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ガダルカナル〜密林に消えていく星〜  作者: kazu
第三章「落日篇」
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第32話「死にゆく若者たち」

9月18日 ガダルカナル島ムカデ高地付近 残存部隊


僕らはあの空の激闘を見送ったあと、また進軍を再開し果てしない旅を続けていた。


小嶋は兵曹になったこともあり緊張感が高まっていっていた。


部下を何人も亡くした今自分にできる最善の策はと今か今かと思いつくときを待ちわびている。


小嶋「はぁ、雨か…」

そのとき雨が降り始めた。

現在は行軍を休憩していたときなためあまりよろしい状況ではないが軽く塹壕を掘っていたおかげでなんとか休むことはできていた。


中尾大尉「よかったな、軽く塹壕掘りしといて。」


小嶋「本当ですよ…ていうか俺ずっとあなたについてますけど私の部隊はどこですか?」

そう、小嶋はまだ部下と顔を合わせていなかった。

その疑問に中尾大尉は答える。


中尾大尉「君の部隊はあっちにいるよ。」

そう言って塹壕の左奥を指す。

小嶋は少しかがみながら進む。


そうしてつくとすぐに質問する。

小嶋「第5分隊はここか?」

そう言ってそこにいる一等兵や上等兵たちに聞く。


好古「あぁ、ここですよ。私は第5分隊の隊員の好古(よしふる)といいます。階級は上等兵です。」

そう小嶋は自己紹介をされ、好古と握手する。

他の者たちからも自己紹介される。


隼斗「私は隼斗(はやと)といいます。階級はまだ一等兵です。」

それ以外にもたくさんの兵士たちがおり、今までに感じたことのない緊張感が走った。


小嶋「ていうか、遅れてすまんな。俺は今から第5分隊の分隊長をする小嶋というものだ。よろしく。」

そうして小嶋は自己紹介を済ませるとその場に座りこむ。


小嶋「君たちは歴戦の者たちと聞いているが本当なのか?」

そう小嶋が聞くと、皆出身を言い出す。

すると陸軍兵のほうは日中戦線におり、海軍兵たちはもともとここの警備隊でイル川渡河作戦を生き残った者たちもいた。



中々期待できそうだな…!



そう喜んでいると、斥候が来る。


斥候兵「こ、この地点に米軍戦車部隊と歩兵部隊が来ています!!早く戦闘準備を!」

斥候兵がそう伝えると一気に周りは騒がしくなる。

機関銃兵たちは92式重機関銃を配置し、歩兵たちは三八式歩兵銃を構えて待機する。


しかし僕らの分隊には機関銃は96式軽機関銃しかなかった。


小嶋「とりあえず、戦闘配置に移れ!我々はここから迎撃するぞ!」

そうして小嶋も塹壕のなかで三八式歩兵銃を構える。


ドクンドクンと雨の音とともに体の中で心臓の鼓動が響く。


たしかに、戦車の履帯が地面を震わせる音も聞こえる。



畜生…ここでやられるわけには…



しかし、そう考える暇はない。

まだ日は出ているが雨のせいで少し視界は悪い。



小嶋「来るなら…こい…」

そう呟き、覚悟を決める。


その瞬間、周りは静けさに包まれた。

さっきまで鳴っていた履帯の音も周りの話し声も全て消える。



陸軍兵「な、なんだ…?」

そう言って陸軍兵が少し顔を出した瞬間、銃声が鳴り響く。

その兵士は頭を撃ち抜かれ、即死した。


周りは一気に騒がしくなり、戦闘が始まる。


米軍の戦車もついに姿を現し、ガダルカナル島は道幅が狭いはずだったが木をなぎ倒しながら進んできており、自分たちは平野に出ておりこれから森林にはいるはずだったため不利であった。


