第24話「あれから一ヶ月、そしてマラリア。」
本当にすみません…
最近毎日投稿ができない状況でして、やれるようになったらまた毎話2000文字ペースで毎日投稿しようと思います。
どうかご了承ください。
それでは、どうぞ。
9月7日 ガダルカナル島沿岸部
ザッザッという足音が沿岸部に響き渡る。
上陸挺から川口支隊の最後の派遣隊が来たのだ。
小嶋「ようやくこれで川口支隊も全員上陸か?」
小嶋はそう翔太二等兵に聞く。
翔太二等兵「ええ、確かそのはずですがそれにしても…もう米軍が上陸してからちょうど1ヶ月ですね…」
彼は少し苦い記憶を思い出させるようなことを言う。
この者は翔太二等兵。
川口支隊所属の陸軍二等兵でまだ訓練上がりの若者であった。
こいつを見てると…訓練生時代のあいつに…
そう考えるとつい微笑みが漏れてしまう。
それを翔太二等兵は見つめ、
翔太二等兵「僕の顔がなにかおかしいですか?」
翔太二等兵は顔の問題かと聞く。
小嶋は勘違いを解こうと弁明する。
小嶋「い、いや…俺の親友"だった"やつに少し似ててな…懐かしくなっちまっただけだ…」
小嶋は少し照れくさそうに言う。
あいつの目の前じゃ絶対言えないことだから。
なぁ?中村よぉ…
そんなことを考えていると翔太二等兵から聞かれる。
翔太二等兵「あの…い、いや!やっぱりなんでもないです…すみません…」
翔太二等兵は嬉しそうにしている小嶋の顔を崩したくはなかった。
でも小嶋一等水兵は翔太の心を悟った。
小嶋「見え見えだぞ。お前ここでなにがあったかわからないから聞きたかったんだろ?いいよ別に、遠慮はいらんよ。」
小嶋は配慮を施してくれた翔太の心を裏切らないようになるべく微笑んでいる顔を崩さずに言う。
小嶋「この島では色々あったよ…本当に…長く長くたくさんのことが…」
唯一死を覚悟できたイル川渡河戦。
中村との誓い。
生きることの大切さ。
死ぬことの誉れの高さ。
国という名の最終防衛線。
戦場でしかできない友情。
様々なことが頭を埋め尽くしていた。
それでも絶対に忘れないことは…
死ぬことの儚さと…
中村と培った"忠誠"と"覚悟"。
でも今俺の隣りにいるのは翔太だ。
俺の最初の部下だ。
可愛がってやらないとな、あいつのように。
そう思いながら、今まであったことを全部翔太二等兵には話してあげた。
翔太二等兵「そんなことが…で、でも!僕だって国に忠誠を誓った兵士です!必ず誉れを持って死んでみせます。」
翔太二等兵はそんな綺麗事を言う。
誰もが誉れを持って死ねるわけじゃない。
みんな、"愛"を持って死ぬはずなんだ。
小嶋「なぁ、お前家族は。」
小嶋はそう翔太に聞く。
翔太二等兵「僕は、両親と姉がいます。」
翔太二等兵には一人の姉と両親がいた。
そんな状況ならなおさら…
なおさらあいつのように…
小嶋「おい、家族がいるなら死ぬな。お前は家族を悲しませるのが国に対する忠義か?」
小嶋はそうキツく翔太二等兵に問う。
翔太二等兵「いえ違います!立派に戦い抜き、敵をたくさん殺すことこそ誉れと思います!」
翔太二等兵はそう言った。
小嶋「そうだ。戦い抜け。いいな?」
そう言って小嶋はまた自分のテントへと戻っていった。
そして時は流れ、翌日の朝…
9月8日 ガダルカナル島 川口支隊テント
小嶋「ハァハァ…クソっ…クソっ…!!」
そう息を切らしながら小嶋は医療所へと走る。
翔太…もう二度と失いたくない…!!
