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6:警察署のマホ

パトカーに揺られて警察署へ着くと、

マホは小さな保護室に案内された。


「ここで少し待っててね」


警官は優しい声で言った。


マホは椅子に座って周りを見渡した。

部屋は暗く、冷たく、

どこか閉じ込められたように感じられた。


「じゃあ、写真を撮るよ。怖くないからね」


戻ってきた警官は、黒い箱のような機械をマホに向かって構えた。

マホは得体のしれない機械に身を固めた。


「大丈夫、大丈夫。ただのカメラだよ。

 ピカッと光るけど痛くないからね」


パシャッ。


光が瞬いた瞬間、

マホは思わず目を閉じて、肩をすくめた。


「ごめんね、驚いたよね。

 これで迷子のリストと照らし合わせてみるから」


警官はパソコンに向かい、

しばらく画面を確認した。


「……ヒットなし、か。

 弱ったな、届け出前かな……」


警官の困った顔がマホの不安を増幅させた。


「マホちゃん、いくつ?」


マホは首を振る。


「お家はどこ?」


また首を振る。


「お父さん、お母さんは?」


マホは黙って、うつむいた。

警官はため息をついた。


「……今日はもう遅いし、続きは明日にしよう。

 お腹空いてるだろう? これ、食べて」


机にサンドイッチとジュースが置かれた。


「ゆっくりしててね。何かあったら呼んで」


警官が出ていくと、

部屋は静寂に包まれた。


マホは食べ物に目もくれず、

ベッドにうずくまり、

小さく震えながら瞳を閉じた――


翌朝、マホは尿意を感じて目が覚めた。

だが、どうすればいいのか分からない。


部屋をそっと出て、

近くにいた婦警に声をかけた。


「……あの……トイレ……」


聞き慣れない言葉に婦警は戸惑った。


「え? ごめん、もう一回言ってくれる?」


マホは必死に身振りで伝えようとした。

婦警はハッとした。


「あ、トイレ? トイレ行きたいの?

 こっちだよ。ついておいで」


だが、トイレの前に立ったマホは固まった。

見たことのない設備。

どう使うのか分からない。


「……もしかして、まだ一人でできないの?」


婦警は勘違いをし、

優しくマホを手伝ってやった。


「よし、えらいね。戻ろうか」


婦警は昨日の担当警官に報告した。


「ねえ、あの子……外国語を話したよ。

 全然聞いたことのない国の言葉」

「外国の子……? 捜索願いをもう一度当たってみるか……」


――部屋に戻ったマホは、

ようやく空腹を感じた。


机の上のサンドイッチを手に取る。

だが、包装がされており、開け方が分からない。


マホは両手でサンドイッチを様々な方向へ回転させてみた。

爪で引っかき、

歯で噛み、

なんとか破って開けることができた。

初めて触るやわらかい感触に驚きながら、一口かじる。


「……!!」


マホは目を見開いた。

思いがけない美味しさに、

サンドイッチを凝視する。


そして残りを一気に食べた。


のどがかわいたので、ペットボトルに手を伸ばす。

蓋を引っ張ったが開かない。


「……ひらけ!」


マホは思わず魔法を使おうとした。

しかし、魔力は発動しなかった。


「……」


マホは自分の気持ちが沈んでいくのを感じた。


――もう、魔法はなくなってしまったのだ


しばらくして、

昨日の担当警官が戻ってきた。


「おはよう、マホちゃん。

 これ、おにぎりとお茶。食べられるかな?」


マホはおにぎりを見つめ、

首を横に振った。


「じゃあ、またあとで。お腹すいたら食べてね」


警官は机の上におにぎりとお茶を置いた。


「さてさて、君の言葉……翻訳できるか試してみよう」


警官はスマホを取り出し、

翻訳アプリを起動した。


「じゃあ、これから絵を見せるから、

 マホちゃんが知ってるものがあったら教えて」


警官は絵本を広げ、マホに見せていった。


「これ、何かな?」


マホは絵を見て答えた。

「……りんご(マホの言語)……」


アプリはしばらく考え――


エラー。


「ダメか。 もう一回」

「……りんご(マホの言語)……」


エラー。


「……全然翻訳できないな……

 どこの国の言葉なんだ……?」


警官は困ったように頭をかいた。


「午後になったら、児童相談所の人が迎えに来るからね。

 そこでもっと詳しく見てもらおう」


そう言って部屋を出ていった。


――午後

スーツ姿の女性が2人、部屋に入ってきた。


「こんにちは、マホちゃん。

 これから私たちと一緒に児童相談所に行こうね。

 そこでお父さんお母さんを待つんだよ」


マホは手を引かれ、不安そうに立ち上がった。


こうしてマホは、

児童相談所へと移動し、

新たな生活へ踏み出すことになった――

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