表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/15

8:児童相談所のマホ その2

次の日も、マホとユウコはぬり絵を広げていた。


「これは、赤色」


ユウコが赤い色鉛筆をマホに差し出した。


「……あかいろ?」


マホが首を傾げる。


「そう、赤色。これは、青」


ユウコは青い色鉛筆を取って渡した。


「……あお……」


マホはゆっくりと繰り返した。

ユウコは嬉しそうに笑った。


「そうそう!上手!」


会話を重ねていくうちに、二人は、お互いの名前がマホとユウコだと分かった。

言葉は少しずつ、マホの中に染み込んでいった。


午後、職員に連れられてマホは別室へ向かった。

そこには言語の専門家が待っていた。


「こんにちは」


固まったマホに向かって、ゆっくりと身振りを付けて話しかけた。


「私は、ゴトウです」

「あなたは?」


「……マホ」


「マホ。いい名前だね」


ゴトウは笑顔を見せ、

紙に『Maho』と口ずさみながら書いて見せた。


「これはマホだよ」


マホは文字をじっと見つめて首を傾げた。

ゴトウはペンをマホに渡した。


「マホって書ける?」


マホは自分の知っている文字を名前を口ずさみながら書いた。


「……これは驚いた。初めての言語だ」


ゴトウはマホが書いた文字に発音記号を書き加え、

紙をファイルにはさんだ。

そして、別の用紙を取り出すと絵を描き始めた。


 花、木、人。


「これは?」


花を指差し、眉を上げて“質問”の表情を作る。


マホはペンを走らせ、

自分の言葉で「花」と答えた。


ゴトウはそれを繰り返し、

発音を真似してみる。


マホは笑った。

ゴトウも笑みを返しながらメモを取る。


「いいね。じゃあ、これは?」


木を指差す。

そんなやりとりを何度か繰り返した。


「ありがとう、マホ。

 今日はたくさん話してくれて嬉しかったよ」


ゴトウは紙を花の形に折り、マホの言語で「花」と言って、

それをプレゼントした。


「ありがとう」


マホは笑顔で受け取って、自分の部屋に戻った。


――マホが去った部屋で、ゴトウは職員にこう伝えた。


「前例のない案件だと思います。調査には時間がかかりそうですね」

「そうですか……」


職員たちは児童養護施設への打診を始めた。


――部屋に戻ると、ユウコが待っていた。


「マホ、おかえり。今度はこれ読んであげるね」


ユウコは絵本を開き、

ゆっくりと読み始めた。


「むかしむかし、あるところに――」


マホは初めて聞く言葉の響きに耳を傾けた。

ページの中のカラフルな絵が、魔法のように見えた。

マホは心の中で思った。


(ユウコと友達になれて、よかった……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