そう心で叫び続けながら目の前に見える医療所へと駆け込んだ。
小嶋「軍医殿!翔太に…翔太になにがあったのでありますか!!」
軍医に対しそう隙を与えないような慌てようで小嶋は聞いた。
しかし軍医は落ち着いて言う。
軍医「貴様、翔太二等兵の上官か。」
軍医はそう悟る。
小嶋「はい。私は川口支隊の中央隊所属の第二班の班長、小嶋一等水兵であります。その班員です、翔太二等兵は…」
小嶋は自分の所属を名乗り、翔太二等兵の所在も明かす。
それで理解した軍医はすぐに小嶋を呼ぶ。
軍医「おい、小嶋一等水兵。俺について来い。」
そうして軍医はテントの奥の方へと歩いていく。
小嶋も続いてついていくと強烈な臭いに弾丸などで足を撃ち抜かれ切断を余儀なくされた兵士や包帯で腕や頭を包まれている兵士がいた。
皆、"五体満足"の自分のことを見ていた。
そうして奥の方につくと、なにかまた暖簾のようなもので区切られているところがあった。
そこを通り抜けると、たくさんの病人が横たわっていた。
病人「う、う"ぉ"ぇぇぇぇぇ…」
そう嘔吐している兵士などがいた。
そのなか探していると奥の方に翔太二等兵の姿があった。
急いで駆け寄り話しかける。
小嶋「おい、大丈夫か。俺が来てやったぞ。」
小嶋がそう元気づけるように話しかけると翔太二等兵も起き上がった。
しかしその体はひどいものであった。
それはあばら骨が可視化できるほどガリガリで、筋肉もほとんどないような状態だった。
病気にエネルギーなどが全て吸われていったのであろうか…
翔太二等兵「わざわざ…来てくれたの…ですか…?」
そう弱々しい声で小嶋に話しかける。
小嶋「あぁ!わざわざ来てやったのさ!お前が…お前が"熱帯性マラリア"なんかにかかったって言われたから!慌ててきたんだよこの大馬鹿野郎!!」
小嶋は涙を流しながらそう言った。
涙を流している理由を翔太二等兵は悟ることもせず理解していた。
もはや薬も現代のような予防注射もなにもない戦場でそのよりにもよって進行が早い熱帯性マラリアにかかることというのはすなわち死を意味することでもあった。実際の他の南太平洋の戦場でも大量の兵士たちが熱帯性マラリアに襲われた。薬はほんの一部しか支給されていなかった。その薬はほとんど士官などに使われ、下っ端の兵士たちには祈ることしかできなかった。
翔太二等兵「わ、私から離れたほうがい、良いですよ…?僕はマラリアに…かかってしまったんですから…」
翔太二等兵はそう離れるように言う。
しかし小嶋は離れずなんなら手をつかんで言った。
小嶋「必ず!必ずお前を国に返してやるからな!そして家族に、家族に幸せを分けてあげてから死ね!!」
そう小嶋は翔太に怒鳴りつける。
いや、"説教"なのかもしれない。
しかし、小嶋はもう既に悟っていた…
翔太二等兵の力がだんだん弱っていくのを。
もう既に24時間が経過していた。
翔太二等兵「小嶋さん…僕、あなたのこと…尊敬してますよ…上官としてではなく…人として…」
翔太二等兵はいきなりそんなことを言い出した。
小嶋「なっ、何言ってるんだ!そんなことは治ってから…治ってから言えよバカヤロウ!」
小嶋はそう言った。
でも、世界は非情だった。
彼は遺言すら残せずに、亡くなった。
軍医「もう、死んでるよ。そこの二等兵は。」
軍医はそう冷徹に告げる。
小嶋「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
そう怒りと悲しみに震えた叫び声で、テントから飛び出した。
ただ森の中を駆け抜けた。
草木に阻まれながらも走り続けた。
しかし石に躓いて彼は転んだ。
小嶋「ぐ…ぐぞっ…くそったれぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
あの叫びから、1時間後。
彼は冷静になり、テントへ戻った。
そうしてもう一度翔太二等兵のもとへ行き、彼の小指を銃剣で斬った。
功績係に渡そうと彼は呼び止めた。
小嶋「なぁ、そこの功績係。」
功績係を見つけ、呼び止めた。
功績係「はい、どうかしましたか。」
そう言われたのて彼は、衰弱しきってほそぼそくなっていた翔太二等兵の小指を差し出す。
小嶋「これ、翔太二等兵のものなんだが…」
その瞬間、彼は考えられないことを言う。
功績係「うわっ!マラリアにかかった人のものを持ってこないでくださいよ〜さわれないっすよ…」
は?
立派に病気と闘って死んだものの指が、さわれないだと?
病原体だと?
そんなのって…ないだろうがよ…
小嶋「くっ…!この大馬鹿野郎がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そうして全力で拳をその功績係頬にぶち当てた。
ドガッという音とともに彼は倒れ込んだ。
功績係「いてて…な、なにするんだ!」
しかしそんな言葉を気にせず彼は言う。
小嶋「いいか!これは立派に軍人となってマラリアという敵と立派に闘って死んだ"英霊"のものだ!!それを貴様は!病原体のように扱いおって!お前のような下っ端の功績係がそのように扱うことは許されない!丁重に扱って無事に本国に送り届けろ!この大馬鹿者!」
そう怒りをぶつけたあと、彼は森に消えていった。
第二十四話「あれから一ヶ月、そしてマラリア。」