小嶋「くそ!撃て!」

そうして一気に銃撃が始まる。

機関銃も火を吹き始め、タッタッタッタという92式重機関銃独特の銃声が鳴る。


しかし、米軍も反撃してくる。


戦車の砲塔がこちらを向き、砲弾を放つ。

幸いにもその砲弾は全て塹壕の少し手前に着弾する。

ドガァーンと砲弾の爆発音が鳴り響き、周りは恐怖する。


日本兵1「ち、畜生…!撃ちまくれ!」


日本兵2「も、もう弾が無いよぉ!!」

日本兵たちは支給されていた弾丸が少なく本格的な銃撃戦ともなれば一瞬で撃ち尽くしてしまう。

弾がなくなれば、


"最期の突撃"を敢行するしかない。


そう考えた塹壕の右側にいた第一中隊は突撃を始める。


第一中隊長「突撃ぃぃ!突っ込めぇぇぇぇぇぇ!」


日本兵たち「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

最期の叫び声を上げながら彼らは突撃していく。


しかし容赦なく米軍の戦車は砲塔を突撃してきている第一中隊の日本兵たちに向け、砲撃する。


戦車の集中砲火が始まるとドガァーンという爆発音がそこらじゅうで鳴り響き、叫び声に包まれる。


日本兵たち「ぎゃぁぁぁぁ!」「ぐぅ!」


日本兵たちが突撃してくるならば当然米兵たちとの距離も縮まってくる。

すると彼らは米兵たちの射程に入ってしまい、銃撃と砲撃の両方に襲われる。


周りには大量の砲弾が着弾し、日本兵たちを吹き飛ばす。


小嶋には、地獄そのものにしか見えなかった。


すでに第一中隊長も砲撃によって吹き飛ばされ戦死してしまい、指揮系統も崩壊していた。


すると突然小嶋の隣にいた少年兵が大量の手榴弾や爆薬の入った木箱を背中に背負う。


小嶋「な、なにやってんだやめろ!!」

そう小嶋が呼び止めるのも聞かずに彼は木箱を背負ったまま戦車に突撃していく。


少年兵「お母さぁぁぁぁぁぁん!!」

そうお母さんと叫びながら戦車の下に潜り込もうとする。

しかしその声で反応した戦車兵が上部に取り付けられているM2ブローニングで射撃する。


弾丸は少年兵のお腹を貫きその場に倒れ込む。


しかし、戦車は少年兵を轢こうと進んでくる。


小嶋は何度も叫ぶ。



小嶋「おい!逃げろぉ!」

しかし小嶋が助けに行こうにもしつこく米兵たちが出ようとする小嶋に向かって射撃してくる。


隼斗「分隊長無理です!もうあいつは助けられません!!」

そう言われて、小嶋はやるせない気持ちになる。


戦車は少年兵の間近にきた。

あと5秒もすれば少年兵はミンチになってしまうだろう。

しかし、まだピンを抜かない。


少年兵「まだだ、もっと…もっと引きつけなけれ…ば…」

少年兵は戦車を引きつける。


5…


4…


3…


2…


そうカウントダウンは進み、ついにその時が来る。


少年兵「1…0…ハハッ、親不孝な私を…お許しください…お母さん…父さん…」



その瞬間、少年兵はピンを抜いた。


ドガァァァンととてつもない爆発音が鳴り響き戦車の底からは火が吹き出る。


戦車は、沈黙した。


しかし、戦闘は続く。

一人の未来を捧げてまでも、米兵たちは止まらない。


小嶋「くそっ…くそっ…!」

小嶋は助けられたはずの命を助けられなかったと自分を責め続けていた。

しかしその時、好古から言われる。


好古「分隊長!早く撤退しないと!」

そう言われ、ハッとして周りを見渡す。

周りでは、日本兵たちはもはや突撃していく勇敢な兵士ではなく逃げ惑う人間と化していた。


日本兵「に、逃げろぉ!火炎放射器だぁ!」


「ま、待ってくれ…ぐ、ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!」

火炎放射器が火を吹いており、逃げられなかった兵士は燃やされる。

その姿は軍服はもはや無く、皮膚もただれ落ち黒焦げた姿で硬直している。


小嶋「て、撤退するぞ…!」

ここにいては全員死ぬと考えた小嶋は撤退命令を出して逃げる。

それを見た第二、第三中隊も続いて撤退する。



そうして小嶋たちは走る。


どこまでも果てしなく。



小嶋「はぁ!はぁ!」

もうそろそろ息も切れかけていたその瞬間道に出たと思うと何かに躓く。


小嶋「ぐっ…な、なんだ…?」

そうして足元を見ると、大量の黒焦げている死体が目にはいる。

さっき火炎放射器に焼かれた日本兵と同じ姿だった。



小嶋「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」

小嶋は怯える。

しかし部下たちに連れられ、撤退する。


隼斗「っ…何してるんですか!早く撤退しますよ!」

そうして、撤退は完了した。

しかし、犠牲も大きかった。


いつも死にゆくのは、若者だった。


第32話「死にゆく若者たち。」









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