おてつだい2「理想の相手」前編
このお話は前編、後編の二編となっております。
私の名前は『満月満代』《みづきみよ》この世の中の人間に悶々と苛立ちを覚えている9歳の天使(自称)
今日も迷える子羊の悩みごとの解決を手助けしていくわよ!
え?こんな女の子になにができるって?
そこは心配ご無用!
どんなお悩み事だろうと揉め事だろうと私にかかれば一件落着なんだから!
私はただ愚かな人間たちの悩みが消えて幸せになってほしいだけ、、
ただそれだけなんだから。
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バァアッチーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
都内某所、15時頃ガヤガヤとした街の人ごみの中一つの音をきっかけに一瞬の静寂が訪れた。
「巡のばか!!!もう知らない!!!!」
声をあげ明後日の方向へと走り去る少女、一人ぽつんと取り残され頬には見事な紅葉が入った男
街の視線はこの刹那だけはその一点だけを見ていた、だがやがてそれも景色の一部、人々の興味の対象外になりいつも通りの日常に戻る
「はーあぁ、今回も駄目だったかぁー、俺って人付き合い向いてねぇなー」
黒髪に整えられた容姿、間の抜けた言葉遣いと性格にはもったいない容姿の男がそのまま立っていても仕方がないと思ったのか独り言を上げぼちぼちと歩いていく
男の名は出会巡(22)職業:美容師
今日も今日とて満月満代は人間を幸福へと導いてく、、、、、
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『いやーでもよー、もう少し融通聞いてくれたっていいじゃねーか』
『確かに浮気はよくなかったには間違いない、とはいえいきなり呼び出してビンタくらわすとかありえねーだろ、いや、それ以前から怒りを募らせてたのか?』
思いつめるような見た目をしておきながら頭の中は言い訳でいっぱいの様子。
それもそのはず、この男は浮気に留まらず金を借りては返さず、相手の生活にはすべて文句を言い、自信にはありえないほど甘いといった人間性であったのだ。
「あーあ、どこかに俺に合う『理想の相手』なんて存在はいるのかねぇ」
歩き続けて30分くらいたった頃、巡は何かを思い出したように方向転換した。
(やっべぇー今日16時から急遽で指名の予約入ってたんだったー)
仕事を思い出し職場の美容院へと向かう巡
人ごみをかいくぐり前へと進んでいく
「あーあ、これで53人目、、俺ってどうしてこうも長続きしなのかなぁ」
独り言をつぶやきつつも足取りは止まらず気づけば美容院のあるビルの前まで来ていた
階段を上がり扉を開けると皆なかなか手が離せない様子だった
「出会くん!お客さん待ってるで!急いで急いで!」
「ああぁはい!」
急いで準備をして業務にあたろうとする巡
待合席には一人の幼い女の子が座って待っていた
どうやらこの子が急遽予約を入れたお客様らしい
『こんな子供が一人で来店、、、?珍しいな』
奇妙な光景に静かに驚きつつも接客に向かう巡
「ご予約いただいた満月さんかな?」
女の子は顔を見上げこう言った
「満月よ、遅かったじゃない、来るのを待ってたわよ」
奇麗な顔の女性だ。いや年は10にも満たないと思われる見た目だが、幼さというよりは妖艶で触れがたい雰囲気をも醸し出す決して両立することがない幼さと奇麗さを同時に持つ存在がそこにいた。
とにかくあくまで今はあくまで客とサービス提供者の関係、踏み込んだ会話をするわけにもいかずそのまま形式的にことを進めていく
「失礼しました、満月様ですね、ではこちらのお席へどうぞ」
「うむ」
『、、、、なんだこいつ』
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女の子を席に案内し散髪に取り掛かろうとする
透き通った茶色い髪の毛をしている。まるで絹のような、ハサミをいれることがもったいないとすら感じられる髪である
「どのようにいたしましょう?」
