第34話「米軍接近シツツアリ」
9月20日 ガダルカナル島 ムカデ高地より南7km
僕らは新しい陣地と陸王を手に入れてから1日が経った。
隼斗「行ってきます。」
そう言って隼斗は陸王に乗った。
陸王は偵察用として利用されることになりまずは丘の周りを探索するとこになった。
昨日は雨が振っており陸王で出るのは少し危険だったため今日出ることになったのだ。
陸王はブルンブルンとエンジン音を鳴らし、出発していった。
肌身に感じる涼しい風。
バイクの爽快な走り。
太陽に照らされ、陸王のボディーから反射する太陽光。
隼斗「なんて最高な走り日和だ…こんな最高な気分は本土でもなかなか味わえないぞ…!」
そう一人で興奮する。
隼斗の独り言のように本土でもこのような最高の条件はなかなかないからだ。
そんなことを思いながらも少しずつ隼斗は陸王とともに陣地のある丘の周りを捜索していく。
狭い道ながらも操縦経験のある彼にはどうってことはなかった。
同時 第二、三中隊陣地
中尾大尉「あいつ、大丈夫ですかね…」
岩吉大尉「あぁ…きっと大丈夫だろう。我々はただ彼を信じるのみだ。隊長ならば部下を信頼しなければならない。いいな?」
そう中尾大尉より先輩の岩吉大尉に言われる。
その言葉に中尾大尉は心を動かされた。
中尾大尉「は、はい!!」
しかし、中尾大尉にはもう一つ思ったことがあった。
なんだかそのような「信頼」という話は過去にとある人物に言われたことがあったような気がしていた。
「俺たちは彼らの上官だ。あいつらは弟のような存在だからな!信頼されるためには俺たちが信頼しないとな!ハハッ!」
佐原…なぜお前が死ななければ…!
その言葉を彼に投げかけたのはかつての中尾の同期、そしてもともと小嶋もいた部隊の隊長でもあった佐原大尉であった。
中尾大尉「…」
好古上等兵「大丈夫ですか?」
そう暗い顔をしていた中尾大尉に好古は声をかける。
中尾大尉「あ、いやなんでもないさ…」
中尾大尉は帽子の唾を自分の目を隠すように下げた。
しかしその行動で感情を察したのか好古は話す。
好古「戦争なので、仕方ないですよ…私だってもともと同期を失った身ですから…だからこそ、我々のような生き残りにはすることがあります。」
そう好古は覚悟を決めた顔で言う。
好古「それは、命ある限り彼らのために戦うことです!中尾大尉どの!ここで弱気になっても無駄です!」
そう中尾大尉を奮い立たせるように言う。
中尾大尉もその言葉の中にこもっている勇気と覚悟を受け取った。
そうして中尾大尉はきれいに広がる青空のなかに1つ輝く太陽を見ながら言う。
中尾大尉「あぁ…!まだ終わってないぞ、俺は!」
中尾大尉は、ふたたび立ち上がった。
同時 陣地の丘の周り 隼斗一等兵
隼斗一等兵は陸王を一度丘の上で止め、周りをよく中尾大尉に借りた双眼鏡で見渡す。
特に何も見えないと思っていた隼斗にとって意外なものが目に入る。
隼斗「あれは…人…か?」
そこには一人用の狭い塹壕のなかで一人手と顔を出して倒れている日本陸軍の軍服を来た兵士がいた。
それを見つけた隼斗は急いで陸王を走らせる。
ブゥゥゥンとエンジンを鳴り響かせ、駆け抜ける。
そうしてその塹壕の近くに行くとすぐに陸王から降りて隼斗は駆け寄る。
隼斗「おい!大丈夫か!いま軍医のところに連れて行ってやるからな!」
そうして隼斗はその倒れていた日本兵を担ぎ、陸王の副座席に乗せる。
隼斗「よし、急いで戻るか…」
そう思っていたが一応確認のために隼斗はもう一度双眼鏡を使ってふたたび丘の上から見渡す。
しかしそこには見慣れないものが見えていた。
日本軍の軍服ではないものを着た兵士が大勢で密林の中から出てきている。
それは明らかに、「米軍」だった。
隼斗「まずい…!急いで戻らないと!」
そうして陸王のエンジンをすぐにかけたがそのおとで米軍に気付かれ射撃される。
ズダンッ!ズダンッ!と米軍のM1ガーランドやスプリングフィールドなどのライフルの銃声が鳴り響き陸王のすぐ近くを銃弾が通過する。
しかし運よく隼斗の乗る陸王は脱出することに成功し、陣地へと帰還した。
陣地のみんなはその慌てようと隣に乗っている兵士のことでざわざわし始めていた。
第二、三中隊陣地
隼斗「べ、米軍がこの丘の先に接近してきています!」
そう隼斗が伝えると、皆は覚悟の決まった顔で言う。
中尾大尉「ようやく来たか…今度こそ叩き潰してやる…みな!俺の話を聞いてくれ!」
中尾大尉がそう呼びかけると、そこにいた陣地の隊員の皆が振り向く。
そうして、訓示が始まる。
中尾大尉「俺たちは、常に負け続けだった。我々の仲間たちは傷つき、死に絶え生き地獄すら味わってきた!しかし、ここで勝てば我々は優勢に立つことができる!いいな!絶対に米軍にこの丘を突破させるなぁ!!」
その熱い訓示には誰もが感激し、返事する。
一同「おぉー!!!!」
そうして…戦いの準備は始まった。
小嶋「今まで死んでいったやつらの仇…絶対取ってやる…中村、そして世話になったみんな…見てろよ…!」
そう小嶋は目に炎を灯したかのように、覚悟を決めたかのように言った。
ここに、対米軍反抗戦が始まった。
第34話「米軍接近シツツアリ」




