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幼女とオオカミ男のお話  作者: 金剛陸奥
あくとⅠ  ちょっぴり怖くて意地悪なオオカミ男さん、お友達になりましょう
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ちゃぷたーⅠ  幼女と優しい家族



 キラキラ輝くお日様が、お庭のお花を照らしていた。



「はうー。今日もいい天気だねー。新学期日和だよー」



 お庭のお花にお水をあげるついでに、その日の天気をチェックするという日課を済ませたわたしは空に手をかざして太陽の温かみを手のひらで感じていた。


 わたしの名前は白附真綾しらつきまあや。今日から晴れて小学4年生になる。4年生からはちょっぴり頼れるお姉さんになりたいなあ。



「まーやー。朝ごはん出来たよー」

「はーい!! 今日も良いお天気だよ、お父さん!」

「うんうん。本当に晴れやかな気分になる青空だよ。まさに春うららだね」

「こうちょうなスタートってやつだね!」



 わたしのお父さんのお名前は白附正敏しらつきまさとし。大学で、ええと、英語ぶんがくがっかっていうところで先生をしてるんだ。すっごく優しくて頭がよくて、お料理も上手で…わたしの大好きなお父さん!



「さ、まーや。お寝坊さんを起こしてきてくれるかい? 朝ご飯が冷めないうちにね。今日はまーやの好きなフルーツとクリームいっぱいのパンケーキだよ」

「ほんと!? すぐ起こしてくるから待っててー!」



 階段を上って2階の部屋に居る人を起こしに行くのもわたしのお当番なんだ。ぱんけーきぱんけーきっ。


 お寝坊さんのお部屋の前に立ってノックをしてみるけど返事は無い。前に、「ノックしてもわかんないから勝手に入ってきていいよ」と、中でまだ寝てる人に言われたけどそうはいかない。し、したしきなかにもれいぎあり、である。



「セシルさーん。あーさでーすよー」



 もう一度ノックをしてもお返事はなかったので、ドアを開けるとやっぱりベッドが膨らんだままだった。いつも枕元に目覚まし時計が用意されてるけど、それがセットされたことはない。どうして目覚まし時計を使わないのって聞いたことがあるんだけど、笑ってごまかされちゃった。



「セシルさーん! 朝ですよー。朝ごはんもう出来てるよー」

「んー…あと10ぷん…」

「はう…。そう言ってこの前30分起きてこなかったでしょー。大学遅刻しちゃうよー」



 お布団のかたまりを軽く揺さぶると、腕を掴まれてベッドの中に引き込まれてしまった。慌てて離れようとするけどぎゅうっと抱きしめられて動けなくなった。



「は、はううううう! はーなーしーてえええ」

「あー…何で子どもってこんなに柔らかくて暖かいんだろうねー…ほんと丁度いい抱き枕だよ…」

「うわあああんパンケーキ冷めちゃうよおおお」

「ごめんごめん。今起きるよ」



 ふわあと大きくあくびをしながら起き上ったこの人はセシル・ウェッジウッドさん。イギリスからの留学生で、お父さんの生徒さん。わたしが5歳の時からずっと家にホームステイしてるんだ。今日からセシルさんも大学4年生。長く一緒に暮らしてきて、セシルさんもわたしの大事な家族なの。



「真綾ちゃん。やっぱりオレと寝室一緒にしようよ。真綾ちゃんが毎晩抱き枕になってくれたら、オレの寝付きの悪さも改善すると思うんだよね」

「や、やだよう。わたし、寝相悪いもん」

「でもほら、わざわざ起こしに来る必要も無くなるよ?」

「じゃあわたしの抱き枕貸してあげる! あとはー…うーん、わたしの目覚まし時計使ってみる?」



 そうわたしが提案するとセシルさんはちょっと困った様に笑って、「ご飯冷めちゃうよ? 早く行こう」と立ち上がりわたしを抱き上げた。突然目線が高くなってびっくりしつつもセシルさんの首に手を回す。そうするとセシルさんは嬉しそうに笑ってくれるのだ。


 しかし、今日のセシルさんは少し考えこんだ顔をしていた。



「どうしたの? あっ、もしかして体調悪い!? お、降りる!」

「ん? そんなことないよ。降りないで。…真綾ちゃん、さっき抱き枕貸してくれるって言ってたよね」

「うん」

「いつも使ってるやつ?」

「うん」

「じゃあ貸して」



 セシルさんはすごく笑顔だった。









「おはようセシルくん。今日から君も晴れて大学4回生だね」

「おはようございます先生。無事進級出来て良かったです」

「ははは。君の落第危機の原因は君自身だよ」



 もぐもぐと出来たてのパンケーキを口に含みながら二人の会話を聞いていると、お父さんはわたしにパンケーキの感想を聞いてきた。口にまだ残っているパンケーキを飲み込んでミルクを一口飲んでから返事をした。



「すっっっごく美味しいよ! わたし、お父さんのパンケーキ大好き!」

「それは良かった。そう言ってもらえると作り甲斐があるというものだよ。今日から新4年生、気張りなさい」

「はい!」



 元気よく返事をするとお父さんはニッコリ笑って食べ終えた食器を先に片づけ始めた。


 そして思い出した様に「あっ」と声をあげたお父さんは私たちに二人分の傘を渡した。



「はう? 今日晴れてるよ?」

「さっきお天気予報士のお姉さんが、午後からは雷を伴う大雨だって言ってたからね。折り畳み傘を持って行きなさい」

「え。か、かみなり…!?」



 折り畳み傘を受け取ったセシルさんはニヤニヤとした顔でわたしを見ていた。



「真綾ちゃん、雷すごく苦手なんだよね」

「あ、あう…」

「オレが迎えに行ってあげようか」

「ほ、ほんと!? …でもセシルさん、今日授業遅くまであるんじゃ」

「あー…、まあそれは」



 続きを言おうとしたセシルさんの前にお父さんがずい、と顔を近づけた。それはもう輝かしい笑顔で。何も言えなくなる笑顔で。満面の笑顔で。


 セシルさんはちょっと顔をひきつらせていた。



「“まあそれは”何かな? 出席日数が足りないという危機を常に迎え、いつもご自慢の頭でカバーするセシルくん」

「…授業は確かに大切だなー」

「まあや、セシルくんが迎えに来るまで、博士の家で待たせてもらいなさい。確か、小学校の隣でしょう?」

「う、うん」









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