準備
それから一ヶ月の時間が流れた。
ゼラ達は既にAランクまで最速で駆け上り、ゼラはギルド内では覇王と呼ばれ始めた。
事あるごとに突っかかってくる先輩達を尽く蹴散らし容赦無く叩きのめし、自分がやることには責任を持って100%完遂する。失敗は一度も無く邪魔をする先輩達の妨害すら容易く対処し逆に陥れたたりと邪魔をする者には限界寸前の仕返しをしていた。
そんなことを最初からやり続けた結果覇王と呼ばれ始め現在では定着してしまった。
Sランクにももう少しで上がる為ガンガオはゼラの二つ名は覇王に決定した。
「覇王ねぇ~。」
昼が過ぎ夕刻の時刻に入ろうとしている。
ガンガオの部屋のソファーで横になるゼラに机で職務中のガンガオ。
現在三人は家でお留守番と簡単な掃除をしている。
三人はある程度家事が出来るようになってきている。
洗濯はアウラが水魔術で綺麗に手早く更に乾燥までやる。
掃除はスィーナが風魔術で埃や塵を一つも残さず物を飛ばさずに袋に集めゴミとして捨てている。
シスは最近では自分で料理をし始めた。
味はあれこれ試行錯誤で作っている為美味しい時と不味い時とあるが基本美味しい。
「シスは静謐姫。アウラは優しき人魚姫。スィーナは舞姫と呼ばれてるぞ。」
「う~ん。それただの見た目とか性格とか属性で決めてるよな。」
「そうだな。まぁ間違ってもないからこのまま静謐姫、人魚姫、舞姫の二つ名でいいかなっと思ってな。」
「まぁいいか。二つ名はもうそれでいいよ。正直面倒くさい。」
「ゼラならそう言うと思ったよ。」
とガンガオは書類を書いていく。
「あ~。お金って使っても使っても減らなくなる物なのか?。」
「普通はありえないな。ただお前達のペースが異常なだけだ。正直かなり貯まってるだろ。」
「そうだな。俺で金貨1900枚。三人は1200枚ほどだったかな?。」
一回の任務でゼラ達がやっている報酬金額は大体金貨10枚以上。
だが討伐依頼はAランクとなると複数のAランク混じりのPTが最低でもバランスが取れていて3組必要
でそれもアタッカー、ディフェンダー、ヒーラー、シューター、メイジの構成での話。
なので最低でも15人で10枚を分け、素材も分ける為大体の収入は一人当たりの収入は金貨10枚前後に出費が大体金貨5枚前後なので儲けは大体5枚程度である。
収集もある場所が危険であったりする割に討伐の半額程度なので不人気。
だがゼラ達は収集は積極的にやっている。
理由はゼラが素材欲しさについでに収集するという散歩のついで程度で。
しかし期日の期限より納品が他の冒険者と違い格段に早い上に失敗は0なので確実に信頼を稼ぎつつ儲け更に拾っていた物が依頼で張り付いていて行かずに稼いだりと荒稼ぎをしている。
討伐依頼もゼラ達のレベルだと準備もさほどせずに狩れる為で狩っているので出費無しでの100%の収入で貯まっていく一方である。
「何に使うんだ?。」
「特に無いし1万程貯めたら土地でも買うか?。」
「スケールがでかいぞ・・・。」
「そのぐらいしかする事ないし。まぁ暫くAクラスのめんどい依頼なさそうだからだらだらするけどな。」
「正直ゼラのおかげでギルドの評判は鰻登りでお前の評価もとんでもないことになってるが、ここでだらけるのはどうかと思うが・・・。」
「気にすると禿げて更に実年齢より上に見られるぞ。」
「だから禿げてない。ただ明日にお前に頼みたい依頼が出るはずだ。」
「まぁいいよ。探索でも調査でも人拐いでも暗殺でも。」
「最後の二つは犯罪だ。多分調査依頼になると思う。」
「ってことは検討がつくのは帝国とエルフの調査か?。」
「ああ。今戦争中だからな。つい三日前に帝国側が動き出したと言う情報があってなエルフ側がどうなっているか知りたい。」
