おてつだい1「Virtual依存」 前編
このお話は前編、後編の二編で構成されております。
「世の中の人間ってのはほーんと頭のワルイ奴ばっかりでほーんとイライラしちゃう」
私の名前は『満月満代』《みづきみよ》この世の中の人間に悶々と苛立ちを覚えている9歳の天使(自称)!
今日も迷える子羊の悩みごとの解決を手助けしていくわよ!
え?こんな女の子になにができるって?
そこは心配ご無用!
どんなお悩み事だろうと揉め事だろうと私にかかれば一件落着なんだから!
私はただ愚かな人間たちの悩みが消えて幸せになってほしいだけ、、
ただそれだけなんだから。
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「あああああああ!!!!!!!!くっっそこのボケどもが!さっさと死ねよ!!!!」
男の名前は伊村依職業騎士(笑)の29歳
今日も今日とてお姫様を守るためにお仕事の従事しているらしい。
「ぎぶちゃんを馬鹿にするやつは俺が許さない!法が許そうが神が許そうが絶対に俺が天罰を加えてやる!生き地獄に合わせてやる!」
そう、彼はお姫様(推し)を偉大なる脅威から護って(レスバ)いたのだ。
「えへへ、あ!✟君の騎士✟アルデバランさん!赤スパ5万!今日も配信来てくれてありがとう!ほんと大丈夫!?破産しちゃうよ!昨日もスパチャしてくれたよね?私は皆が配信に来てくれるだけでとってもとっても嬉しいから無理はしちゃだめだよ!」
画面の向こうの推しが微笑んでいる。それだけで今日を生きてきた意義がある。生まれてきた意味がある。
「うへへへ、ギブちゃんが喜んでる。俺のスパチャで。かわいい♪」
伊村は喜びさらに優越感に浸る感覚に陥る
「しかも破産しちゃうよだって。俺のこと心配しちゃって。配信中だぞ!うへへ、そのうえ昨日のことまで覚えてくれてるなんて、絶対に俺のこと好きだよな、、いや、好きとまではいかなくても少なくとも絶対にリスナーの中では一番俺に気があるに決まって、、、、たりして」
暗い部屋の明るいノートパソコンに一人、男はノリツッコミをしていた。悲壮感漂う寒いゴミまみれの一室とは異なり彼の心は温かいお花畑で満たされているようである。
ただ、
「ただ、一度でいい、一度でいいんだ。ギブちゃんと友達になれたらいいのにな」
「へーこんな明るい箱に文字を打ち込みまくることがそんなに楽しいんだ、かわった人だねあなた」
「っっ!!!!!!!!」
突如として静寂とした空間に異分子が出現した。
幼女である。
比喩表現などではなくがちのマジで幼女である。
茶髪に短めのツインテール、そして赤いランドセル、服はどこかの学校の制服であろうか?フォーマルな服装をしている幼女が突如として現れた。
「、、、な、なんなんだお前!ていうかどっから入ってきた!」
あまりに唐突の出来事に男は驚きを隠せず先ほどのノリツッコミなど比較にならない速さで怒涛のツッコミを入れる。
「ふ、不審者だ!警察!けいさつーーーー!」
動揺を隠せずに慌てふためいている大人の男とは裏腹に幼い女の子の心は非常に落ち着いている。
「あなたさぁ、この状況で警察を呼んでみなよ、捕まるのはあなたのほうでしょ?」
まったくもってその通りである。しかし、冷静な精神力はそうそう長続きしなかったらしい。
「それになにここ、きったな。くっさ。ちょっと、せめてレディを呼ぶならもう少しちゃんとした場所にしなさいよ」
流石の精神力をもってしてもこの汚部屋による精神汚染攻撃をかいくぐることは不可能だったらしい。
そこからしばらく罵詈雑言の暴言ラッシュがこのきたねぇ一室で鳴り響いた。
だが、幼女がランドセルの中からリコーダーを取り出し、思いっきり息を吹き込み巨大な音を出すことで事態は一変した。
「ぴーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
「なっっっっ!」
大きな音と同時に先ほどの大声による応酬が嘘のように静かになる。
