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ガダルカナル〜密林に消えていく星〜  作者: kazu
第三章「落日篇」
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第38話「マタニカウ川渡河」

9月23日 ガダルカナル島 マタニカウ川


ザーザーと川が流れる音が聞こえ、森を抜けた先に見えてきたのは…


小嶋「ようやくか…」


中尾大尉「あぁ、ようやく着いたぞ。」

彼らの目の前に現れたのは一つの川だった。

地図を確認してみてもそれはあきらにマタニカウ川であった。


2日間の長い行軍がついに彼らを解放したのだ。



隼斗「ふぅ、疲れたなぁ…」


草薙「俺はまったく疲れてねぇからな、!」


相変わらず草薙はその性格上強がるが、額や頬には大量の汗が流れている。

それは軍服の襟にシワになるほどだ。



隼斗「本当かねぇ…」


そうして隼斗は少し苦笑いしながら言った。


その頃中尾大尉は生き残りの工兵たちにマタニカウ川を渡って残存部隊と合流するために橋を作るように命令した。


このような仕事は工兵や数少ない設営隊しかできないことなため彼らは重宝されていた。



中尾大尉「落ち着いて作れよー。ここにはまだ米軍は来れないはずだ。」


そう落ち着いて正確にゆっくり作るように中尾大尉は言う。

ゆっくりと言われずとも彼らの今の体力を見ればどちらにせよ遅くなってしまうのは見え見えであった。



工兵1「ふぅ、川に入るのは久しぶりだなぁ。」


工兵2「あぁ、久しぶりだがこの仕事が終われば上がらないといけないからな。しっかりこの涼しさを味わっとかないとな!」


工兵たちはそうしてお互いに士気を高め合い、なんとか橋を完成させようと頑張っていた。


そうして長きの暑さとの戦いの末、ついに工兵たちは橋を完成させることができた。



工兵部隊長「橋、完成しました。」


中尾大尉「おぉ!よくやってくれたな!よし、全員で素早く渡るぞ!」


そうしてぞろぞろと兵士たちは橋を渡っていく。

小嶋も背嚢を背負って渡りながら隼斗と会話する。



小嶋「とにかく、米軍と会わなかったのは不幸中の幸いだったな…」


隼斗「本当ですよ…迫撃砲部隊がやられれば平地での戦闘は終わりです、彼らを生かすことができたのは今後の戦略上かなりいいことです。」


隼斗はそう迫撃砲部隊の有用性を語っていた。

しかし、後ろの新藤がそこに割って入ってくる。



新藤「はたして…本当にそうですか?」 


隼斗「え?」


そんな言葉に頭が真っ白になってしまった隼斗に新藤はその自慢の知識で語る。



新藤「わかりますか?現在はもうムカデ高地などの丘への突撃ではなく密林や川を挟んでの一騎打ちです。そしてここらへんは木が高すぎて迫撃砲など撃てたもんじゃありませんよ。」


たしかに、迫撃砲は周りに障害物があるとなかなか命中精度も下がるし近くの障害物に当たれば爆発して自分たちごと爆散する可能性がある。


そのことを危惧して新藤は言っていたのだ。



新藤「まぁ、とりあえず他部隊との合流が不可欠ですよ。とりあえず行きましょうよ。」


そうして隼斗の背中を押す。


隼斗「とりあえず…いきますか…?」


そう小嶋と目を合わしながら隼斗はそう言った。

もちろんそれに小嶋は同意して橋を渡り切る。




しかし、一つ問題点があった。




新藤「なかなか、静かですね…妙だ…」


小嶋「たしかにな…」


2人はかなりこの静かすぎる状況を警戒していた。

小嶋は過去の偵察隊のときからのトラウマも相まって新藤以上に警戒していた。



そうして、小嶋はなにかの気配を感じる。




後ろの草むらから、ライフルの銃口が出てくる。

それは、小嶋を狙っていた。




「いつでも後ろには神経研ぎ澄まして警戒してるんだぜ。」





その瞬間、そのライフルの銃口を握って方向を変える。


ライフルを向けていた兵士は慌てて発砲するが、それも外れて小嶋はその草むらの中からその兵士を引きずり出した。



小嶋「うぉぉぉぉぉぉ!!」


そうして胸ぐらをつかんでその兵士を背負投し、地面に叩き伏せた。


急いで銃剣をひきぬいて殺そうとしたが、その兵士をよく見ると日本陸軍の軍服を来ていた。



中尾大尉「待て!それは味方だ!」


そう中尾大尉に止められると、小嶋はハッとし落ち着きを取り戻した。



そうすると、その草むらの中から一人の将校らしき人物が出てくる。



?「なかなか良い背負投だったな。感服したよ。」


そうして出てきた将校はいきなり小嶋の背負投を評価した。

その怪しい言動に小嶋は問う。



小嶋「あなたは、誰だ。」


出水 義昭中尉「私は、ここのマタニカウ川の防衛の任を授かっている出水義昭というものだ。階級は士官の中尉でこれでも小隊長だ。」


そう言われてよく見てみるとたしかに日本軍の階級章だし、軍服も来ている。

しかし、士官にしては若い方だったので少し小嶋は驚いた。



小嶋「あなた、ごいくつですか…?」


出水中尉「私はこれでも23です。」


小嶋は19歳でこのガダルカナル島に来ているがそれでもたった4歳しか変わらない年齢の人間が中尉をしていると考えるとすごいものだ。



出水中尉「少し話を戻しますが、この奥側に我らの陣地や司令部があります。ついてきてください。」


そうして出水中尉はまた草むらのなかに入っていった。


それに続いて皆もついていく。




ここに、マタニカウ川への旅は終わった。




第38話「マタニカウ川渡河」


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