「そうね、適当に少し短くしてもらおうかしら、あとそれから、、、」
非常に注文の多いことであった、しかし顧客の満足のいくようにと努力をしてきた巡かなんだかんだ腕はよく非常に女の子の見た目に合った髪型へと変貌することができた。
女の子の自分の後ろ髪がどのようになったか見せるための鏡をかざす
「どうでしょう?結構いい感じじゃないですか?」
「ふーん、悪くはないわね」
髪型には満足そうでありながらどこかに不満点があるような表情を見せ幼女がつぶやいた
「私の『理想』ってのには程遠いわね、まるであなたの心のようね」
全身に電撃が走るような感覚が男を襲った。なぜこの女は俺の事情を知っているのだ、
男の驚く様子は想定済みのようににやけて続いてこう言った
「あなた、理想には程遠いわ、身の程知らず、分不相応、おこがましい」
「お客様、サービスに関するクレームはともかく私個人への誹謗中傷はお控えいただけないでしょうか」
流石は接客業に従事しているだけはある、クレーム対応は男のお手の物だった
だが、
今回の、この女はいわゆるカスタマーハラスメントとは明らかに違う、ヒステリックに愚かにかなぎり声をあげているわけでは決してない。
もっと本質を見るような、それこそこの男の心の中を見透かす、まるでさとりにでも会ったかのような感じがした。
「そうね、今の言い方じゃわからなかったかもしれないわね、でも私はあなたの悩みの種、それを解決してあげたいだけなの、今のあなたとっても思いつめた顔をしているのは目に見えてわかるもん、まぁでもここで話すのもなんだからもしあなたの頭の重りを軽くしたいならここに来ればいいわ、ぜったいに力になってあげれるから」
そういって女の子は住所の書かれた紙を渡した
、、新手の誘い文句か?
意味はよく分からないが
「アーはいはいわかりましたよ」
「それじゃあありがとうね、この髪型が気に入ったのはほんとうだから、」
そういって満月は椅子を立ち上がりそのまま出口のほうに向かっていった
「あっ、ちょっとお客さん!」
巡が何かを言いかけたとき満月は神妙な顔つきでこういった
「これ以上はその場所で聞くわ、あなたが来ること待ってるから」
チャリーン、という扉の開閉音から数秒無音の時間が続いた
「お会計、、まだなんだけど」
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「ったく、なんだったんだ」
一日の職務を終え支度し職場を出る、
帰り道あの謎の幼女に言われた言葉を思い出す
「理想からは程遠いわ」
妙に心臓に突き刺さる、
いつもは意識しない現実をいきなり突き詰められたような感覚が出会を襲った
とはいえ思い悩んだところで何も解決しないなんてことはこの男の鋼のメンタルが一番早く理解していた
今日はそういう日なのだ、忘れよう
家について玄関の扉を開ける
「あら、思ってたよりはやかったわね」
「!!!!!!!!!」
さっきの女の子がリビングでさも当たり前のようにくつろいでいた
「おま。おまえなにやってるんだよ」
「はぁ?なにいってんの残りはその紙に書かれた場所で話すって言ったじゃない、それにあなたもそれに同意したはずよ」
「なっ」
煩雑にポケットに突っ込んだ紙の内容を言われて初めてちゃんと見る
確かにそこには出会の住所が事細かに書かれていた
「だ、だからってなんだよ今すぐ帰、」
「そうやってまたチャンスを逃すの?理想は目を背けるものには手に入らないのよ」
「うぅう」
またこれだ、変に核心を突いてくる
「まぁそう焦らずに話を聞きなさい」
意表を突かれてしまったからかおとなしく聞いてしまった出会、しかしその態度は今までのひょうきんとた様子ではなくすごく真剣な表情だった
「そう、ね」
女の子は一息溜めて全身を見渡してからこう言った
「あなた、、いままで相手と長続きしなかったでしょ、理想の相手、、それを探しているのね」
見透かされた、ここまで来たら内心穏やかじゃない、男はもはや神にでもすがるように目の前の素性不明の幼女にすべてを委ねた