現在この街から西に100km進んだ先に帝国がありその間の50kmに迷いの森と呼ばれるエルフが住んでいる森がある。
「でも迷いの森で迷わせ視覚外から地形優位な状況で弓や魔術で仕留めてエルフの被害はほぼ出ていないって聞いたが・・・。」
「まぁそうなんだが帝国側が新しい魔道具が完成したらしくてな。それがもし迷いの森の効果を打ち消す物なら。」
「ものの数日で物量で押し切られるな。戦争ってのは数だからな。」
「そうゆうことだ。お前達なら一波程度なら足止め出来るはずだ。だから保険も兼ねてお前達を選んでいる。」
「実際帝国とエルフの戦争なんざ興味ないんだけどな。まぁ仕方ないか。準備だけはしとくか。」
とソファーから立ち上がり部屋から出ていく。
「全く自由気ままだな。」
っふっと笑い仕事に専念するガンガオ。
ゼラは家に戻り作業場でとあるアイテムを作る準備をしていた。
三人も興味津々に学生服の様なラフな格好で見学をしている。
作業場は現在ゼラの手により錬金術の魔法陣が描かれて素質がある者ならいつでも錬金術が使えるようになっている。
「とりあえず爆薬、発光石に皮革を魔法陣に置いて。調合開始っと。」
魔力を流すと魔法陣にアイテムが全て吸い込まれ数秒で作りたいものが完成する。
出来上がったのは黒く丸い球体。
「よし閃光玉の完成。じゃ早速試しに・・・。」
と言って思いっきり地面に叩きつけると周囲に強烈な光を放つ。
「う・・・!?。」
「眩しいです・・・。」
「目が・・・。」
三人は直視してしまった為怯み一時的に盲目状態になった。
盲目は一瞬で一定以上の光を目に受けた時になる状態異常で怯み暫く動けなくなる。
「うん。成功。じゃ10個程作っちゃいますか。」
と10個分の素材を魔法陣に置きあっという間に作り終える。
「よし。」
三人も視界が元に戻る。
「マスター。これ何に使う?。」
「逃走にも足止めにも隙を作るのに使える非殺傷アイテム。光で目くらましをして攻撃なり逃げるなり幅広く対応出来るアイテムの一つ。シスと戦った時にも使ったよ?。」
「でもあれもっと光強かった。」
「そりゃ高級閃光玉だからね。効果が倍違うし。」
「これより強いのあるのですか・・・。」
「人間の知恵って怖いなぁ・・・。」
しみじみ思うスィーナ。
「とりあえず皆に2つづつ渡しておくな。地面に思いっきり叩きつけないと効果が現れないから余程の事が起きない限り誤爆はしないはずだよ。」
「大丈夫。私達もアイテムボックスを持ってるから。」
アイテムボックスの袋が市販に売られていたので買ったがゼラやナサリーが持っている程入らない。
だが小物の素材や回復アイテムなどは十分な量が入るので金額は金貨100枚したが人数分購入した。
「これ購入してから依頼が格段に楽になりましたよ。」
「結構入って重さを感じないって凄い。」
「まぁ出来たらあと5倍ぐらい入る袋欲しいよな。」
「あればいいですね。」
「さぁご飯食べて早めに寝るぞ。明日には皆で任務になるからな。」
「またあそこがいい。」
「じゃそのラフの格好じゃなくオシャレな方で出かけようか。」
店に入るともはやVIP扱いで必ず奥の最初に案内された場所に案内される。
二日に1度はピークを避けて必ず昼か夜を食べに来て全メニュを注文するので直ぐに顔を覚えてもらえた。
そしていつもの少女がいつも接待してくれる。
名前はセリアナ。
この店の一人娘で彼女目当てで来る客も多い。
「いつもありがとうございます。お酒の方はアルゴリアの果実酒、ミックス果汁のジュース3つになります。こちらはサービスとさせて頂きます。」
「ありがたく貰うよ。」
「では出来次第お運びいたします。ごゆっくりおつろぎください。」
