気づきにくいだろう。
今回は運よく彼らが動いていたため目視することができていた。
隼斗「す、すごい…さっきまでなにもないと思っていたのに人がまさかいたなんて…偽装ってすごいんだなぁ…」
隼斗はその偽装能力の高さと偽装というものの存在価値を改めて見直した。
新藤「当たり前ですよ。そもそもここのような東南アジア戦線の島々は自然がものすごいですから偽装というのをここで活用できればまさに誰もあなたや私をみることはできません。」
新藤は偽装というものの真髄を隼斗に語った。
その知識能力に隼斗は深く感心した。
そこに出水中尉が割って入ってくる。
出水中尉「知識語りもとても良いことですが、今はまずは司令部に行って分隊長とともに報告してきてください。」
出水中尉の呼びかけどおりに従い、隼斗たちは小嶋とともに出水の案内に従って司令部へと行った。
そこには一つテントがあり、そこから中尾大尉が出てくる。
中尾大尉「おぉ、小嶋も呼ばれていたのか。この奥にここの残存部隊長の"飯島郷太郎"少佐がいる。一応大隊長であるから草薙の口調には気をつけさせろよ。」
そう小嶋に忠告したあと中尾大尉は陣地の方へと戻っていった。
小嶋はその忠告通りに草薙に注意した。
小嶋「頼むから、大隊長の前くらい口調は気をつけてくれよな。ケンカ腰だったら上官反抗罪にもなりかねんぞ。」
草薙「わかっ…いや、わかりました…」
そう言って草薙をその上官反抗罪の言葉で納得させた小嶋は、テントの入り口から中に入る。
小嶋「第3中隊第1小隊第5分隊長の小嶋上等兵曹であります。」
飯島少佐「よし、入れ。」
そうして、小嶋はついに大隊長という圧倒的に上な立場の人間と初めて出会う。
その人は椅子に座っており、とても強面な中年の人物でさすが司令官と言ったところかとてつもない覇気をまとっているようにも見えた。
小嶋「今回より、第2大隊に配属されることになりました。そこで新しい任務を授かりに来ました。」
小嶋はそう新しく任務を授かりたいという旨を伝え、返答を待つ。
するとすぐに飯島少佐は答えを出す。
飯島少佐「それならマタニカウ川付近の防衛隊について欲しい。彼らはかなり奮闘してくれているがそれでもまだ人手が足りていないのだ。」
飯島少佐の言うとおりマタニカウ川付近でも近々小規模な戦闘が起き始めており少しずつ犠牲者が増えていっている中での増援だった。
そうともなれば防衛隊に編入させるのも無理はない。
もちろん返答は一つ。
小嶋「了解しました。我が第5分隊はマタニカウ川防衛隊に編入し、その任を全うします。」
そう言うと、飯島少佐は椅子から立ち上がる。
飯島少佐「今は君のような若くて優秀な人物が一人でも日本に必要なのだ。しっかり頼むぞ。」
小嶋「はい!」
その飯島少佐の言葉に小嶋は気合のこもった返事を返す。
飯島少佐「よし、下がっていいぞ。」
そうして、テントから小嶋たちは出た。
小嶋「よし、とりあえず我々はこれからは中尾大尉ではなく出水中尉の指揮下に入る。いいな?」
分隊員たち「はい!」
そうして、小嶋たちの新たなる旅は始まった。
もう昔のことは、忘れなければならないのかもしれなかった。
だが、そうするしかないのだ。
できなければ"死"あるのみだ。
第39話「第2大隊への配属」




