おてつだい1「Virtual依存」後編
「もしもし、御金ギブです」
聞き馴染んだ名前のはずなのに動揺してしまう伊村。
いかんいかん、自信が大事だったんだ。こんなことで狼狽えてはいけない、
平常心、平常心でいいんだと自分に言い聞かせる。
「もしもし、伊村です、、あ、あのさ」
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そこから先は点々拍子だった、今までためらっていたのがあほらしくなるほど軽快に会話が進んだ。まるでずっと昔から知っていたかのような、このように二人が出会う運命であったかのように。
「ふーふふーん」
とってもご満悦な様子である。どうやら明日二人で遊ぶ約束をありつけることができたらしい。
心の持ちようの効果というのは絶大で今まで面倒くささが勝り住んでいた部屋をゴミまみれにしてしまうような人間だった伊村が今はこの部屋にいたとしてもなにも違和感のない人間になっていた。
やせ形でさえない見た目だった体は筋肉が張り、見るものを不快にしていたような顔面は世間体でイケメンといえるような風貌へと変化していた。
ただ、一つ心残りがある。
「そ れ 以 上 の 関 係 に な っ た ら ダ メ だ よ」
この言葉の真意、それだけが心残りだった。
グダグダ考えたって仕方がない。今の自分は何でもできる、いわば無敵の状態なんだ。何も心配はいらない。今は明日に備えてひたすら自身を高めること、これが最重要事項だ。
この日は時間が過ぎるのがとても速かった。すぐに床にはいり最高のコンディションで会う。
伊村は昨日十分に寝ることができなかったをの取り返すかのように熟睡した。
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約束の当日になった。伊村は合う時間より数十分早くつき彼女の到着を待つ。
今日の服装はいままでとても着たことのないような、かつての自分にはとても似つかわしくないようなものであった。どうやらクローゼットの中の衣類まで変えることができるらしい。
全く何でもありだなと感心していたときであった。
人ごみの向こうから見慣れた姿がこちらのほう向かって手を振りやってきた。
まるでとても現実にいることが許されるはずがないほどの妖艶な姿。それでいていっぱい見てきた親しみのある姿。
Virtual動画配信者「御金ギブ」の姿が現実ベースでそのまま立っていたのだ。
「おまたせしました!伊村さん!」
この声、間違いない、目の前にいるこの女性はほんとうに「御金ギブ」であるということは疑いの余地もなかった。
正直伊村は驚いていた。
この手の配信者の中の人(そんなものは存在しない)にありがちな外面の絵だけで本体はブ〇イクなんてのは耳にタコができるくらい聞いてきた。
だからこそ目の前の普段は二次元でお目にかかれる存在が三次元で存在しているという現象は想定をはるかに超えた事態であったからだ。
しかし、今ここにいる伊村はかつての情けない伊村ではない!自信に満ち!容姿端麗!聖人君子!欠点など何一つない完璧な状態である。
「うんうん、僕も今来たばかりだよ。それじゃいこっか!」
そこからというと事は点々拍子に進んだ。初めての対面とはとても思えない、まるで恋人同士のデートのように楽しい時間を過ごすことができた。
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レストランの中、二人は高級料理とともにお酒をたしなむ。
とてもかつての男の人生では想像できないような状況だ
お互いにアルコールが回り距離が近くなる。
「依くん、、、」
言わなくても表情で伊村は察した。わかる、このあともまだ時間はあるかと、
何も言わず依は御金の頭と腰に手を添え唇を合わせる。
今までにない感覚が神経に響き渡る。
こんな感覚だったなんて、、、、、
これは、いけるのではないだろうか?
よこしまな考えが伊村の脳裏によぎる。
「ギブ、、いこっか、、、」
お会計を既に済ませ店員さんの「ありがとうございました」を背に店を出て固く手を組み自宅へと向かう。
まさかこんなにうまくいくなんて、おととい以降、あいつの能力を疑ったことは一度だってない、
しかし、ここまでうまくいくとなるとなんだか気持ち悪さまで感じてくる。
だがもう彼を止めれるものは何もない。彼は無敵になったのだから。ブレーキを踏む必要なんてない。アクセルを踏み続けたとて何の問題もないのである。
玄関の扉を開け、部屋に入った。
熱い静寂が訪れた。
そして、、、
そのまま二人は
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そこから先は、、
あまり憶えてない、、
シャワーにでも入ったかもう一回を共に過ごしたかなんて些細なことは彼にとってどうでもよかった。
ただ一つ、確実に言えることは、男は推しと、いや、彼女と友人以上の関係になれたことであった。
三回を共に過ごした後だったろうか、
事の後に言葉を発したのはギブのほうであった。
「依、、好き、、」
「、、、、、ギブ、、、、」
そういった会話を何度か続けた後、伊村は一日の疲れもあり目の前が暗く染まってしまった。
眠りについてしまったのである。
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「あーあ、超えちゃったね関係」
「私、ちゃんと言ったのに」
「でも、よかったじゃん、今のあの人人生の中で一番幸せそうだね」
「うん、間違いない!私がいなかったこんなに幸せそうになるなんて絶対できなかったに違いないわ」
「幸 せ な ら い い よ ね ?」
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夜が明け、外から鳥の鳴き声が聞こえた。それ目覚ましに男は目を開く。
体のあちこちが痛い。昨日は激しかったからな、筋肉痛の1つや2つできたところで何らおかしくはない。特に尻に違和感があるように感じた。
、、、、そんなに昨日そこに力入れる場面あったか?