セナはお辞儀をし出ていく。
「まさかもうボトル1本とジュース1杯サービスをしてくれるとは思わんかった。」
「美味しい。」
「やっぱりこのジュースは格別ですね。」
「家でも作れないかな?。」
「頑張ってる。けど配合比率が分からない上味もまばらでどうしようもない。」
「え?。シス様は再現しようとしてるんですか?。」
「してる。けどまだまだ程遠い。近付いたら二人にも感想お願いする。」
「はい。任せてください。」
(ああ・・・。この空間たまりません・・・。)
酒をゆっくり飲みながら三人のやり取りを観察しているとセリアナが慣れた手つきで料理が次々と運ばれ前と同じ様に物凄い勢いで料理はなくなっていく。
だが決して汚い食べ方では無く上品に食べているのに物凄く早いのである。
セリアナもいそいそと料理を運んできてくれる。
時折ゼラは酒の追加を頼んだりジュースの追加などで呼び止めるぐらいで何事も無くデザートまで食べ終える。
「本日デザートになります。」
セリアナは並べていく。
「「「うわぁ・・・!!。」」」
三人は宝石の様に輝くシャーベットに釘付けである。
「へー。シャーベットか。」
「ゼラ様はご存知でしたか。今人気のお菓子で凍らせた果実の果汁を砕いた物なんですよ。」
「ん・・・ん!!。シャリシャリ冷たい!!。甘い!!。」
シスの美味しさのあまりテンションが天元突破し表情が豊かになっている。
「ふふ。喜んでいただけで嬉しいです。」
「食べるのがもったいないぐらい綺麗ですね。ですが美味しい。」
「家に飾りたい。」
「温度で溶けるから無理だぞ。」
「本当に何でもお知りなんですね。」
「まぁな。そうそう。伝えておく事あるんだよ。」
「はい。料理のレシピはダメですよ。」
「それはシスが知りたがってるだけだよ。」
ゼラは苦笑いをし、セリアナはクスクスと可愛らしく笑う。
「明日から暫く来れない。」
「え・・・。」
笑顔から真顔に変わる。
「多分最低でも1週間程。長いと1ヶ月はこの街から離れる。」
「長いですね・・・。」
「まぁかなりの遠出だからね。楽しみでもあるけど。」
「・・・。少し待ってもらえますか?。」
「まだ1時間程は寛ぐよ。」
「失礼します。」
と出ていく。
「心配してくれてる。」
「有り難いですね。」
「ここの人達は優しいからね。特にセリアナは。」
「まぁ慢心は駄目。油断せず確実に。死なないようにな。」
「「「はい。」」」
三人に命令を下す。
それから暫くしてセリアナが戻ってきた。
「失礼します。」
「ああ。」
「あの・・・。」
セリアナはもじもじとしている。
「っ・・・!!。」
意を決したようにゼラに、
「これ受け取ってください!!。」
渡したのはミスリルで作られているお守りだった。
効果は沈黙耐性。
「御守りか。ありがたく頂戴しとくよ。」
「絶対に帰ってきてくださいね。」
「大丈夫だって。今この御守りのおかげで100%帰って来れるさ。」
「絶対・・・絶対で・・・うぅ・・・。」
「ほらほら死ににいくんじゃないだから泣かないの。」
セリアナの頭を撫でる。
「グスっ・・・。うぇ・・・。うぅ・・・。」
暫く泣いたセリアナはその後泣き止むと恥ずかしさのあまり物凄い速さで出て行った。
その後は会計を済まし店長達もセリアナから事情を聞いたらしく心配してくれた。
Aランクの長期任務っていうのは一般人にとって死と隣り合わせの任務と認識されるみたいである。
今回はありがとうございましたでは無くお気をつけていってらっしゃいませと言われた。
「短い付き合いなのにいい店だな。これからも来ようか。」
「ん。」
「そうですね。」
「じゃ明日に備えて寝よう。」




