「敵」
今回、ついに米軍来襲です。
小嶋たちはどうなってしまうのか…?
それではどうぞ。
あの太陽を背に、生きると誓った。
小嶋と中村は…
あれからほんの少し経った後。
小嶋たちはまだ外にいた。
2人で爆撃によって折れていた木に座っていた。
2人で太陽を見ていた。
中村「綺麗な、太陽だな。」
小嶋「あぁ…暑いけど…綺麗だ…」
戦場になった時一番に敵になるのは「太陽」なはずだった。
しかし、今ではその太陽が美しく自分たちを照らしてくれている。
なんだか、綺麗なのか暑いだけなのか…わかんねぇな…
確かにすごく暑くはある。
鼻からだって腐ったような臭いは離れない。
ただ…太陽の綺麗さは失われない…
だって…太陽の美しさがなくなったとき、僕らは死んでしまうのだから…
小嶋「もうそろそろ、戻るか。」
小嶋は戻ろうと誘う。
もちろん中村も誘いに乗る。
中村「わかった、戻ろう。」
そして地面から立って歩き出す。
スタッ…スタッ…と足音を立てて。
その時そんな足音を遮るとまではいかないものの、なにかが海からこちらに来るような音がしていた…
なんだ…?船の音か…?
いや違う…上陸挺…?
それに気づいた小嶋たちは急いで壕に戻る。
ドタドタと足音を立てて走る。
一刻も早く…
早く…知らせないと…みんなが…
また…また…
「か、母ちゃん…」
あんなの…もう…見たくない…
そして壕につくと同時に叫ぶ。
小嶋「速く出ろ!!米軍の上陸部隊が来てる!!」
そう話をした瞬間、壕の中には静寂が広がっていた。
そして、一人の負傷兵が話し出す。
とある負傷兵「俺は…置いてい…け…」
その負傷兵は腹の右側だけが吹き飛んでおり、腸も少し出てきている。
いや、引きずっていると言ったほうが良いだろう…
グチャ…グチャと腸を削る音が聞こえる。
あと…腐ったような臭いもする…
もしかして…長時間放置してたのか…?
衛生兵は…?
小嶋がそう考えたとき、タイミングよく中村が聞く。
中村「おい…看護兵(衛生兵)の分隊はどうした…?」
?「そんなの…ほとんど生き残ってないさ…」
そう言って奥から出てきたのは佐原海軍大尉だった。
小嶋「大尉!生きてたんですか!」
小嶋はうれしそうにそう叫ぶ。
しかし、その期待は裏切られる。
佐原大尉「ははっ…喜んでいるところ悪いが…よく見ろ…左耳が吹き飛んでて…よく聞こえないんだ…今だって、右耳だけで聞いている…」
佐原大尉は艦砲射撃の際、奇跡的に少し外に出ており、飛行場建設を監督していた。
そのときに砲弾が至近に直撃し、その破片で左耳が吹き飛んだという。
あぁ…無傷の人なんて…いないんだな…
そう思いよく周りを見るとほとんどの人が砲弾の破片を食らっている。
それに…設営隊の人たちもほとんどいない…
しかし…今そんなの気にしている暇はない…
小嶋「とりあえず!早く壕から出て、西側に逃げましょう!早く!」
佐原大尉「そうだな…いいか!みんな!負傷兵はここに置いていくか、外に出して米軍に治療させろ。もしくは、とどめを刺してやれ。」
そんな残酷なことを口にしているが、佐原大尉の目には涙が浮かび上がっていた。
佐原大尉「…さぁ、行こう。」
そして佐原大尉を筆頭にどんどん中から人が出てくる。
ほとんど警備隊の人だ。
そして森の中へと歩いていく途中に、佐原大尉に小嶋は聞いた。
小嶋「あの…設営隊の人たちはどこへ行ったんですか…?」
佐原大尉「設営隊の者たちか…彼らは分散して森の中へ行ってしまった…だから足取りもよくわからない…」
設営隊の者たちは艦砲射撃のときに分散して森の中へと撤退してしまったため足取りがつかめないとのことだった。
設営隊の人たちが心配だ…いつか…助けに…
そのとき佐原大尉が口を開く。
佐原大尉「情に負けて助けに行こうなんて思うなよ。」
小嶋「え…?」
小嶋は思いもよらなかった発言に、頭が停止する。
しかし佐原大尉は小嶋に話す。
佐原大尉「俺はコレでも軍人だ。助けに行くと言って死んでいった奴を見てきたんだ。俺はもう「情」などと言うものに振り回されたくはない。よって、助けにはいくな。偶然出会えることを祈れ。」
そんな冷徹なことを言って、佐原大尉は行ってしまう。
俺…やっぱり情を持ちすぎてるのかな…
中村みたいに…変わらないと…
そんな事を考えていた時海の方から金属音が響く。
ガシャン!と。
小嶋「ま、まさかっ…」
佐原大尉「速いな…さすがといったところか…」
どうやらついに…
ついに…
「敵」が来た…
その時から一気に海岸のほうが騒がしくなった気がする…
何を喋ってるかもわからない。
その時空からも轟音が響く。
グラマンやSBD急降下爆撃機がやってくる。
中村「空襲だー!!!」
そう中村が叫ぶと、滑走路内にいた兵士たちは一気に走り出す。
しかし、速度は戦闘機のほうが勝っている。
そして、弾丸が発射される…
ズバババババババと鋭い音を立ててこちらに向かって撃ってくる。
砂煙が立ち上がり、こちらに向かってくる…
なんだこの煙…俺に来てんのか…?