思い直せば今の痛みも筋肉由来じゃない気がする。なんなんだこの違和感は、、、、
おぼろげな感覚からはっきりとした実感へと変わり周りを見渡した。そこは昨日までいたラグジュアリーな空間とは異なりゴミまみれで腐臭漂う汚部屋であった。
下半身の違和感は筋肉痛ではなく単に固い床に長い間寝ていたことによるものであったのだ。
「な、なにがどうなってるんだよ!!」
伊村は急いで体を起こし洗面所の鏡に向かった。
鏡に映った姿は昨日と同じ自信に満ちた容姿端麗の伊村依であった。
「よ、よかった、魔法はまだ切れてない!そ、そうだよ!今までがうまく行き過ぎたんだ!その分部屋で帳尻合わせが来たんだ!そうに違いない!」
「そう、帳尻合わせ、約束を破ったあなたによる埋め合わせだよ」
「っ!」
振り返る必要はなかった。鏡には頭しか映っていないがその声の主が誰かなんて確認するまでもなくわかっていたからだ。
「わたし、言ったよね、それ以上の関係になったらダメだって、いったよね」
何がおかしいのだろうか幼女は男が焦る姿を見て「ぷーくすくす」という擬音のような笑い声をあげながら言った。
「だ、だまれ!俺はこの姿のままだ!お前の魔法は俺のものになったんだ!そうだ!そうに違いないない!」
今にも腰を抜かしてしまいそうな状況下でも言葉を言い返す精神力、流石は騎士である。しかし、観月は伊村の精神的ライフ数値がもう少ないことを見越しているのだろうか。さらなる追い打ちをかける。
「そう思うのは勝手だけど、大丈夫なのかい?大事な人、ものすごく容態が悪そうだよ」
言葉が言い終わるより先に伊村の体は動いていた。ゴミをかき分け大事な人が寝ている床に直敷きの布団へと向かう。
彼女の容態は非常に悪い状態であった。体は乾き声にならないような声をあげている
「た、、、たす、けて、、、、、し、、しぬ」
「大丈夫だ!安心しろ!今助けてやるからな!」
愛する人からの安堵の言葉、さぞかし頼もしいものであろう。
しかし、次に彼女から発された言葉によって今までの彼の築き上げてきた自信をすべて崩すような爆弾のスイッチとなった。
「こ、、、、こないで、、、、、く、、くるなぁぁあああああああ!」
カラカラの喉から発せられた最高音が部屋全体に響き渡った。
大声の後の数秒の刹那、その音をさらに上回る轟音が部屋中に鳴り響いた
ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!
ドンドンドンドン!!!!!!!!!!
「〇〇警察だ!伊村依!そこにいるのはわかっている!貴様は完全に包囲されている!おとなしく出てきなさい!」
「お前を殺人、誘拐、監禁、その他多くの凶悪犯罪の疑いで逮捕しに来た!今すぐ出てこい!」
玄関のドアも窓の前にも多くの警察がおりとても逃走できる状況ではないこと明白だった。
十秒ほどたったのちドアも窓も破られ何人もの警察官が汚部屋の中に流れ込んでくる。
伊村は手練れの警察官たちに成すすべなく逮捕されたのであった。
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「午前〇時〇分、伊村依を逮捕。直ちに現場検証を行う」
「了解。こちら〇〇警察署の〇〇。伊村の身柄を確認、早急に取り調べを行う」
「了解」
連絡を済ませたのち現場検証を開始する警察官たち。ゴミがあまりにも多かったので少し難儀したがさすがはプロの仕事である。右も左もわからないような部屋の状況は改善し、今すぐに検証ができる状態へと整えられた。
「あぁ、これは惨いですね、」
「被害者の体温からおおよそ死後1日が経っていることが分かった、DNA鑑定で遺体の身元を調べる必要がありそうだ」
「もしかすると人気Virtual配信者の行方不明と関係があるかもしれませんね」
「それだけじゃない、昨日の高級料理店大量殺人事件にも関係があるかもしれないぞ、しばらく休みは取れなそうだ」
「犯人はなぜこのような犯行に及んだのでしょうか?」
「さぁな、それは今警察署にいるやつらの仕事だ、俺たちは今の仕事はこうやって現場を検証するってあれ?」
「どうかしましたか?」
「いや、容疑者にも被害者にも合わない茶色の髪の毛が落ちてるだよ、人形の髪か?やけに艶々してんな」
「そういえば容疑者はおととい身元不明の幼女と接触を図っていたと防犯カメラの映像で判明してましたよね?ま、まさか」
「あぁ、もっと調べる必要がありそうだな、ここまでの凶悪犯だ、どの犯罪に手を染めていたかなんて数えればキリがないようなやつだろうしな」
「ひ、ひえーーー」
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警察署取調室にて
「だーかーら!俺はなにもやってない!ギブとは恋人同士だったんだ!レストランの殺人事件!?そんなことやった記憶は一切ない!」
激高し理解不能の主張を何度も繰り返し続ける伊村、しかし相手側も負けず劣らずの勢いである。
「だまれ!防犯カメラに証拠はすべて映っている!言い訳は無用だ!間違いなくお前が犯人なんだよ!それに今言ったこと以外にお前がおととい小学生くらいの女の子と接触を図っていたこともわかっているんだからな!」
「そ、そうだ!そ、そいつだ!そいつが犯人だ!そのガキがおとといいきなり電話番号の紙を渡して俺をそそのかしたんだ!お、おれは、おれは」
動揺しすぎのためなのか自己保身のためなのか明確な証拠があるにもかかわらず子供が犯人などと供述をしだす始末。
同じ方法ではキリがないと踏んだのか今度は落ち着いた口調で諭すようにこう言った。
「はぁ、お前の言った電話番号が書かれた紙だがよ、鑑定の結果お前の指紋だけが確認された、女の子については今も捜査中だ。やらされたって主張には矛盾が生じてるんだよ。いずれにせよお前は償っても償いきれないほどの罪状が問われているんだ。変な主張を繰り返すよりはまずは罪を認めて向き合うほうがいいと思うんだがな」
「だって俺は本当に、、、」
こん!こん!
