その17 囚われのヒデ
P6指令室。
「そうか・・・桑田が・・・」と無念そうな弘士。
「今・・・ロクさんが対面してるそうです・・・」悲しみに報告をする我妻。
「なつみ・・・」松井はその場で泣き崩れた。
「松井?キーンの状態は?」
「は、はい・・・医師の言葉では命には別状はないようですが・・・」
「悲しんでばかりはいられないぞ!体制を立て直すぞ!」
「はい!!」
「地下3階の警戒は解かず、このまま警戒態勢をレベル2に落とす。敵が何名入ったのか分かるまではな!松井?前司令と参謀は?」
「は、はい。負傷者の手当てにまわってもらってます。」
「前司令には護衛をつけて、ヒデの取調べに当たってもらう。」
「了解・・・」
「関根がスパイだったとは・・・」と嘆く弘士。
地下3階ジプシー専用医療室。キーンが寝ているベットにダブルの姿があった。キーンがちょうど目を覚ます。
「気がついたか?」とダブル。
「ここは・・・?」とキーン
「地下3だ。」
「そうか・・・」
「爆破に巻き込まれた。奇跡的に助かったぞ!」
「ああ、そうだな・・・自分の車を罠にするとは・・・タ、タケシは・・・!?」
「ロクが奴を仕留めた。」
「そうか・・・ロクが・・・」再びベットで目を瞑るキーン。
「ちょっと待ってろ・・・今、先生を呼んでくる!」
「ああ・・・」
ダブルは席を外すと、医療スタッフを呼びに行き、再び戻ってくる。すると医療スタッフの一人がやって来る。
「目が覚めた?」
その女性スタッフは30前後、美形で品の良い顔立ち。ダブルの目が輝く。すぐダブルの顔が綻ぶ。
「こ、これはこれは・・・お姉さま・・・」
「高田よ。さっき付けでここを任された・・・関根が死ぬなんてね・・・残念よね・・・」
「関根さんが!?亡くなったのか?」驚くキーン。
「いえ、こんな方がこんなとこに居たとは・・・」既に高田しか見ていないダブル。
「あんたら、軽傷の時以外ここ使わないでしょ?」
「確かに・・・」
「結婚はしてるんで、心配なく!」とダブルに向かって睨む高田。
「俺、そんな顔してましたか?」
「少なくとも、友人の容態よりはね・・・」
「あちゃ・・・」
「先生・・・右足の感覚がないんです。」とキーン。
高田は、ダブリの顔を見た。首を振るダブル。
「よく聞いて、その右足は切断された。」
「えっ・・・」
「先生・・・それは今・・・」驚く
「仕方ないじゃない!いつかは話さないと・・・あなたは、もう戦場には立てない。今は退院してリハビリの事だけ考えてちょうだい!戦場に戻るのはそれから・・・いい?」
「先生、そんなはっきり言わなくても。」とダブル。
「分かりました・・・」キーンはベットで横を向いてしまう。
「キーン・・・」キーンの返事に驚くダブル。
「私は、関根とは対立してきたの。関根はOKを出していても私には通用しないわよ!」
「恐い恐い・・・」
「さっき来たもう一人の仲間もそう!よくあんな重体でここの指令室はよく戦場に出してるわね!」
「誰?」とダブル。
「ロクよ!ここで点滴打ってなさいって言ったのに、もう居ないし・・・」
「ロクが・・・」
「あんた手が空いているなら捜して来て!いつ倒れても知らないわよ!」
「わ、分かりました・・・」とダブル。
「それと、彼に伝えてちょうだい。桑田の遺体を見たわ。あなたの予想で当たっていると・・・」
「はあ?そう伝えればいいんですね?わかりました。」
ダブルが慌てて部屋を出て行く。
P6指令室。
「司令?地上部隊より連絡!爆破された建物から死龍さんが発見されたと報告があり・・・」
「死龍が?地下6にいたんじゃないか?」
「再度、確認します!」
そこへ、久弥が入って来る。
「どうだ?」
「ボロボロです。たった10名程の敵兵にポリス内を掻き回されるなんて・・・まだ敵の人数や目的の詳細が掴めず・・・」
「死者は?」
「上と下合わせて35名、ほぼ地上部隊です。負傷はキーンほか多数!」
「桑田が亡くなったと聞いたが?」
「はい・・・関根、シン・・・大きな代償です。特に関根にはスパイ容疑が掛かっています。」
「そうか・・・」
「それと、ロクがタケシを討ち取りました!」
「ロクが・・・」
「それと捕虜4名を確保。その中にここにいたヒデが・・・」
「何だと!?なぜヒデが・・・?」
「兵を付けますので、前司令に取調べをお願いしたいのですが?」
「よかろう!わしがやろう!」
「お願いします!」
地下3階のある取調室。後ろに手錠をされイスに座っているヒデ。 そこへ銃を構えた兵士2名を引き連れた久弥が取調室に入って来る。
「久しぶりだな・・・ヒデ・・・」
顔を上げ久弥の顔を見るヒデ。既に顔は腫れ意識は朦朧としていた。
「じじいか・・・?」
「相変わらず、口の減らん男だな。」
「ふん・・・」
「今回の攻撃の意図を知りたい。」
「知らん!」
「兵の話では、お前がストラトスに乗っていたとか?」
「だからなんだ?」
「それでは、ロクやダブルが苦戦するはずだな。」
「あいつらに負けるはずがないだろうが!」
「しかし、敗れた・・・当時でも勝てんお前が、今のロクやダブルに勝てんだろうが!」
「くっ・・・」
「なぜ、地下に入ろうとしたんだ?」
「タケシだよ!」
「ん?」
「タケシが、地下にある真・四天王に逢うって・・・」
「お前も知ってるかどうかは知らんが・・・そんなものはない!街のジプシーたちが作った妄想だ!」
「なら、街の先人たちは何を見たんだ?」
「なに!」
「あの日、街のじじぃたちは4人の神を見たと言う・・・俺がガキの頃、聞いた覚えがある。」
「あの日じゃと?」
「核が撃ち込まれた日だ・・・」
すると、更に兵が一人入って来ると、久弥の耳元で何かを話した。久弥の顔色が変わる。
「今度は何だ!?」
「こいつを地下6に連れて行け!」
「何っ!」驚くヒデ。
ジプシャン軍鹿島台新本部。寛子の前に、鈴木艦長の姿があった。寛子の後ろには犬飼参謀の姿もある。
「それで?」と寛子。
「はい・・・てっきり本部の命令かと思い・・・」と鈴木艦長。
「それでタケシは?」
「ストラトスの認識信号は消えてしまい・・・」
「装甲車1台が松島基地に到着したと報告もあります。」と横に居た犬飼。
「タケシめ・・・」
「内部より、調べさせます。」
「よかろう。鈴木と言ったな。下がるがよい。」
「ははっ!」
「古川に戻り、艦の修理だ。だいぶやられたのだろ?」
「申し訳ございませんでした。」
鈴木が後ろを振り向いた瞬間だった。寛子は銃を取り出し、鈴木を後ろから射殺したのだ。
「犬飼!片付けてちょうだい!」
「ははっ!」
「さて・・・次はツヨシか・・・」不敵な笑みの寛子。