「少しは落ち着いた?別に私はあなたのプライベートを犯すつもりは微塵もないし、犯罪行為なんてもってのほかだわ、まったくもってそんなことするつもりはない!ただ迷えるあなたの相談がしたくてここに来ただけよ、きっとあんたのその悩み、解決して見せるわよ」
この言葉を皮切りに両者とも落ち着きを取り戻したようである。いや、単にやり取りに疲れただけかもしれない。だが、この一瞬の静寂が動揺を鎮めるには十分な時間だったようである。
ただ、
「ううう、ここは少し場所が悪すぎるからいったん外に行こうかしら、、、」
、、、五感は正直である。
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汚部屋をでて外を幼女と大人が二人で歩く。なんともまぁ奇妙な光景である。男にとっては慣れ親しんだ光景、何の変哲もないいつもの町だ。ただ一つの要素を除いては、
問題を解決?お手伝い?半信半疑ではあるが藁にも縋る思いで幼女の後をついていく。
数分?いや十数分歩いただろうか?いまだに何の変化もなくただ外を歩くだけの時間に嫌気がさしたのかしびれを切らし口を開いた。
「お、おい!いいかげんにしろ!いったいどこまで行くんだ!?」
かなり大きな声だったと思う。しかし返答はなかった。その態度が男の怒りに拍車をかけた。
「あああああ!もう!こんなガキ信じてついてきた俺がバカだったよ!こんなんなら家で仕事してたほうが何百倍も有意義だったぜ!俺はもう帰る!」
「はぁ?あなたねぇ人を急かすような性格してると嫌われるわよ。今まで友達とかいなかったんじゃない?そんなじゃ誰も友達になんてなってくれないわよ。ましてやギブちゃんなんてのは、」
伊村は激しく動揺した。なんでこんな年端もない、いきなり現れたような幼女が自分の推しを知っているのだと。それどころかなぜ友達になりたいなんて悩みをビタで当ててこれるのだと。
だが、ここで狼狽えて何も言い返せないようでは騎士の名に恥じることは脊髄反射で分かった。
「う、うるせぇ!不法侵入のお前にギブちゃんの何が分かるって言うんだよ!あーもう!少しでも信じた俺がバカだった!これだったら家で騎士業に励んでいたほうが何百倍もよかったぜ!そうと決まればこんなほら吹き野郎置いて、、ってあれ??」
目の前に先ほどまでいたはずの幼女の姿が突然消えた。
「え?え?は、はぁ?」
真夜中、肌寒い空の下29歳の男一人取り残される。
いったい奴はなんだったんだ。まるで神隠しにでもあったのか?そういった心霊現象?そうとしか言えないような奇妙な体験だった。あの女はさとりかなんかだったのだろうか。考えだしたらキリがなくなり背中に嫌な寒さが全身に回る。
もういい、今日起こったことは夢だったんだ、そういうことにしておこう。そしてすべて忘れよう。
そうだそうしようと伊村は来た道をそのまま帰り家に向かう。
忘れようと心に決めたとしてもそう都合よく人間の体はできていない。何度も何度も頭の中に言われた言葉が回る
「友達なんてなれねぇか、その通りかもしれねぇな、そりゃそうだよな、まずは俺自体が変わらなきゃ駄目だよな、まずは仕事でも見つけて一人でも生きていけるようになって筋トレでもして、」
心に変化を誓った頃には伊村は玄関の前までたどり着いていた。そのまま扉を開けて部屋に入る。
おかしい、なんだかいつもの部屋と違うような気がする。まさか間違えた?いやそのはずはないこの部屋の番号は間違いなく伊村の部屋だ。
恐る恐る電気をつけ明かりをともす。
「なっ!どうなってやがる!」
数分ほど前までは玄関前まで異臭を放っていたゴミ汚部屋は嘘のようにきれいになっており、まるでお洒落な部屋の例をそのまま持ってきたかのような変貌を遂げていた。
あまりの変わりように驚きを隠せずにいた伊村はそのまま数秒固まってしまっていた。
「おめでとーーーーー!あなたのその心の持ちよう!友達作りにおいて重要な第一歩よ!」
伊村の固まったからだがそのまま前に倒れてしまい思わず手を床についてしまう。先ほどの幼女が危機として後ろに立っていた。
一体どこから現れたのだ。まさか、こいつの仕業なのか?この数分でそんなことが人間にできるのか?