「あ、あぁまさにその通りなんだ!でも、いままで会った女は皆俺の理想から程遠いんだ。いや!理想だと思ったのに向こうからドンドンと離れていく!な、なぜなんだぁぁああああ!!」
男は叫びだし、泣いた。
そのまま女の子の膝めがけて顔を近づけた。
一瞬びっくりしたような表情を見せたが決して拒絶するようなことはしなかった。
それどころか女の子は男を受け入れて小さな手でやさしく頭を撫でた
「、、、そう、つらかったよね、よしよし」
そこからしばらくは女の子が成人を膝枕で慰めるという絵が続いた
「いっぱい泣いて偉いね、みんなが分かってくれないのが悪いもんね、私はいつだってあなたの味方だよ、出会は悪くない、わるくない」
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「気が済んだ、今ならお話聞ける?」
「うん」
目が真っ赤になりながらも涙は収まり冷静さは取り戻した様子
「今なら私の話聞いてくれる?」
「うん」
「えらいね、ありがと」
「いい?」
「うん」
「出会、いままで『理想の相手』とうまく会えなかったのは決してあなたに原因があるわけじゃないの、運命がそうさせているの、理想がそんなに簡単に手に入ったら苦労しないじゃない、理想を手に入れるには運命さえも受け入れるの、理想の選択は理想の選択をとれてこそ実現するの」
「、、、ううぅ、理想の選択なんてどうやってえらべるんだよぉ」
「そこをお手伝いするのがわたしの仕事よ!安心してあなたのその理想の相手を見つけるって悩み!絶対に実現して幸せにするから、そしてその先もその先もあなたを最期まで幸せにして見せる」
「最後って、、俺死んじゃうの?そうまで言ってくれるなんてもう幸せだなぁ」
「、、、」
「んーで、なにをどうしてくれるんだい?」
「はいこれ」
そういって女の子はスマートフォンを差し出した
「これ俺のスマホじゃん!ってなんだこれ」
見慣れた画面の中に見慣れないアプリが一つあった。アプリアイコンはまるでこの女の子をデフォルメしたようなものとなっている
「これからあなたの人生において理想の選択を迫られたときこのアプリに聞くといいわ、それは必ずあなたの助けになるから、ほらみて」
といったとほぼ同時にアプリ内で文字が一斉に生成されだした
『・・・出会巡の人生経験を確認中、思考パターンを分析中、身体を確認中、〇癖を・・・』
あまたの文章で画面が埋め尽くされた、それはまるでこの男の今までの人生を振り返っていたようだった。
いつまでも続くように思われるほどの文章量で画面をスクロールし続けていたがやがて結論が出た。
『巡様の特性を分析した結果、明日はいつも通り過ごせばよい、そうすれば理想に近づくでしょう』
目まぐるしいほどの文章が現れた。
「な、なんだぁこれ!」
「言ったでしょう、あなたの選択を手伝うって、これはねあなたの選択の後押しをしてくれるアプリよ、とりあえず明日はアプリのいうようにいつも通り過ごせばいいってことよ、明日以降はこのアプリに聞きたいこと、選択を迫られた際にどのように行動すればいいかを聞くといいわ、でも一つだけ忘れてはいけないことがあるの」
女の子は出会にものすごい勢いで顔を近づけていった
「いい?決して自分を見失わないこと、恋愛にいおいても人生においても最後を決めるのはあなたなのよ、それだけはわかってちょうだいね」
「お、おうぅ」
いきなり迫られて腑抜けた返事しか出せなかった、
思い返してみればこの状況自体がそもそもおかしなことだということが今になってわかってきたようである
「それじゃあ」
女の子は男の頭を近くの座椅子に移し立ち上がった
「そういえば自己紹介がまだだったわね、私は『満月満代』あなたのような人間を見ているとつい手を伸ばしたくなっちゃう女の子よ」
「それじゃあ今日はおやすみなさーい」
そのまま満代は玄関へと歩き出し、帰っていった
「な、なんだったんだ、とりあえず今日は寝るか」
脳から与えられた判断でそのまま眠りにつく
明日考えよう今日はもう疲れた
出会は今日あったありとあらゆる場面の判断処理を明日に持ち越すことを決めた