「失礼します!警部!署長がお呼びです。お急ぎとのことです」
「あーわかった、すぐに行く、、、まぁ少しは頭冷やせよ。」
そういって取調の警部はいったん席を外し小走りで署長のもとに向かった。
「やってない、ぜったいにやってない、ギブ、ギブは無事なんだろうか、、、気づいてあげられなくてごめん、、、」
「謝らないで!あなたは何も悪くないわよ。私あなたと過ごせたこの一日とっても幸せだったもの」
「ぎ、ギブ!」
魔法は切れてなんていなかったのだ。なんでもできる魔法の思いの強さが愛する人にもう一度会いたいという奇跡を叶えてくれたのだ!
「ギブ、もう絶対に離さない!」
「私も!あなたが一人で洗面台に向かっていったとき、とっても心細かったんだから」
「ああ!絶対に二度とそんな思いさせない!」
「ほんと!じゃあ約束のしるしに一つ私の言うことを聞いてほしいの」
「ああ!何でも言ってごらん!なんだって叶えてあげられるよ!」
だって、
今の僕は、間違いなく魔法を我がものとしたのだから
「そう、、、じゃあ」
そういってギブが顔をうつむき改めて顔を上げて
「償ってね、あなた自身で」
悪魔のような顔をしたギブの格好をした幼女がそう言った
「え?----------
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「ったくしょうもないことでいちいち呼ぶんじゃねぇんだよなあの署長はー」
「まったくですね、事件に重要なことが分かったのかと思って来てみれば夜道の散歩についてグダグダと喋っただけでしたものね。そういえば、夜道で思い出したんですけど容疑者の顔、おとといの防犯カメラと随分印象が違うように感じたんですけど」
「あぁ?捜査を欺くために急いで整形手術でもしたんじゃねーか?ま、それを含めて色々聞いてみるわ」
「そうですね、お願いします!それでは失礼いたします!」
「おー」
席を外していた警部が取調室の前まで戻ってきた。一呼吸置いた後扉を開け声をかける
「どうだ?ちったー話す気にはなったか?」
反応がない、それどころかさっきまではなかったような謎の異臭を感じる。
「おい!いい加減にしろよ!いつまでも黙秘してちゃあなんも進まねえぞ!」
そういって扉から身を乗り出し目を室内に向けた瞬間、、、
「な、、、、」
先ほどまで筋骨隆々で整った容姿の面影は嘘のように消えガリガリとやせ細り、髪はすべて抜け落ち干からび、血まみれになった全裸の男の死骸が横たわっていたのであった。
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「続いて速報です、昨日から行方不明となっていた人気Virtual動画配信者御金ギブさんの遺体が殺人の容疑で逮捕された伊村依容疑者の自宅で発見されたことが分かりました、警察は事件の関連性について調査を続けています」
「つづいて、、、」ブチッ
「友達作り、ある日突然難しく感じるようになたりするよねー、でもそれってその人のコミュニケーション能力の問題だけじゃないかもしれないよ」
「仮初だとしても、とってつけたようなステータスだとしてもそれは時に多くの魅力的な人を寄せ付けるものになるかもしれない」
「実際に今までの伊村さんの生き方じゃ絶対にできなかった幸せな人生を送れていたもの、この数日において彼は災難もあったけどそれ以上の幸福を受けることができていたわ!」
「わたし、人間が幸福を受けている姿を見ることがとても大好きだからここ数日の彼を見てわたしもとっても嬉しかった!」
しかし、、、、、、
「その分終わり方が少し酷すぎるんじゃないかって?」
「でも」
「幸せならいいよね?」