俺…狙われてんのか…?
駄目だ…動け…足…動けよ…!
そしてついに煙が目の前まで来た時。
中村が小嶋を突き飛ばし、助ける。
偶然にも中村もどうやら戦闘機の翼の弾丸と弾丸の間を通り抜けられたらしい。
助かった…
そう思ったたのも束の間。
新しい犠牲が…増える。
グシャァと弾丸が逃げていた日本兵の腹を貫く。
ドサッと地面に倒れ込み、叫ぶ。、
撃たれた日本兵「いでぇぇぇぇ!いでぇよぉ!!看護兵…!看護兵!」
そう大泣きしながら叫び、看護兵を呼ぶ。
しかし冷酷にも、看護兵はすでに行ってしまっていた。
それに、自分から危険なところに戻るのもバカな話だった。
だから、誰も助けられない。
小嶋「くっ…!」
助けるか…
助けないか…
いや…助けるべき…!
「情に負けて助けようなんて思うなよ。」
…!
その言葉が、助けようとする心を阻む。
「情」か、「現実」を見るか。
ならば…
小嶋「すまない…」
そう言って、1個の手榴弾を渡す。
日本兵「く、くそっ…くそぉ…」
そうまた大泣きしながらひたすら言う。
手榴弾を握りしめて。
小嶋は、「現実」を選んだ。
そして、みんなについていくように小嶋たちも森の中へ隠れる。
やがて、米軍が来る。
大量の米兵がついにさっき僕らがいた森の中から出てくる。
米兵たちが、日本兵を見つける。
米兵1「〜〜〜(なんだ?このジャップは。)」
米兵2「〜〜〜(腹がやられてんな…見捨てられでもしたか…可哀想に…最後くらい…楽にしてやろう…)」
そうやって「兵士なり」の情を掛けようと銃剣でトドメを刺そうとする。
その瞬間。
日本兵「テンノウヘイカバンザァァァァァァァイ!!!!!!!」
そして手榴弾の紐を抜き、米兵の一人を掴みこちらに引き込む。
米兵「HELP!!!!HEELP!!!!!」
そうやって米兵は助けを求めるが、ここで撃っても仲間にも弾丸が当たるし、引き剥がそうとすれば自分も死ぬ。
だから米兵たちも仲間を見捨て、少し遠くから銃で狙いだけつける。
日本兵「最後は道連れだぜ…」
そして…
ドガァァンと手榴弾が爆発する。
煙が晴れた頃には…
二人とも黒焦げだった。
森の中 佐原部隊
佐原「…すまないな」
そう申し訳なさそうに言い、歩いていく。
そういえば…吉田さんは…?
吉田さんたちは…無事なのかな…
いや…きっと…また合流できるはず…
そのときまで…生き抜こう。
小嶋「生きるぞ、中村。」
中村「あぁ、小嶋。」
小嶋はお互いに生き残ろうとする。
中村もそれに応える。
小嶋、中村「俺らは絶対、生き抜く。」
第9話 「敵」
今回はタイトルに敵と書いたのにそこまで米軍が出てきませんでした。
その理由はなるべく「小嶋たちの視点」で描きたいからです。
確かに「戦史」だったらバーンと米軍と日本軍の戦いや情報戦を描くかもしれませんがこれはあくまで一人一人の命というものにフォーカスを当てておりますので戦史ものではありますがそのなかで生まれていった絆を描く一種の「人間ドラマ」としても観ていただきたいからです。
単純な、戦史ではない人間ドラマを…
これからも「ガダルカナル」をよろしくお願いします。
それでは、次回また会いましょう。




