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13/15

13:夏祭りのマホ

夏休みが近づいたある日の夕方。

授業が終わり、マホとトモミとアンナは一緒に帰り道を歩いていた。


「ねえマホちゃん! 今度の土曜日、夏祭り行かない?」


トモミは目をキラキラさせて言った。


「夏祭り?」

 

マホは首を傾げた。


「屋台とか花火とかあるんだよ! 楽しいよ!」


アンナも嬉しそうに言う。


「マホちゃん、行ったことないでしょ? 一緒に行こうよ」


トモミが笑った。

夏祭りのことはよく分からなかったが、二人となら楽しそうだ。


「うん、行きたい」


「よし決まり! 土曜の夕食の後、集合ね!」


――土曜日の夕方。

 夕食後、トモミとアンナは待ちきれないかのようにマホの腕を引っ張った。


「よし、行こう!」

「楽しみ~!」


三人は並んで速足で歩き、大きな川沿いの公園へ向かった。


たくさんの提灯が揺れ、無数の屋台から美味しそうな匂いが漂い、

人々の笑い声が響く。


「わあ……」


マホは思わず声を漏らした。


「すごいでしょ? これが夏祭り!」


アンナが胸を張る。

マホが人ごみの中を歩くのに慣れ始めた頃、


「たこ焼き買って食べよっか」


トモミが屋台を指さして言った。


「いいね、三人で食べよう!」


アンナがはしゃいだ。


たこ焼きの屋台の前で並んでいると、

不意に辺りが明るくなった。

明るくなった方に目をやると、

少し離れた焼きそばの屋台から炎が上がっていた。


「うわっ、火事だ!」

「危ない、離れて!」

「やばっ!」


店主も周囲の人も慌てている。

火は意外と大きく、風が吹けば更に広がりそうだった。


「み、水っ!水ないの?」


トモミとアンナが取り乱す。


どうしようもなく火の勢いが強まっていく中、

マホは両手を組んで、慌てて魔法を唱えた!


(水!……水よ!)


空気が震え、

バケツをひっくり返したような水が、突然屋台に降り注ぐ。


「うおっ!? 水が!」

「なんだなんだ!?」


広がっていた炎はあっという間にかき消えた。


誰もが、何が起こったのかを理解できず、戸惑っていた。

水浸しになった屋台だけが、シューッという音を立て続けている。


「……と、とにかく消えてよかったね」


トモミとアンナはお互いを落ち着かせるようにして言い聞かせた。


「そ、そうだね、よかった」


マホはどきどきしながら、同調したフリをした。


(魔法は使えたけど……水が多すぎちゃった……)


その後、三人は無事にたこ焼きを購入し、

堤防の土手に並んで座って、分け合って食べた。


マホは図鑑で見たグロテスクなタコの食感に戸惑いながらも、

アツアツで濃いソース味のたこ焼きを、「まあまあ美味しい」と感じた。


「だめだ、今度は甘いの食べたくなっちゃった!かき氷買ってくる!」


アンナが席を立った。


「もうすぐ花火、始まるよ!」

「うん、急いで買ってくる!」


しばらくして、アンナがかき氷を持って駆け戻ってきた。


「ふふふ、イチゴ味しか勝たん」


アンナがスプーンをみんなに渡す。


「ありがとう」


三人はそれぞれかき氷をすくって口に運んだ。


「うーんっ!!」

「うま!」

「冷たい!」


マホは、冷たい食べ物なんて初めてで驚いてしまった。


「あはは、氷なんだから当たり前でしょー!」


二人がうれしそうに笑うので、マホも嬉しくて笑った。


マホは夢中でかき氷を食べた。

甘い氷が舌の上で溶ける感覚が楽しくて、

何度もスプーンを運んだ。


――夕闇が深まってきた。


「そろそろだよ、マホちゃん」

 トモミが言った次の瞬間、


ドンッ!!


「!!」


マホは驚いて空を見た。


大きな光の花が咲いている。

花は次々に、夜空に咲いていく。


「……」


マホは口を開けたまま見とれていた。


「すごい!きれい!」

 トモミがはしゃいで声を上げた。


(……きれい……)


マホはしばらく黙って花火を見つめた。


夢で見た、あの紋章の光のように思えて、マホの目からは涙がこぼれた。


花火に夢中の二人にばれないように、

マホは隣で涙をぬぐい続けた。

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