幼女とオオカミ男のお話
むかしむかしあるところに、とても優しく明るい幼女が“しあわせ”に暮らしていました。
幼女は優しい人たちに囲まれて、いつもその可愛らしい笑顔を振りまいて人々の心を癒していました。
間違いなくその幼女は、世界でいちばん“しあわせ”な女の子だったのです。
ある日、幼女は悪い人たちにひどくいじめられた狼に出会いました。
狼の心は深く傷つき、友達もおらず、ひとりぼっちでした。
そう、狼は“ふしあわせ”だったのです。
優しい幼女は狼をかわいそうに思いました。
そして傷だらけで今にも死にそうな狼に、幼女はこう言いました。
「…今日はこれでおしまい」
「えー! そんなあ…。オオカミさんはどうなったの? 女の子はオオカミさんになんて言ったの? まあや、気になって眠れないよう」
まだ4歳の小さい愛娘が頬を膨らませて続きをせがんできた。しかし、もうこの子が寝る時間はとっくに過ぎてしまっている。これ以上続けると、この子はまた寝過ごしてしまうだろう。
しかし、上目づかいをして「あとちょっとだけ」と珍しく甘えてきたこの子を振り払うのもなんだか忍びない。
「じゃあ、まーやが安心して眠れるように、この女の子が狼に何て言ったのか教えてあげる」
「ほんと!?」
「ええ、それはね、…っごほ、けほ」
「! お、お母さん、だいじょうぶ? 待ってて! 今おとうさん呼んでくる!」
「い、いいのよ。大丈夫よ」
嬉しそうな顔が一転して、今にも泣きそうな顔をさせてしまった。これではいけない。大丈夫大丈夫とちいさい頬を撫でると少し安心したのか、私の手をぎゅっと握って笑ってくれた。
「まーやは優しいね。この絵本に出てくる女の子のようよ」
「そう、かな。…えへへ。でもね、まあや、オオカミさんはちょっと怖いよ」
「でもまーやは傷だらけの狼を放っておかないでしょう?」
「はう」
「ふふ。それでね、女の子は狼にこう言ったのよ」