今にもパンクしそうな伊村の頭の中の事情なんていざ知らず幼女は言葉をつづけた。
「あー、そういえば自己紹介がまだだったわね。私は満月満代。愚かな人間のお悩みを解決する9歳の天使よ(自称)。あんたの部屋こんな風にかえるの本当にしんどかったんだからねー。いらないものは全部捨てたから。あーでも安心してノートパソコンっていうのねこれ、これは残しておいたから。」
とりあえず情報を整理する伊村、まずはノーパソの生存確保!これは最重要事項!次は部屋の状況を確認。本当にこれが自室なのか信じることがいまだにできないがとりあえずそう言うこととして納得しよう。
そして、、、
この幼女の言っていた悩みを解決することができるという言葉。さっきまでは微塵も信じれなかったあの言葉が今はまやかしなんかじゃなかったと今となればわかった。
「あんたの言ってたこと、今なら信じれるぜ天使さん、友達作りのアドバイスどうにか教えてもらえねぇか?」
話が早いと言いたげな顔の観月は続けて一枚の電話番号が書かれた紙を渡す。
「これはギブちゃん個人の電話番号、決して事務所だとか家族共用の携帯番号なんかじゃないからほかの人が出るとかの心配は無用だわ」
なんともご丁寧なご案内である。そして次の言葉が伊村の今後の人生のターニングポイントとなる大きな言葉となった。
「さっきも言ったけど友達作りにおいては気の持ちようってのがとっても大事になるの、子供の頃のような場当たり的な対応だけじゃ大人の世界ではとても友人なんてできないわ。そんなのは大学生で終わりなのよ。社会人以降の人付き合いではあなたが立派になること。一人の人間として認識されること。それが最低条件になってしまうのよ。そんななかであなたのさっきの気づき、本当に立派なものだったわ」
珍しく褒めてもらえてご満悦な伊村。
更に観月は言葉を続ける。
「そんなあなたの気高い精神に免じてちょっとした魔法をあなたにかけたわ、あなたは今後いろんなことがうまくいくっていうね、だから」
実感が全くない話にひたすら心が右上がりになるだけの伊村であったが次に言われた内容には狼狽えざる負えなかった。
「早速明日この電話番号にあなたの携帯から電話をかけなさい!」
「な、なんだって!あ、あんたの言うことは全部信じるつもりだし、魔法がかかったてのも本当なのは今更疑わねぇよ。で、でもよぉ、いきなりギブちゃんに、それも個人の番号にかけるなんて心がもたなっ!」
否定形を完全に言い切る前にコンマ数秒で観月が伊村の目の前まで近づき小さな手で今らの頬を思いっきり握りつぶす。
当然伊村は口を開けないので何も言えないわけだがそんなことお構いなしで観月はいった。
「だめだめー、自信が大事なんだよー、そんなこと言っちゃだめー」
頬から手を放しいきなり空気が口に入ってきた伊村は咳込む、
「安心しなよ、今のあなたは何でもできるんだから、なーんの心配もなく普通に、当然に、当たり前のように遊びに行く約束をする感覚で電話をかければいいんだよ、一回くらいはあるでしょ?」
突然の乱暴に頷くことしかできなくなった伊村、だが理解はできた。絶対に明日はギブちゃんに電話をする。そして当たり前のように話す。これをすればいい、ただそれだけだ。
しかし、先ほどとは打って変わって観月の表情が少し曇った。まるで言わなければならないことが腹のうちにあるかのような、
「なんだよ、言わなきゃならねぇことがあるならいってくれ」
「そう、これは絶対に言わなきゃならないことよ、しっかりと肝に銘じてね」
そういって観月はいったん伊村に背を向けてから数秒後、振り向きざまに言った
「あくまであなたとギブちゃんは友人関係、、、だから」
「そ れ 以 上 の 関 係 に な っ た ら ダ メ だ よ」
そういって幼女はランドセルから先ほどのリコーダーをとってまたも爆音をだした。
「ぴ―!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
さっきの音とは比較にならないほど直接頭に響くような感覚が伊村を襲う。
そのまま伊村の意識は暗黒になってしまった。
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「はっ!」
どうやら寝てしまっていたらしい。しかも床に、
今までのごみ屋敷と違い床のカーペットがふかふかになっていたのでそのまま熟睡してしまったようだ
「っったく昨日は一体何だったんだってあれ?」
床にはギブちゃんの電話番号が記されている紙が落ちていた。そして部屋は相変わらずお洒落な様子。どうやら昨日起こったことが改めて夢物語ではなかったことを再確認する。
寝起きの体にまだ完全な覚醒状態ではない頭でもやることははっきりとしていた。
「かけてみるか、電話」
そういって伊村は携帯を取り出し書かれた通りの電話番号を打ち込んでいく。
大丈夫、今の俺なら何でもできる。その思いを胸に電話をかけた
「もしもし?」
「もしもし?御金ギブです。」




