その16 銃を継ぐ者
「誰が死んだんだ!?」
ロクはバズーの細い声だけで気がついた。
「なっ!?」
驚いたのは、ダブルも一緒だった。
「バズー・・・?」
ロクはバズーの癖に気づいていた。いつも聞きたくない報告はバズーはこんな顔をし、声が細くなる事を・・・ロクは覚悟を決め、再度バズーを問い詰める。
「バズー!?誰だ!?」
バズーは下を向いていた顔を2人に見せた。バズーの目には光るものがあった。
「バズー!?」
「・・・・・・」二人はバズーに詰め寄った。
「ロク・・・それは・・・」
ポリス地下3階死体安置所。そこにベットに横たわり布を被された遺体が1体。ロクはその布を顔の方から取ろうとしていた。ロクは恐る恐る布をづらして行く。そこにいたのは、変わり果てた肌が灰色に変わっていた桑田の遺体だった・・・遺体は何も衣服は着けておらず、傷口もそのまま開いたままだった。ロクは桑田を見ると、一度大きなため息をついた。
「すまん。見つけた時は、既に瀕死の状態で・・・」とバズー。
バズーは既に涙目になっていた。下を向きロクを見れない状態だった。ロクも桑田を見ることが出来ず、一人天井を見上げていた。何かを堪えている様子だった。
「銃弾はジプシャンの弾だった・・・医務室に移動中に後ろから撃たれたようだ・・・」
「なつみ・・・」声にならないロク。
それは、ほんの数分前の出来事だった。
バズーがタケシを追って廊下を走っていた時、後方から一発の銃声が聞こえた。バズーは急いでその場に近づくと、仰向けになって横たわる、血の気の引いた桑田の姿があった。
「桑田ーっ!」
「バ、バズーさん・・・?」
「撃たれたのか!?」
「そ、そうみたい・・・」
「い、今、運んでやる!しっかりしろ!」
バズーは、慌てて桑田を起こし自分の背中にまわして担ぎあげた。すると走って医務室に向かった。
「しっかりしろよ!すぐ関根さんに見て貰うからな!」
「う、うん・・・」
「手もこんなに・・・誰がこんな事を?指令室を何で出たんだ!?」
「ご、ごめんなさい・・・」
「も、もういい・・・しゃべるな!」
バズーは桑田の様子を察した。大量の出血にバズーは慌てていた。
「バ、バズーさん・・・」と桑田。
「な、なんだ?」
「私が死んだら・・・これをロクさんに・・・」
桑田は右手で、バズーの前に白い拳銃を出した。桑田のワイルドマーガレットだった。
「馬鹿言うな!お前が死ぬか!?」
「これを・・・ロクさんがよく使う・・・左胸に・・・」
「縁起でもない事言うな!必ず助かる!助けてやる!」
「お願い・・・ね・・・ロクさんへ・・・」
桑田は拳銃を落としてしまう。バズーは慌てて桑田の様子を見るため、桑田を背中から下ろす。
「しっかりしろ!!死ぬな!!桑田!!」
しかし、もう桑田は動く気配がない。バズーは桑田を床に横にすると、心肺蘇生運動を行った。
「死ぬな。死ぬな!死ぬな!!」
バズーは一心不乱に桑田の胸を押し始めた。
「なんでロクがお前を指令室勤務にしたか、分かってのか桑田!?」
バズーは涙声になり、心肺蘇生を続ける。
「お前を心配して・・・お前を死なせたくなくって・・・お前の事を愛してるから・・・」
すると桑田の動かなくなった顔から一筋の涙が流れてくる。
「だから死ぬな!生きろ!!桑田!」
しかし、桑田は二度と目を開けることはなかった。
バズーは耐えられなくなり、大粒の涙を流し始めた。
「死ぬ間際・・・これをロクに託すと・・・」
バズーはロクに、桑田のワイルドマーガレットを渡す。それを無表情で受け取るロク。
「ロクの一番使う、左脇に入れて欲しいと・・・」
バズーは感極まって、大声で泣き始めた。ロクはそんなバズーを見て、バズーの顔面を拳で張り倒した。その場でしゃがみ込んでしまうバズー。
「プロジェクトソルジャーが・・・人前で泣くんじゃねぇ!」
「す、すまん・・・」
ロクは再び桑田の遺体に近づいた。再びロクは桑田の傷口を見る。唇を噛み締めるロク。するとロクは桑田の遺体に語り始めた。
「お前の銃と、この未来は俺が引き継ぐ・・・」
ロクは桑田の遺体に顔を近づけると、桑田の顔にそっとキスをした。すると、ロクは一人その部屋を出て行った。
ヒデが2名の兵に連れられ手錠を掛けたまま、地下6階に連行されていく。それに出くわすダブル。
「懐かしい顔だな・・・」とダブル。
「ダブルか・・・?」
「ふざけんな!!」
ダブルは手錠をしたヒデをいきなり殴りつけた。ヒデは後ろに吹っ飛び倒れてしまう。更に殴り付けようとしたが、周りの兵に止められてしまう。
「手錠した捕虜を殴ってもいいのか?」
「殺されなかっただけありがたいと思え!」
「ふん・・・」
「いつから、タケシ隊になった!?」
「そのタケシはどこだ?」
「死んだよ・・・首を切られてな・・・」
「・・・誰がやった?」
「ロクだよ・・・」
「まさか・・・あの小僧が・・・」
「今のロクは・・・お前の知ってるロクじゃない!」
「出来るわけないじゃないか・・・あの小僧が・・・出来るわけねぇだろ!?」
ヒデは笑いながら2名の兵に連れられダブルの元から離れていく。連れて行かれながらヒデは何度も後ろのダブルを振り返りながらこう叫んだ。
「俺は信じないぞ!!ロクに人なんか殺せるか!!あんな小僧に!?俺は・・・!」
ヒデはダブルが見えなくなるまで、廊下で叫んで行った。
「裏切り者が・・・」
ロクは一人、南ゲート近くの塀の上にいた。すでに太陽は西に沈み掛かっていた。




