13:夏祭りのマホ
夏休みが近づいたある日の夕方。
授業が終わり、マホとトモミとアンナは一緒に帰り道を歩いていた。
「ねえマホちゃん! 今度の土曜日、夏祭り行かない?」
トモミは目をキラキラさせて言った。
「夏祭り?」
マホは首を傾げた。
「屋台とか花火とかあるんだよ! 楽しいよ!」
アンナも嬉しそうに言う。
「マホちゃん、行ったことないでしょ? 一緒に行こうよ」
トモミが笑った。
夏祭りのことはよく分からなかったが、二人となら楽しそうだ。
「うん、行きたい」
「よし決まり! 土曜の夕食の後、集合ね!」
――土曜日の夕方。
夕食後、トモミとアンナは待ちきれないかのようにマホの腕を引っ張った。
「よし、行こう!」
「楽しみ~!」
三人は並んで速足で歩き、大きな川沿いの公園へ向かった。
たくさんの提灯が揺れ、無数の屋台から美味しそうな匂いが漂い、
人々の笑い声が響く。
「わあ……」
マホは思わず声を漏らした。
「すごいでしょ? これが夏祭り!」
アンナが胸を張る。
マホが人ごみの中を歩くのに慣れ始めた頃、
「たこ焼き買って食べよっか」
トモミが屋台を指さして言った。
「いいね、三人で食べよう!」
アンナがはしゃいだ。
たこ焼きの屋台の前で並んでいると、
不意に辺りが明るくなった。
明るくなった方に目をやると、
少し離れた焼きそばの屋台から炎が上がっていた。
「うわっ、火事だ!」
「危ない、離れて!」
「やばっ!」
店主も周囲の人も慌てている。
火は意外と大きく、風が吹けば更に広がりそうだった。
「み、水っ!水ないの?」
トモミとアンナが取り乱す。
どうしようもなく火の勢いが強まっていく中、
マホは両手を組んで、慌てて魔法を唱えた!
(水!……水よ!)
空気が震え、
バケツをひっくり返したような水が、突然屋台に降り注ぐ。
「うおっ!? 水が!」
「なんだなんだ!?」
広がっていた炎はあっという間にかき消えた。
誰もが、何が起こったのかを理解できず、戸惑っていた。
水浸しになった屋台だけが、シューッという音を立て続けている。
「……と、とにかく消えてよかったね」
トモミとアンナはお互いを落ち着かせるようにして言い聞かせた。
「そ、そうだね、よかった」
マホはどきどきしながら、同調したフリをした。
(魔法は使えたけど……水が多すぎちゃった……)
その後、三人は無事にたこ焼きを購入し、
堤防の土手に並んで座って、分け合って食べた。
マホは図鑑で見たグロテスクなタコの食感に戸惑いながらも、
アツアツで濃いソース味のたこ焼きを、「まあまあ美味しい」と感じた。
「だめだ、今度は甘いの食べたくなっちゃった!かき氷買ってくる!」
アンナが席を立った。
「もうすぐ花火、始まるよ!」
「うん、急いで買ってくる!」
しばらくして、アンナがかき氷を持って駆け戻ってきた。
「ふふふ、イチゴ味しか勝たん」
アンナがスプーンをみんなに渡す。
「ありがとう」
三人はそれぞれかき氷をすくって口に運んだ。
「うーんっ!!」
「うま!」
「冷たい!」
マホは、冷たい食べ物なんて初めてで驚いてしまった。
「あはは、氷なんだから当たり前でしょー!」
二人がうれしそうに笑うので、マホも嬉しくて笑った。
マホは夢中でかき氷を食べた。
甘い氷が舌の上で溶ける感覚が楽しくて、
何度もスプーンを運んだ。
――夕闇が深まってきた。
「そろそろだよ、マホちゃん」
トモミが言った次の瞬間、
ドンッ!!
「!!」
マホは驚いて空を見た。
大きな光の花が咲いている。
花は次々に、夜空に咲いていく。
「……」
マホは口を開けたまま見とれていた。
「すごい!きれい!」
トモミがはしゃいで声を上げた。
(……きれい……)
マホはしばらく黙って花火を見つめた。
夢で見た、あの紋章の光のように思えて、マホの目からは涙がこぼれた。
花火に夢中の二人にばれないように、
マホは隣で涙をぬぐい続けた。




