10:児童養護施設のマホ
児童養護施設の玄関を入ると、落ち着いた雰囲気の女性が2人待っていた。
「ようこそ、マホちゃん。私は施設長のマサコです」
「私はスタッフのホシです」
マサコさんは、ゆっくりとした動作で
マホの目線に合わせてしゃがみ込んだ。
「ここではね、みんなで暮らすの。
朝ごはんと夕ごはんは食堂で食べるよ」
ホシは紙を取り出し、
簡単な絵を描きながらもう一度説明した。
食堂の絵。
ベッドが四つ並んだ部屋の絵。
そして、学校の絵。
「昼間は“学校”というところへ行って、勉強をするの。
ここから歩いて行けるよ」
マホは絵をじっと見つめ、
なんとなく理解したように頷いた。
「うん、いい子ね。困ったことが合ったら、いつでも声をかけてね」
「じゃあ、部屋に行こうか」
ホシさんが案内してくれた。
階段を上がり、廊下を進むと、
明るい部屋に着いた。
「ここがマホちゃんの部屋。
今は二人が学校に行ってるからいないけど、
マホちゃんを入れて三人で使うんだよ」
ホシさんはベッド、机、棚を指差しながら説明した。
「これがマホちゃんのベッド。
ここに着替えと生活道具を置いておくね」
袋の中には、
新しい服、歯ブラシ、タオル、ノートなどが入っていた。
「じゃあ、夕方までここで遊んでてね」
ホシさんは遊戯室へ連れて行き、
マホを残して去っていった。
マホは部屋に置かれたおもちゃや本を
興味深そうに手に取って過ごした。
夕方。
玄関の方から賑やかな声が聞こえてきた。
「ただいまー!」
「お腹すいたー!」
子どもたちが遊戯室に流れ込んできた。
「新しい子がいる!」
「女子だ!」
「マホっていうんだって!」
「ガイジンだって!」
次々に取り囲まれ、
マホは目が回りそうになった。
やがて夕食の時間になり、みんなは揃って食堂へ移動した。
食堂には温かい匂いが広がっていた。
「いただきます!」
子どもたちが声をそろえる。
マホも真似して小さく言った。
ここのご飯もとても美味しく、マホは笑顔になった。
部屋に戻ると、
二人の女の子がマホに近づいてきた。
「マホちゃん、わたし、トモミ。よろしくね」
髪を結んだ女の子が手を握った。
「アンナだよ。明日から同じ学校に行くんだって」
もう一人の女の子が笑った。
マホは少し戸惑いながらも、
小さく頷いた。
「うん、よろしくね!」
二人は明るく笑い、
マホの不安を少しだけ溶かしてくれた。
次の日の朝。
ホシさんに連れられて、マホは学校へ向かった。
「ここが学校だよ。
マホちゃんは“特別支援学級”で勉強するからね」
教室の扉が開く。
「お友達を紹介します。今日からみんなと一緒に勉強することになった、マホさんです」
先生がクラスメイトに紹介する。
マホのクラスは8人のクラスだった。
「みなさん、仲良くしてあげて下さいね。
ここではゆっくりでいいからね」
マホは緊張しながらも、
新しい席に座った。
こうしてマホの、
現代での学校生活が始まった。




